究極の監視社会への道 マイナンバーカードはいらない

韓国通信NO708
 マイナンバー制度が義務化されようとしている。突如、河野デジタル担当大臣が健康保険証、自動車免許証までをセットにする構想を打ち出した。
 個人情報漏れと悪用が懸念される制度だが、健康保険証とセットなら否応なく登録しなければと思う人もいる。しかし利用者の利便性ばかりが強調されるとかえって不安になる。政府は一体何を考えているのか。

 住所、年金番号等の基本情報と健康保険証、自動車免許証、病院の診察券が1枚のカードになると便利かもしれない。しかし個人情報を加え一元管理されるとこれほど恐ろしいものはない。預貯金、株式、保険、所有不動産、電話番号、メールアドレス、趣味、性向、交友関係、思想傾向。採取された指紋まで「紐づけ」(関連付け)は可能だ。
 義務化と聞いてジョージ・オーウェルの小説『1984年』を思い出す。政府によって徹底した情報管理と行動管理が行われ、公認の思想と行動の自由しか許されない世界。すべてが可視化される未来社会を予言した。
 マイナンバー制度の義務化で小説『1984年』が現実味を帯びだした。
 隈なく張り巡らされた監視カメラ、メールも電話の盗聴も可能な社会。私たちは究極の監視社会への入口に立たされているのかも知れない。デモに参加した人は気づいている。夥しい数の私服警官による顔写真撮影。異議申し立てをする人間は既に監視されている。

<監視するのは私たちだ>
 主権者である国民を管理するという発想自体が間違いだ。逆である。国民こそ政治家を監視する権利がある。基本的人権を侵されないよう私たちが彼らを監視するのは当然だ。
 政治家本人と家族の財産、交友関係、日々の行動の記録を余すことなく知りたい。それがいやなら政治家をやめたらいい。政治家のすべてを知ることができたらどれほど私たちは安心できるだろうか。

 監視するのは政府や政治家だけではない。
 NHKを始めとする報道機関(マスメディア)への不信は高まる一方だ。放送局、新聞社別に信頼度の世論調査でも実施したらどうだろう。
 「金をもらってデモに参加している」と字幕を付けたNHKの捏造番組が「重大な放送倫理違反」として放送倫理・番組向上委員会(BPO)から認定された事件。
 オリンピック開催に多くの人たちが疑問を感じていたさなか、反対する大勢の人たちをあざ笑い貶めた。誰が捏造を指示したのか不明なところがミソである。オリンピックに反対する人間なんて「いるはずがない」というNHK全体の雰囲気が捏造を生んだ温床としか考えられない。
 渋谷のNHKに隣接する代々木公園に1万数千人が集まった(9月19日)。NHKは「国葬反対・サヨナラ原発」の集会はなかったことにして政府を阿った。
 ① 政府の見解を伝えるだけ(御用報道) ②政府に都合悪いデモや集会は無視 ③事実と異なる内容の捏造。ここまで来ると公共放送も堕落の極みではないか。

「戦争は平和なり」「自由は服従なり」「無知は力なり」
 ジョージ・オーウェルの小説ではこの二律背反を国民に強いる。戦争について、自由について、真実について国民は疑問を持ってはいけない。国民は「二重思考」を強いられる。
 わが国の政治状況、知的状況と何と似ていることか。永久政権への野望達成に使われる監視体制。それを見逃し、警鐘すら鳴らさない公共放送と民間放送、新聞も要監視対象である。
 「便利は危険だ」。マイナンバー制はいらない。

挿入図(漫画『1984年』85p/イーストプレイス社発行)

<尹政権(ユン・ソギョル)の対北朝鮮政策は支持されず>
 去る19日。韓国の検察が野党「共に民主党」李 在明(イ・ジェミョン)代表の側近を逮捕、続いて党本部に家宅捜査を行った。狙いは大統領選挙で争った李 在明の逮捕とされる。
 政権が変わるたびに繰り返される前政権への報復劇。「韓国は変わりませんねぇー」とあきれる人も多い。政権交代が起これば前政権の検証は当然としても、「まず報復ありき」とはあまりにもおとなげ無い。やることが他にないのか? 韓国ファンの私も同感する。

 思い起こすことがある。尹錫悦大統領は朴槿恵大統領訴追の捜査で頭角を現し文政権下で検事総長に抜擢された人物である。 文政権に反旗を翻して大統領になった。当選直後から大統領として資質を疑う声が多かった。検察出身で政治経験のない大統領だが、これほど不人気な大統領もいない。評価しようにも実績はなく、一体何を考え、何をしようとしているかわからない。明らかになったのは「親日」、「親米」と北朝鮮対決姿勢だけ。
 尹大統領の支持率は凍ったように30%を割ったまま。北の「脅威」をテコに支持率挽回を狙ったが期待外れだった。14日に発表された韓国ギャラップの世論調査では    「平和的かつ外交的解決に向けた努力を続けるべきだ」という意見が67%を超えた。前政権に対する攻撃で支持率アップを狙うが期待できそうにない。
 「国民の目線に立って」と大統領も岸田首相もそろって同じことを言うが口先ばかり。支持率アップ狙いがことごとく裏目に出ているのもソックリだ。日韓とも支持率3割政権だ。こうなったらそろって退陣してもらうしかない。朝鮮戦争を経験した韓国の7割近い市民が北との平和的外交努力を政府に求めているのを知っただけでも嬉しい。日韓ともに「冬の時代に逆戻り」などと悠長に嘆いてはいられない。

初出 :「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/

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