2月6日、東京で、生活協同組合(生協)の全国組織である日本生活協同組合連合会(組合員3041万人)の土屋敏夫会長と藤井喜継専務の新年記者会見があった。能登半島地震への生協の対応と、全国生協の2023年度事業概要と2024年度方針が発表されたが、印象に残ったこと2点を紹介する。
まず、能登半島地震への対応である。発表によれば、地震発生直後の1月3日に全国の会員生協に「令和6年能登半島地震災害支援募金」を呼びかけた。その結果、1月31日までに7億円の募金が寄せられた。まだ集約中のものもあり、募金は今後さらに増える見込みという。地震災害発生後、団体・企業が支援募金を行っているが、これまで発表された募金達成額の中では断トツの額だ。
日本生協連は、1995年1月17日に起きた「阪神・淡路大震災」の時も組織を挙げて支援募金活動をし、約15億円を集めている。
今回寄せられた募金は、義援金(被災した方に直接配分)と支援金(被災地への支援活動のための費用)として被害の多かった自治体や、被害者支援活動を行う団体などへ送金するという。
20生協が職員を現地に派遣
それから、もう一つ見逃せないのは、全国の主だった生協が、職員を現地の生協「コープいしかわ」に派遣し、同生協の事業継続と地域支援活動に取り組んでいることだ。発表によると、1月29日現在、以下の20生協が職員を派遣している。
コープさっぽろ、コープあおもり、コープあきた、生協共立社、コープみらい、コープぐんま、コープながの、東都生協、ユーコープ、パルシステム神奈川、生活クラブ連合会、コープぎふ、ならコープ、コープこうべ、コープCSネット、鳥取県生協、とくしま生協、生協ひろしま、生協くまもと、コープみやざき
協同組合の価値に「平和・非暴力」を加えるよう提案へ
発表で印象に残った2点目は、日本生協連として「平和への取り組み」を強めようと具体的な方針を明示したことである。
協同組合の世界的な組織である国際協同組合同盟(ICA、本部ジュネーブ)には、いわば憲法ともいうべき規定がある。「協同組合のアイデンティティに関するICA声明」だ。
それは「定義」「価値」「原則」という3つの項目から成り、価値」という項目には「協同組合は、自助、自己責任、民主主義、平等、公正、そして連帯の価値を基礎とする。それぞれの創設者の伝統を受け継ぎ、協同組合の組合員は、正直、公開、社会的責任、そして他人への配慮という倫理的価値を信条とする」と書かれている。
この「価値」について改定の動きが出ているそうで、日本生協連としては、この「価値」に「平和・非暴力」を加えることをICAに提案したいという。
ニュースレター発行へ
さらに、平和への取り組みの1つとして、2024年度から、日本生協連として、定期的に「ニュースレター」を発行するという。すでに発行された0号には発行の意義が述べられているが、そこには「日本生協連では、戦後80年を前に、生活協同組合として、組合員とともにあらためて平和について考え、発信していくニュースレターを発行します」とある。
「私たちは非力であっても無力ではない」
二ュースレター0号には、次のような同生協連・嶋田裕之専務の“発刊の辞”が載っている。
「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は2年が過ぎましたが、依然収束の兆しはありません。 昨年 10 月にはじまったイスラエルとパレスチナの武力紛争では、子どもを含む多くの犠牲が生まれています。唯一の被爆国である日本として、平和とよりよい生活のためにという理念を掲げてきた私たち生活協同組合として、武力による解決には強く反対する立場です。私たちの力だけでは戦争や紛争を止めることが出来ないのも実情ですが、こうした現実を前にしながらも、 決して諦めることなく『私たちは非力であっても無力ではない』の思いで多くの組合員・役職員が取り組んでいます。……毎年 8 月にヒロシマ・ナガサキで開催している『ピースアクション』には全国から延べ約 3000 人の組合員が集まり、平和について考え、学んでいます。1人 人の願いや思い、行動が寄せ集まってさらに大きく広がっていくことは、無力でない証明ですし、そのようなきっかけ作りをしていくことが商品やサービスを売るだけではない、私たち生活協同組合の重要な役割の一つです」
第1号は2月後半の予定で、テーマは「第五福竜丸と生協」。第2号のテーマは「ピースアクション in オキナワ」、第3号のそれは「ピ―スアクションの舞台裏」である。
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