石原慎太郎都知事が突然、「尖閣諸島を東京都が買い取りたい」と発言して、大きな波紋を呼んでいる。「石原新党結成へ向けたデモンストレーションか」と勘ぐれるが、中国・台湾を逆撫でするような行為ではないか。
「魚釣島など3島買い取りに基本合意」
この発言が飛び出したのは、訪米中の石原都知事が4月17日未明(日本時間)ワシントンで開いた講演会。先ず「都が買い取りを検討しているのは魚釣島(3・82平方㌔)と北小島(0・31平方㌔)南小島(0・40平方㌔)で、民間人所有者と売買の基本合意に達した」と述べ、「将来的には国が買い上げたらいいが、外務省がビクビクしているので踏み切った」と語っている。新聞報道によると、現在は国が民間人から島を賃借して維持・管理しており、年間賃料は魚釣島が約2110万円、北小島約150万円、南小島約190万円(2010年度)という。
周恩来時代から〝棚上げ〟されてきた難題
尖閣諸島問題は、1972年の日中国交回復交渉の際、周恩来総理が田中角栄首相の問いに対し「今回は話し合いたくない、今、これを話すのはよくない」と〝棚上げ〟提案した歴史的発言が伝えられているが、その後も鄧小平総書記に継承され、「次世代に解決を委ねる」方向で日中とも〝棚上げ〟容認によって紛争を回避してきた。まことに巧みな外交判断といえるが、2010年9月の中国漁船衝突事件などの不手際によって領土紛争に火をつけてしまった感が深い。中国海軍の増強と中国・台湾漁船の尖閣諸島海域の操業が増加している現状を監視するのは当然だが、相手国の感情を逆撫でする行為は厳に慎まなければならない。日中漁業協定の基本哲学は「自国の船に対して適切な指導および監督を行い、違反事件を早急に処理し、通報し合う」ことで、領土争いを未然に防ぐ責務がある。その点で 先の漁船衝突事件処理で、菅直人前政権が中国を必要以上に激怒させてしまったように思える。
石原都知事は最近刊行した著書で「尖閣問題は今後さらに過熱化し、日・米・中3国の関わりを占う鍵となる」と指摘していたそうだが、都庁幹部職員にも「買い取りの意向」などは伝えておらず、都庁内でもテンヤワンヤの論議を巻き起こしているという。
日中間の「領土問題」再燃の恐れ
元外務省主任分析官の佐藤優氏は毎日新聞4月17日付朝刊で「今回の発言には二つの要因がある。一つは石原氏が領土問題に敏感で国防意識があること。もう一つは『石原新党』が白紙に戻った中、領土問題で強硬姿勢に訴えれば、お金を使わず国民的人気を保ち続けることができる。しかし今回の発言で中国との間に深刻な外交問題が生じれば『領土問題』になり、中国しめたものと思っているだろう」とコメントしていた。
河村たかし名古屋市長、橋下徹大阪市長に続いて、政治臭紛々のパフォーマンスを演じた石原都知事の意図を警戒し、監視していく必要があろう。
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