(2021年10月22日)
本日、自由法曹団の創立100周年記念集会が開催された。
団の結成は、1921年。大戦前における最大規模と言われる、神戸の川崎・三菱両造船所争議をきっかけにするものだった。当時、友愛会神戸連合会の指導のもとに、神戸の川崎・三菱の全工場がストライキにはいったが、軍隊の出動にまで及んだ弾圧によって争議は鎮圧された。このときに、調査にはいった弁護士団を核に自由法曹団は結成されている。その出自から、「闘う弁護士」の組織であった。
広辞苑に、「大衆運動と結びつき、労働者・農民・勤労市民の権利の擁護伸張を旗じるしとする」と解説されているが、これでは不十分な紹介でしかない。何よりも、法的手段を駆使して権力と大資本に真っ向から闘うことをもって真骨頂としてきたのが自由法曹団なのだ。
団は、戦前においては、天皇制権力の暴虐と闘った。多くの団員が治安維持法で弾圧された共産党員を弁護し、そのゆえに自らも治安維持法の弾圧に遭い、弁護士資格を剥奪されてもいる。この困難な、戦前の先輩団員弁護士として、山崎今朝弥・布施辰治・上村進・古屋貞雄・小岩井浄・近内金光・神道寛次・天野末治・桜井紀などの名を挙げることができる。
大戦の進行とともに団は活動の逼塞を余儀なくされたが、戦後直ちに新生自由法曹団として復活した。以来、団は「あらゆる悪法とたたかい、人民の権利が侵害される場合には、その信条・政派の如何にかかわらず、ひろく人民と団結して権利擁護のためにたたかう」(規約2条)ことをスローガンとし実践してきた。
戦後の団は、平和、民主主義と人民の生活と権利を守るため、憲法改悪、自衛隊の海外派兵、有事法制、教育基本法改悪、小選挙区制、労働法制改悪などに反対する活動を行ってきた。
現代的な課題として、戦争法制(安保法制)など戦争する国づくりに反対する活動、秘密保護法に反対する活動、米軍普天間基地撤去を求め、辺野古新基地建設に反対する活動、議員定数削減に反対し、民意の反映する選挙制度を目指す活動、労働法制改悪に反対する活動、盗聴法の拡大と司法取引の導入に反対する活動、裁判員制度の改善と捜査の全面可視化を実現する活動、政教分離を確立する運動、思想・良心の自由を擁護する取り組み、東日本大震災と福島第一原発事故による被害者支援の取り組み、脱原発へ向けたとりくみなどを行っている。
さらに団と団員は、松川事件を典型とする刑事弾圧事件とも闘ってきた。その流れは、布川事件、足利事件、袴田事件などのえん罪裁判に及んで成果を挙げている。
そして今、団員の派遣労働者の派遣先企業への正社員化を求める裁判などの数々の労働裁判、生活保護受給を援助する取組、嘉手納爆音裁判などの基地訴訟、環境・公害裁判、税金裁判、消費者裁判などの様々な権利擁護闘争に取り組んでいる。日の丸・君が代強制反対のまた、国際的な法律家の連帯と交流の活動も行っている。
現在、団員弁護士数は約2100名。全国すべての都道府県で活動しており、全国に41の団支部がある。現在の役員は、団長・吉田健一(32期)、幹事長・小賀坂徹(43期)、事務局長・平松真二郎(59期)である。
青年法律家協会結成が戦後の1954年。日本民主法律家協会は1961年。当然のことだが、それぞれに結成の由来があり、それぞれに構成メンバーの属性も違う。一番老舗で、しかも闘う弁護士集団を標榜する自由法曹団の結成100年を祝したい。
なお、日本民主法律家協会も今年が結成60周年となる。こちらは来月、祝賀集会を開催し、「法と民主主義」の特別号を発行する。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2021.10.22より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=17786
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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