無人機が国際的問題になってきたが、その流れをつくったのは米国だ。ベトナム戦争で米兵の大量犠牲に批判が高まって以降、米軍は戦死者をできるだけ減らすことを重視して新兵器開発に拍車をかけた。まず巡航ミサイルが開発され、ついに無線通信で運用できる無人機にたどりついた。
イエメンで、結婚式に向かう市民ら15人犠牲に
現に、米無人機によるアルカイダ空爆で、パキスタン、イエメンなどで民間人の大量犠牲者が続出している。ロイター通信などが12月15日報じたところによると、イエメン中部ラッダで,結婚式に向かっていた車列を米無人機がミサイル攻撃し、市民ら15人を死亡させてしまった。イエメンにはテロ組織アルカイダの拠点があるようだが、イエメン国会は15日無人機攻撃を禁止する非難動議を採択。国際人権団体ヒュ―マン・ライツ・ウオッチによると、2009~13年にあった6件の空爆を検証した結果、死者82人のうち57人が市民だったという。
パキスタン首相の米政府への抗議届かず
イエメンよりパキスタン、アフガニスタンの方が無人機の誤爆が多い。シャリフ・パキスタン首相が先月訪米した際、オバマ大統領に厳重抗議した。12月9日、ヘーゲル国防長官がパキスタンを訪問した時も「米国がアフガニスタン国境付近で継続している無人機空爆の停止」を訴えたが平行線に終わったと,毎日新聞10日付夕刊が報じていた。
米国、中国、欧州、イスラエルなどが増強
日経11月30日付朝刊によると、「9月に尖閣諸島上空の日本の防衛識別圏に無人偵察機を飛ばした中国は、無人機保有数で見ると、既に欧州やイスラエルなどを凌いで米国に次ぐ世界2位の座にある。(中略)日本の防衛省も中国などの警戒監視を強化するため、2015年度に無人偵察機導入を目指している」というから危険きわまりない。
人間を「点」と見た非人間性
朝日新聞12月18日付朝刊・天声人語も「第2次大戦、ベトナム戦争といった惨事を経て、昨今は無人機が殺意を運ぶ。操縦士は国内の基地に出勤し、遠隔操作で遠い国を空爆する。この9年間に、米英軍がパキスタンなどで民間人400人以上を犠牲にしたという報告もある。人間を単なる『点』と見た非人間性は、形を変えて無人機に受け継がれた感がある」とズバリ指摘していた。
現段階では、国連で規制ルールについて議論が始まったばかり。早く国際ルールを定めないと、世界が破局へ向かうような気がしてならない。
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