消防団はどこへゆく

 2025年12月14日、21日、朝日新聞は「フォーラム」欄で「消防団を考える」を2回にわたって特集した。その記事が載ると、私のブログの「消防団」関係の記事へのアクセスが少しばかり増えたのである。
  私は、20数年前、地域の自治会の役員をやり、その後、輪番制の班長をつとめたこともあって、自治会の他団体への寄付について、さまざまな疑問を持つようになった。
  社会福祉協議会や日本赤十字社への寄付、一世帯当たり500円を当たり前のように集金するのが班長の仕事であった。その件については、役員当時、寄付は強制されるものではなく、個人の自由であるという観点から、集金袋を回覧形式で各戸に手渡しするという方法が総会で認められ、その方法は定着し、現在に至っている。それとて、本来自由であるべき、募金・寄付が、自治会に投げられていること自体が問題なのであるが、それは解決していないままではある。
  そして、いつのまにか、私たちの自治会は、消防団への「協賛金」という名で、自治会財政から支出していることがわかった。消防団への寄付は、上記の社協や日赤への寄付とは、性格を異にする。

自治会等から消防団への「協賛金」「協力金」は「寄付」ではないか。

 消防団員は、現在の法律上、非常勤特別職の地方公務員なので、消防団への寄付は、公務員への寄付にあたり、これは完全にアウトではないのか。そんな思いから、佐倉市の自治推進課、危機管理課(消防班)とのやり取りをした。その顛末は、以下のブログの過去記事に詳しく書いているのでご参照ください。

消防団・社協・日赤などへの寄付を強制されていませんか~自治会の自治とは(1) (2)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2017/04/post-8f66.html
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2017/04/post-7804.html

消防団はどうなる、どうする(1)消防団への「お礼」って(2024年3月 4日)
https://app.cocolog-nifty.com/cms/blogs/190233/entries/94722716

消防団はどうなる、どうする(2)各地の消防団で何が起きているのか(2024年3月 5日 )
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2024/03/post-52ef54.html

  要するに、佐倉市は「消防団員は、非常勤地方公務員なので、消防団は寄付金を求めてはいけないが、協賛金、後援会費などは、自治会と消防団との間のことであり、佐倉市は関知しない」と繰り返した。一方で、毎年、市内の自治会長らを集めて配布される資料「自治会等役員の手引き」には、協賛金、後援会費などは「労をねぎらうために支援をされているもの」「消防団を支援しようという地域の厚意による任意のもの」との説明で、自治会等による寄付を容認している。この説明は現在も踏襲されている。以下の文章を拡大してお読みください。

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佐倉市の「令和7年度自治会等の役員の手引き(QandA)48頁より

 さらに、自分の自治会に問い合わせると、2万円の「協賛金」は、地域の商店会・自治会連合体共催の夏祭りの警備のための謝礼とわかった。地域には、自治会が20以上あるので、少なくとも40万円以上は、集まっているはずである。7月末に実施される2日間の夏祭りの警備のための費用に充てていることになる。また、この夏祭りの参加費として一世帯700円を、別途、自治会財政から、自治会連合体の下部組織の実行委員会あてに支出している。この夏祭りとて、当自治会世帯の高齢化が進み、祭りに出かけていた子供たちは、すでに家を離れてしまっている。自治会の世帯数は600を超えるので40万円以上になる。これについても、祭りとは無縁になった世帯にも一律というのはおかしいのではないか。せめて、総会を経たうえで、地域の付き合いというのならば、自治会として数万円に抑えることはできないかと要望書を出したことがある。前例踏襲、他の自治会との横並び意識から、一蹴された。しかし、現に、祭りの実行委員会に参加しない自治会も現れたのである。そういう選択も十分あり得るのではないか。

消防団員への報酬の不正使用の横行

 上記の当ブログの過去記事にも書いたのだが、本来、消防団員は、団員としての経験などによる階級に従って、自治体から報酬と出動手当などが支払われている。これまで、多くの自治体は消防団の分団あてに、まとめて支払うという慣例があって、団員の手に渡る前に、不正に使用される例が各地で横行していることは、新聞報道でもよく見かけた。2022年、消防庁の指導により、佐倉市は、団員の個人口座に振り込むようになったそうだ。消防団によっては、その先にも、親睦会費用を強制的に徴収したりする「上納」の例もあるという。

消防隊員の高齢化、団員の減少のなかで考えることは

 冒頭の朝日新聞の特集では、若い団員が増えないのは、また離れていく要因に、仕事との両立が難しいこと、操法大会などに向けての訓練がきついことなどがあるとする。取材記者は、「地域を思う気持ちが消防団を支えている」というが、マンションやアパートに住む人たち、戸建てに住む人たちであっても、自治会に加入していたとしても、隣に、どんな人が住んでいるのか、表札の情報しかないのが実態なのではないか。その表札さえ、掲げない住人もいる。個人情報保護法(2003年5月制定、2005年4月施行)により、自治会も名簿というものを作成しなくなったからなおさらである。そうした状況の中で、住民の絆、地域愛は生まれそうにもない。 
 住民の流動の激しい都市部はもちろん、郡部においては、住民の高齢化、限界集落化の著しいところでは、絆や地域愛によって、支えられる消防団などは望めなくなっているのではないか。

 消防団に代わるものはあるのだろうか。実現性を問われると心細く、話はつい大きくなるが、私の夢の欠片を拾ってみると・・・。
・消防署の消防隊員には専門知識と技術を持った消防事業と救急事業を担ってもらうことを前提として、指揮系統の明確化、待遇の改善を実施すること。⇒パワハラなどをなくし、モチベ―ションを高める。 

・防火・消火活動、防災・災害救助活動に特化したボランテイアの育成、ボランテイア団体の拡充 ⇒ 働き方改革により余暇を大幅に増やし、仕事と両立するようにして、非常勤ながら、相当の報酬を伴うようにする。欧米のようなボランテイア文化が根付くまでは時間がかかりそう。

・自衛隊を再編して、災害救助事業を拡充、あるいは名前を「災害救助隊」と改める。⇒ 防衛費を大幅に縮小して、その分を災害救助や災害復旧・復興のための人材と機材などの確保にあてる。「専守防衛」の名のもとに大国の軍拡競争に追随しても、対抗できるはずもなく、防衛の実効性は乏しいのだから。

 
 今年、転居したので、かつての住まいの自治会とは縁が切れた。転居先には入居者の代表による委員会があって、施設側へ質問したり、要望したりする会議は2カ月に1回開かれ、その報告や議事録も配られる。さらに、入居者と施設側とが対面して行う「懇談会」が2カ月に1回開催されている。 住民としての安心材料の一つではある。募金関係は、募金箱が備えられ、自由意思による。ただ、秋祭りには、地域の自治会にはかなりの金一封?をしていて、山車は構内にも立ち寄り、踊りも披露してくれる。消防団との関係は、今の私にはわからない。いずれ聞いてみたい。じゃあ、今すぐにできることはといえば、施設の防火・防災体制を知ることと住民同士の情報交換や交流をすることではないか。それが火災や災害からの人命救助の要なのかもしれない。

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2025年12月28日、ホールでは餅つきが行われ、大根おろし、きな粉、粒あんの三種類をもらいました。写真の上は、マユミが可愛い花房をつけ、中庭にはツワブキが盛りでした。

初出:「内野光子のブログ」2025.12.28より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2025/12/post-9203e0.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/
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