韓国通信NO780
「死に体」の自民党に復活の兆しである。高市内閣の支持率が急上昇している。 「山高ければ谷深し」。異常な高株価に似ている。実態のない株価と不動産バブルがはじけたように高市人気が谷に落ちるのは時間の問題と予想する人は多いのだが…。
「わかりやすい話」「親しみやすい」「一生懸命さ」が人気の理由だそうだが、落語や漫才でもあるまい。政治の世界でこんな理由で評価する人の気が知れない。睡眠時間2時間も話題になっているが、睡眠不足ではまともな判断はできるはずはない。不眠に苦労する私だから断言できる。「よどみなく余裕のある答弁」も内容とは関係がない。よどみなく原稿を読むのはアナウンサーにかなわない。 「スピード感をもって」「適切に処理」を連発して国民が喜びそうな約束の連発と山積み。感心している場合ではない。
キーポイントは三つ。
① 物価高騰はデフレ克服のための低金利政策による円安が原因だ。「アベノミクス」を継承する高市首相には不可能。減税、給付金は根本的な解決にならない。
② 「モリ・カケ」に代表される政治の私物化、旧統一教会との癒着問題。裏金問題も安倍政治を継承する高市政権では解決は無理。
③ 防衛費を倍増したら社会保障を削るしかない。財源不足。 感心する前に話をしっかり聞いてほしい。
自民党にすり寄って与党入りを狙う野党からは、ものわかりのいい質疑と拍手、時には笑い声が起こる国会には目を覆いたくなる。議員の定数削減以前の問題だ。無能な首相と閣僚たち、緊張感のない議員たちを「駆除」するのが先決だ。
最近、岩手を旅した。北上川を見ながら平泉をめぐり、「啄木・賢治青春館」に立ち寄った。自宅に帰り、あらためて啄木の詩集と短編を読みなおした。
短歌から溢れる生活苦。韓国の併合、幸徳秋水の大逆事件に心を痛めた啄木は「世直し」「革命」に憧れた多感な青年だった。閉塞の時代は百年前から今も変わらない。啄木は栄養不足で26才の若さで亡くなったことを確信した。
<世界の潮流のはざまで>
ヨーロッパの先進諸国から伝えられる民主主義の後退と政治の右傾化。これまで築き上げてきた寛容と共生の社会から、破壊と独善の社会へ変貌をとげつつある。民主主義はどこに行ったのか。中でもアメリカは移民、自由な言論と学問、反対勢力に対するする露骨な弾圧、気候変動対策COPからの脱退、関税強化など国際協調の破壊を進める「ならずもの」国家となった。
来日したトランプ大統領を迎えた日米会談で見せた高市首相の「はしゃぎ」ぶりは異常だった。大統領に肩を寄せられ、飛び上がって喜ぶわが国初の女性の首相。5年前、大統領の就任前に飛行機に乗ってゴルフセットを届けた安倍首相のゴマスリと重なる。 15%の関税と5,500億ドル(80兆円)の投資合意にくわえ、軍備品大量購入の約束というおまけにトランプが喜ぶのはまだしも、喜色満面の首相に目を疑った人も多い。 戦争屋のトランプをノーベル平和賞に推薦するに至ってはブラックユーモアの類だ。幇間(たいこもち)を彷彿とさせる姿とともに主要メディアは「日米関係は確固たるものになった」と報じて祝福した。

<戦争前夜>
「台湾有事」の高市発言が波紋を呼んでいる。習近平との会談で示された戦略的互恵関係を反故にしたかのような発言に中国が警戒感を露わにしたのは当然だった。トランプに抱き寄せられて理性まで失ったのか、対中戦争を公言したのは危険この上ない。かつて関東軍が引き起こした鉄道爆破を中国軍のせいにした柳条湖事件を思い出した。中国側の抗議を認めず逆に抗議をするとはいかにも高市らしい。
ところで、平和のための「戦争抑止」を支持する人は案外多い。 戦争回避のために軍事力を備えるのは一つの見識かも知れない。だが、戦争に負けないための軍事力競争は限りがないのは子供でもわかる。防衛予算をGNPの5%、総予算の半分でも足りないはずだ。日本国中にミサイル基地を建設して、戦闘機、戦艦を増やせば安心できそうだが、比例して戦争の危険性も高くなる。抑止論に付き合っていたら日本は破滅する。 憲法9条の非武装が現実味を帯びだした。非武装は理想論ではない。自民党政府がしがみつく戦争抑止こそ非現実的ではないか。世界で唯一の戦争被爆国のわが国が核兵器禁止条約に背を向けているのも抑止論。国是としてきた非核三原則まで放棄しようと言い出したのは狂気の沙汰だ。高市首相になって戦争抑止、核抑止の危険性が実感できるようになったことは感謝すべきかも知れない。「ありがとう」。しかし辞めてもらうしかない。
毎朝のNHKの連続ドラマ『ばけばけ』の主題歌-
「毎日難儀なことばかり
泣き疲れ 眠るだけ
そんなじゃダメだと思ったり
これでもいいかと思ったり…」
日本と世界を覆う「難儀」を思い出すとため息が出る。「これでもいいか」などとあきらめないで、戦争は絶対にさせないことを、この「通信」の読者と共通の願いにしたい。
「リベラル21」2025.11.21より許可を得て転載
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-6917.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion14533:251121〕












