一体だれが福島第一原発のデブリなどの冷却水をALPSでトリチウム以外の核種を除去した処理水をWHOの定める飲用水基準である1万ベクレル/ℓ以下の1,500ベクレル/ℓ以下まで海水で希釈した海洋放出水を飲めるなどとのたまわったのだろうか?ネットで検索してみると、そのような口から出まかせを吐き散らかしたのは、例によって麻生太郎と、これまた例によって片山さつきであったのは、なんという言う巡りあわせだろうか。
先のASEANで中国外交最高責任者である王毅は、林外相との会談において「飲めるぐらいなら海洋放出しないで、飲料水や農業用水に転用すればよいではないか」と発言、ASEANの共同声明に海洋放出反対の文言を入れるよう立ち回ったと報道されている。林は「国際基準に準拠している」と紋きりの口上を返すにとどめた。
しかし「飲める飲めない」の議論は一体何を指して言っているのだろうか?
ALPS処理水のことだとすると、これはトリチウムが残留しているのだから飲めるはずもない。ではそれをWHOが定める飲用水基準の1万ベクレル/ℓをさらに下回る1,500ベクレル/ℓ以下まで海水で希釈した海洋放出水のことを言っているのだろうか?ちょっと待ってくださいよ、海水ですよ!んなもん飲めるわけがないでしょが。麻生や片山がいかにこの問題をいい加減にしか考えていないか、もしくは何も考えていないかこの一事を取っただけでもこの上なく明白だろう。
ところでASEANでの王―林会談での応酬で林が通り一遍の返答にとどめたのは余計な反論をして上げ足を取られまいとする保身の心性のなせる業だったのだろうが、これを「海水で希釈しているのだから飲用水にも農業用水にも転用できませんよ」などと言おうものなら、百戦錬磨の王毅は、「誰が海水で希釈しろと言っているのか?水道水でも川の水でも使って希釈すればよいではないか」と突っ込みを入れられて万事休すとなったに違いない。林がつまらぬ機転の利くような人物でなかったのがこのバヤイは幸いしたのかもしれない。
シッカシ、さすが王毅、いいことを言うではないか(あくまで想定上の話ですよ)。そうそう、水道水でも川の水でも、ようはもともと飲用適格の水で希釈して、水道水に戻すなり農業用水系統に転用すれば済む話ではないか。こうなった時は、国内的には福島漁業者の風水被害懸念は一転して国民的健康被害懸念に「拡散」するわけだが、もちろんWHO基準のさらに6分の1まで希釈しているのだから、「ご心配無用」と政府は言い切れるはずだ。そうじゃないのか?それをわざわざ海洋放出して福島漁業者のみならず中国や韓国反日政治団体の反発を招くのは愚策の極みではないのか?
それをやらないのは、もちろん簡単明瞭、そんなことをやったら今言ったように全国民的健康被害懸念に論点は「拡散」、自民党の支持率はドブの底になるからなのだ。
こういう推論を重ねてみると、確かになんで海洋放出なのか、国内政治対策優先でやらかしているのではないかと近隣諸国から責められても致し方ないないのではござんせんか?
わーた、わーた、飲用水や農業用水転用では問題が国民的に拡散するとして、ぢゃトリチウムをまっ正面から除去しようじゃありませんかって、どうしていかないのか。これも知恵のない話で、いやいや、それをやるには膨大なコストがかかって現実的ではないのですよ、という実も蓋もないいじましくも官僚的な声が聞こえてくるわけだが、いいじゃないか、どんどんコスト掛けてトリチウム除去しようじゃないの。ん、50兆円かかります、だからどうした?それだけの巨大産業が一夜にして現出するのですよ!!いやいや、財源がどうたらこうたら、そんな議論はMMTによってとっくの昔に論破されていますんで。最初はコストがケタ外れにかかっていても、実行するうちにいろいろと突破口が見えてくるもんですがな。何も手も付けずにあれは駄目これも無理などと官僚の言いなりになっていていけませんぜ。
かくすれば、日本はここまで踏み込んで自らの責任を取り切ろうとするのかと、国際的にも認識を幾重にも改められ、今日混迷する世界情勢に対する、軍事力と無縁の境地によってなにがしかの緩衝材的な役割も果たせるように思うのだが、どうだろうか?
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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