5月17日大阪都構想の住民投票は、僅差ながら「橋下維新」否定の票決を下した。「大阪都」構想そのものは、地方行政改革として、それなりに評価すべき点はあったであろう。だが、今回の投票は、単純に「大阪都構想の是非」を問うものではなかった。
「橋下への信任投票ではない」といくら橋下が否定しようとも、安倍官邸が露骨に「橋下都構想支持」をいえば言うほど、大阪住民投票は、安倍改憲暴走との関連性を鮮明にしてきた。
これは公明党にとっては、とくに深刻な問題であったにちがいない。何しろ安倍は「公明党がいうことをきかなければほかにも連携できる野党がある」と、改憲のお先棒を担ぐ橋下維新をタネに公明党を揺さぶり、昨年来の「与党協議」でむりやり戦争法案への公明党の同意を取り付けてきたからだ。もし今回の県民投票で橋下が勝ったら、公明党はますます窮地に追い込まれるところであった。
「大阪都構想がよくても、橋下を勝たせるわけにはいかない」という反改憲民意の高まりが、橋下維新否定の流れを加速したとみることができよう。じっさい、橋下敗北の結果にもっとも落胆したのは、安倍官邸であった。
橋下への否認は、安倍の政治手法に対する否認でもある。
安倍は、戦争法案推進と改憲発議に必要な参院三分の二勢力の確保を、保守党としての自民党の政治理念とは相容れないはずの橋下維新に安直に依存しようとした。
改憲が当面無理なら、閣議決定の解釈改憲で集団的自衛権の行使に踏み出す。
じっさいには戦争体制のための法案に「平和」の文字をかぶせる。
大義がなくとも「いまなら勝てる」とみれば(2014年12月)解散総選挙に打って出て大勝する。
オバマ・アメリカの弱みにつけ込んで、(2015年5月訪米)靖国参拝「失望」から「強固な同盟関係」へと米の対日評価を180度転換させる。
目的のためには手段を選ばぬこうした安倍のトリッキーな小手先政治手法には、保守の伝統を自認する自民党の既存勢力が距離を置きつつも、その「めざましい成功」のゆえに、これまでは、黙って従わざるをえなかった。自民党に対する安倍官邸の一極支配の力の源泉であったのだ。
「潮目が変わる」という言葉がある。速さの異なる潮流の接する場所が「潮目」である。
橋下維新の敗北は、安倍小手先政治のつまずきであり、「いけいけどんどん」の安倍暴走に、自民・公明が追随し民主党が茫然自失していた日本政治の「潮目」がこれで変わった。
同じ5月17日沖縄では、辺野古新基地建設反対の3万5千人大県民集会が開催された。
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