秘密保護法(山下・原田報告)、中国特集、マンデラ報道の陥穽、スーチー批判

■定例会リポート(2013年10月22日)

民主主義社会を破壊する秘密保護法

山下幸夫(弁護士)

 

■定例会リポート(2013年11月28日)

秘密保護法と公安警察

原田宏二(元北海道警釧路方面本部長)

 

稀代の悪法と言われる特定秘密保護法が、広範な反対運動にもかかわらず安倍政権を

支える自公与党の強行採決で成立してしまった。1週間もたたないうちに共謀罪法案の

国会提出が取りざたされ、その「布石」としての特定秘密保護法の危険さも浮かび上が

った。議論を尽くさなかった政府与党に対する抗議の声は成立後も止むことはない。ア

ジア記者クラブではその危険性への理解を深めるため、10月と11月の定例会で連続

してこの問題を扱った。10月は日弁連秘密保全法制対策本部の事務局次長で、『秘密

保全法制批判―脅かされる知る権利』(日本評論社)の執筆にも携わった山下幸夫弁護

士に、法案が出てきた背景を踏まえてその全般的な問題点を語っていただいた。11月

には元北海道警釧路方面本部長で、道警の裏金を告発、現在は『市民の目フォーラム北

海道』代表で『警察崩壊 つくられた“正義”の真実』(旬報社)の近著がある原田宏

二さんに、メディアが報じない警察と特定秘密保護法の関係をお話いただいた。いずれ

も12月6日の成立以前だが、その内容は学び直すに値するものだ。(編集部)

 

 

■ナチスの“遺産”がウイグル独立運動を支えている

大トルコ主義と米中関係

ウェイン ・ マドセン(ジャーナリスト)

 

本稿は本通信255(前号)掲載記事「ユーラシア大陸管理の要石と位置付ける 米国

の新疆ウイグル政策」を全面展開した内容となっている。ソ連邦の解体を画策したナチ

スドイツは中央アジアのイスラム諸国をソ連から分離・独立させてユーラシア大陸にま

たがる大トルコ主義の汎トゥラン帝国樹立を画策したが、この構想は東西冷戦下、米国

に引き継がれる。ソ連邦崩壊後、米政府はCIAを中心にさまざまな内外の団体・組織

を陰に陽に動員し、トルコ系ウイグル族の独立運動支援を本格化する。それが米国の覇

権を脅かすまでに台頭した中国を揺さぶる政策であることは言うまでもない。「ウイグ

ル独立運動はナチスの『汎トゥラン主義構想』から直接生まれた」と断じる筆者は非常

に大きな視野から今日の米中関係へのもう一つの貴重な視点を提供している。(編集部

 

 

■中国の防空識別圏設定は米ドルへの“決別宣言”だ

金融覇権喪失に脅える米国

フィニアン・カニンガム(ジャーナリスト)

 

中国政府が尖閣諸島(中国名:釣魚島)の上空を含む空域に設定した防空識別圏(A

DIZ)を巡って議論が沸騰している。直接には中国が「日本が違法に略奪し、戦後米

国がそれを支援してきた釣魚島は中国固有の領土である」との主張をさらに強化しよう

としたとみるべきであろう。戦前色の濃い国家主義に基づく愛国心育成に執着する安倍

政権が対中強硬姿勢を一段と強めADIZ撤回を叫ぶ一方で、米政府は撤回要求を抑制

した。だが、筆者は中国政府がADIZ設定直前の11月20日に石油の決済通貨や外

貨準備通貨として米ドルを他の通貨に変更する意向を示したという重大な事実を指摘し

、水面下で米国が激しく動揺、反発しているとみる。言うまでもなく、米国の金融覇権

は軍事覇権と一体となっており、中国の新たな防空識別圏設定は米ドルへの「決別宣言

につながっていると言うのだ。(編集部)

 

 

■米金融政策とウォール街がドルの息の根を止める

終焉する米国の覇権

ポール?クレイグ?ロバーツ(エコノミスト)

 

本通信は255号(2013年10月5日発行)と256号(同11月5日発行)で

著者ロバーツ氏のドル覇権終焉を巡る論考を掲載しており、本稿は第3弾となる。また

、同時掲載するカニンガム氏の記事「中国の防空識別圏設定は米ドルへの“決別宣言”

