空に昇った「とら」へのラブレター

本稿は、週刊朝日の「犬ばか猫ばかペットばか」欄への投稿原稿であり、表題も原文のままです。 週刊朝日に掲載にあたっては、編集部に依り字数制限・編集がなされました。
この度は、ちきゅう座の御好意に甘えまして、原文を掲載させて頂きまして、愛猫への私の思いのままを公開したい、と思います。 ただ、週刊朝日には愛猫の写真も掲載して頂きましたが、同一写真の本欄での公開は、著作権に触れかねませんので、見合わせることに致します。
お空に昇った「とら」。 その後どうしていますか。 おっちゃんは、「とら」がいなくなったあとに残った猫たちのお世話で忙しい日々を過ごしています。
昨年にお別れをしてからあと少しで一年ですが、「とら」のことが頭を離れません。 そして「とら」の写真を拡大して額に入れて飾り、仔猫の時代からの写真をデジタルにして貰い、パソコンに取り入れて壁紙にしたりしています。
「とら」を始めて見たのは、御近所の猫さんが何頭かの仔猫を連れて我が家の前を通った折でした。 仔猫の中の一頭を見て、あの仔、可愛いな、我が家の飼い猫に欲しいな、とそれまで猫を飼ったことが無いおっちゃんが心底思ったのでした。
我が家の飼い猫として頂いた日に、小さい体を抱えたおっちゃんの手を思い切り噛んだ「とら」。 いきなり入ったことも無い家に連れて来られたので怒ったのか、一日中、押入れに入ったままだった「とら」。 気性が激しく、自分に敵対する猫には徹底した攻撃をする「とら」。 そんな「とら」が余計に好きになったのでした。
「とら」と独り者のおっちゃんが暮らす日々は、職場の葛藤と矛盾に満ちた俗世間とは隔絶した幸せに満ちたものでした。 業務が終わり、帰宅するのが待ち遠しい程だったのを「とら」は知っていたのかな。
帰宅すると、玄関には、必ずお出迎えの「とら」がいて、思わず笑みが漏れたものでした。
何度かあったね。 二階の窓から何時帰るか、と戸外を眺めていた「とら」と二階の窓を見上げたおっちゃんの眼とが合った時が。
人間と違い、猫が老いるのは早いよね。 知らない中に「とら」は歳老い、腎臓が悪くなったのでした。 でも、十八歳と十九歳との長寿表彰を貰う程に長命ならば二十歳を迎えるのも夢では無い、とおっちゃんは思ったのでした。
一年以上、毎日自宅で輸液をしながら腎臓病の進行を抑え、一生懸命「とら」と頑張ったよね。 輸液の前には、「とら」を抱いて、鏡の前で「今日も頑張るぞ」と唱えるのを「とら」は確りと聴いていたのを覚えているよ。
お別れの日までお薬とミルクを飲んでくれて、十九年と五か月を懸命に生きた「とら」。 お別れの時には、抱きしめたおっちゃんの眼を見詰めたまま空に昇った「とら」。暫くの間、おっちゃんはどうしているのかな、とお空から見ていてね。 大好きな、大好きな「とら」。