本日(3月19日)、「卒業式処分をするな!都教委要請行動」。32名の要請団に私も交じって、いくつもの課題について要請と質問を重ねた。
いくつもの課題の根底に、民主主義国家の教育の場にふさわしからぬ「国旗・国歌(日の丸・君が代)」への敬意表明の強制がある。この強制に服さぬ教員に対して、東京都教育委員会が懲戒処分を科し、処分に伴う諸不利益を押し付け続けて事態を混乱させている。
国旗と国歌の学校行事を、ILO・ユネスコ勧告は「愛国的儀式」と呼称している。本来教育とは個人の人格の完成を目指すものだが、世界の良識には日本の教育は「愛国的儀式」に彩られたものと映っているのだ。この点、天皇制政府が国家主義を子どもたちに注入した戦前教育と基本的に変わるところがない。
そして「勧告」は、教員に対して愛国的儀式への参加を強制せぬよう配慮が必要という。これを受け容れがたいとする教員の「不服従の権利」を容認している。
消極的な不服従である限り思想良心に基づく行為への制裁があってはならない。これが「市民的不服従の権利」であって、国連の指し示す世界標準なのだ。不服従の権利を認めず、懲戒処分をもって愛国的行為を強制する我が国は、後進・野蛮の誹りを免れない。
都教委は、いったい何ゆえに、このような野蛮な国旗・国歌(日の丸・君が代)強制にこだわるのであろうか。不可解というしかない。
この度のコロナ禍に伴う措置は、不可解にさらに輪をかけるものとなった。本日の要請行動で、最も話題となったのが、「被処分者の会」からの次の指摘。
東京都教育委員会は2月28日、「新型コロナウイルスに間する都内公立学校における今後の対応(第49報)」を発表し、「1 都立学校の基本方針」として「更なる感染防止拡大」のため卒業式は「参列者の制限や時間の短縮により実施」とした。
そして、指導部指導企画課長名で都立高等学校長・都立特別支援学校長・都立高等学校付属中学校長・都立中等学校長宛「卒業式における国旗・国歌に関する調査の実施について」という事務連絡(以下、事務連絡①という)を発出し、記の2で「本年度に限り…『10.23通達』に示す取り扱いと異なる方法で卒業式を実施する場合は…」として回答例・例1では「…国旗を掲揚できなかった場合‥」、例2では「国歌を含め…斉唱や合唱を行わなかった場合」を挙げ、「※ 本年度に限り、上記回答を不適切な状況として取り扱わない」とした。
ところが、同日、指導部指導企画課長名で都立高等学校長宛に「事務連絡②」を発出し、「現時点で、都立学校における卒業式の国旗国歌の取り扱いについては、『国旗掲揚の下に、体育館で実施する。』『国歌斉唱を行う』という方針に変更ありません。」と指示し、「説明不足であったことをお詫び」した。
事務連絡①で「感染防止」のための「緊急対策」として「連絡」した内容が事務連絡②では「国旗掲揚…、体育館で実施…」「国歌斉唱を行う。」に変えられたのである。
その結果、これまでの式次第にあった校歌斉唱、保護者代表式辞、卒業生代表答辞、在校生代表送辞、式歌(卒業の歌)斉唱、などをカットし、①国歌斉唱、②校長式辞、③卒業証書授与、などに縮小して実施した学校も多い。「感染防止」と言いながら何が何でも「君が代」だけは歌わせるという都教委の異常さが際立っている。
納得できる説明を求めるという質問書の提出に続いて、出席者から声が上がった。
「朝令暮改も甚だしい。常識的な事務連絡①を出したあとに、いったい何があって、非常識な事務連絡②を出すことになったのか」「コロナは、接触感染と飛沫感染で広まっている。接触感染を防ごうというのが、体育館ではなく各教室で行おうという配慮。飛沫感染を防ごうというのが斉唱をやめようという配慮。どちらもまかりならんとはどういうことなのか」「性との命や健康よりも、日の丸・君が代が大切ということなのか」
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事務連絡①
事 務 連 絡
令和2年2月28日
都立高等学校長
都立特別支援学校長
都立高等学校付属中学校長
都立中等学校長 殿
教育庁指導部指導企画課長 小寺 康裕
卒業式における国旗・国歌に関する調査の実施について
例年実施している標記の調査について、複数の学校や自治体から、「新型コロナウイルス感染防止のため例年と異なる方法で卒業式を実施するため、どのように回答すればよいか。」
などの問い合わせを受けています。
つきましては、下記のとおり御対応ください。
記
1.例年と同様の様式で回答する。
2.新型コロナウイルスへの緊急対策に伴い、本年度に限り、いわゆる「10・23通達」に示す取り扱いと異なる方法で卒業式を実施する場合は、以下の例を参考に回答する。
◆例1 各教室で放送等を活用して式を実施したため、国旗を掲揚できなか った場合
→「オ 式典会場内掲揚せず」、
「ノ 演台を設置せずに実施」と回答
◆例2 飛沫感染を防ぐため、国歌を含め全ての式歌の斉唱や合唱を行わなかった場合
→「ス 斉唱せずメロディも流さず」と回答、
「(7)教職員の状況」は空欄
※本年度に限り、上記回答を不適切な状況として取り扱わない。
なお、体育館で実施しながら国旗掲揚を行わない事例や、校歌や他の式歌を斉唱(合唱)しながら国歌斉唱を行わない事例等は、不適切な事例に該当します。
【担 当】
教育庁指導部 主任指導主事 ○ ○
指導企画課統括指導主事 ○ ○
指導企画課指導主事 ○ ○
電話 03-53××-68××
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事務連絡②
事 務 連 絡
令和2年2月28日
都立高等学校長殿
教育庁指導部指導企画課長 小寺 康裕
「卒業式における国旗・国歌に関する調査の実施について」の趣旨等について
先ほど、当課からの事務連絡「卒業式における国旗・国歌に関する調査の実施について」により、本年度の調査の回答例等を示したところですが、この例は、今年度の新型コロナウイルスの感染拡大等の状況によっては、卒業式の実施方法について、様々な変更が想定されることから、変更があった際の回答の仕方を示したものです。
現時点で、都立学校における卒業式の国旗国歌の取り扱いについては、「国旗掲揚の下に、体育館で実施する。」「国歌斉唱を行う。」という方針に変更ありません。
説明不足であったことをお詫び申し上げます。
ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
【担 当】
指導部主任指導主事(安全教育担当) ○ ○
統括指導主事 ○ ○
電話 03-53××-68××
(2020年3月19日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2020.3.19より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=14522
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion9560:200320〕