だ」の末尾部で「ポール?クレイグ?ロバーツが11月22日付けの記事で注意喚起し

たように、米国経済は余命いくばくもない…」と言及しており、2つの記事はセットに

なっている。併読されたい。(編集部)

 

 

■米国の対中政策は対決と協調のバランスにある

バイデン副大統領の日中韓歴訪

アンドレィ・アクロフ(ジャーナリスト)

 

中国が2013年11月13日に東シナ海に新たな防空識別圏(ADIZ)を設定し

、尖閣諸島(中国名:釣魚島)を巡る日中間の領有権紛争を煽る格好となった。好戦的

姿勢を強めていた日本の安倍政権は集団的自衛権行使や特定機密法の必要性の正当化を

図り、防衛費増大を実現した。こんな中、米国政府は12月上旬、バイデン副大統領を

日本、中国、韓国に派遣した。筆者は米国が新ADIZ撤回を中国に求める日本に同調

しなかったのみならず、米中両国がずっと広い視野から地域の安定を議論したとみる。

その上で、便宜的同盟国・日本を巧みに使って中国との対決姿勢を示す一方、融和と協

調でバランスを図ろうとするのが米国の本音であると示唆している。(編集部)

 

 

■西側諸国とプレトリアの合作だった“虹の国”

ネルソン・マンデラの露骨な商品化

ぺぺ・エスコバル(ジャーナリスト)

 

“洪水”のように感情に訴えたマンデラ賛辞が溢れる中で、またもや真実が覆い隠さ

れ、世界を支配したつもりになっている0.0001%の連中にとって都合の良い歴史

が偽造されようとしている。筆者は、マンデラが西側諸国にとっていかに煙たい存在で

あり、彼の重要なメッセージの抹消に勤しみ、アパルトヘイト(人種隔離政策)を完璧

に支えた西側諸国が一転して彼への賛辞を繰り返す背景を明かしている。プレトリアが

政権譲渡に備えて、獄中に“切り札”を温存させていた疑いまで浮上する。輝かしい政

治的な勝利を収めたマンデラが新自由主義に敗北していた事実にも言及している。(編

集部)

 

 

■スー・チーの説いた民主主義はおとぎ話だった

軍事政権に与するビルマの“象徴”

ガイ?ホートン(ロンドン大学アジア・アフリカ学部)

 

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチが2013年版年次報告で「少数民族保

護に消極的で、失望している」と批判したのをはじめ、公式に政治活動を再開したアウ

ン・サン・スー・チー氏の変身ぶりに対する疑念、失望の声が噴出している。その変身

は2012年4月に実施された補欠選挙で当選した後の軍事政権との妥協にあるようだ

。ミャンマー民主化運動の象徴されてきたスー・チー氏を国内で20年近くウオッチし

てきた英国人の筆者は「軍事政権と妥協し、犯罪に加担している」と厳しく非難。彼女

を偶像化し続ける国際メディアに対して、「アウン・サン・スー・チーというプリズム

を通してビルマ・ミャンマーを見るのを止めよ」と視点の転換を呼びかけている。(編

集部)

 

 

■福島第一原発4号機の崩壊が世界を脅かす

燃料棒取り出しのリスク

シマズ・ヨウイチ(ジャーナリスト)

 

福島第一原発4号機の使用済み核燃料が世界を脅かす大問題となっている。4号機建

屋を支えるコンクリート基盤に亀裂が入って、半分に割れ互いにもたれかかった状態に

なっている建屋自体が倒壊の危険を抱えているという。4号機の使用済み核燃料保管プ

ールにある燃料棒はかろうじて冷却されているが、建屋が崩壊すれば核燃料棒が溶けて

、メルトダウンが発生し、これまでの放出量をはるかに上回る放射能が世界中に拡散す

るとみられている。こんな中、大きなリスクを伴う使用済み核燃料棒を保管ブールから

取り出す作業が始まった。筆者は立ち入り禁止区域に潜入して現地取材を続け、核燃料

棒取り出し作業の抱える危険性をはじめ、3・11当時原子炉は稼働停止していた4号

機の建屋が倒壊の危機に至った原因と背景に迫る。(編集部)

 

 

■山崎久隆の原発切抜帖

 

■教員の良心と都教委の暴走際立たせる陳述書

「君が代」不起立裁判

根津公子(元教員)/近藤順一(元教員)

 

■今月の冤罪・再審事件報道

 

■書評 想田和弘著『日本人は民主主義を捨てたがっているのか?』(中島洋)

 

 

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