みなさまへ 松元
9・11事件を追究しつづけてきた童子丸開さんが、フクシマと重ね合わせてこの9・11後の10年を振り返っています。
https://chikyuza.net/archives/13591より続く。
童子丸開氏のサイト
http://doujibar.ganriki.net/evidences_abandoned_for_ten_years.htmlより転載。
911事件「10周年?」 違う! 証拠が10年間放置され続けるのみ!
いま我々が生きている 虚構と神話の現代
(6)10年間、放置され続ける証拠映像
問題はそればかりではありません。
911事件を最も特徴付けているのは、(1)でも述べたように、映像資料の圧倒的な豊富さです。特にWTC(世界貿易センター)ツインタワーや第7ビルの火災と崩壊は様々な角度から数千点にのぼる多くの写真やビデオの映像が残されました。この点はマドリッドやロンドンで起きた事件との、最も際立った相違といえます。当然ですがこれらの映像資料は、物証がすでに破壊(一部はひょっとすると隠匿)されている以上、事件についてのほとんど唯一の決定的な証拠となるものです。この点についてはこちらもご参照ください。
ところが、(2)で述べた第7ビルの崩落を唯一の例外として、こういった映像資料がまともに科学的な手法で分析されたことはないのです。私がこの事件について最も悩む点はここです。どうして科学的な知識を持ち手段を持ち能力を持った世界中の専門家たちがこのような証拠映像をまともに分析しデータ化しようとしないのか…。どうしてこれらの膨大な数の証拠が10年間もほったらかしにされ続けているのか…。
証拠は膨大な数あるので、ここですべてをお見せすることはできません。その中からごく一部だけをご紹介しておきましょう。写真説明に施されたリンク先に詳しい説明が書かれています。より詳しいことは、『見ればわかる9・11研究』、『特集:NISTから「解放」されたWTCビル群「崩壊」の新たな映像資料』をご覧ください。
【ご注意】 それぞれのリンク先には私が自分なりにやってみた分析がいくつか書かれています。しかし本来ならこういった分析は私のような素人にできることではなく、それなりの知識と技術と手段を持つ専門家が行うべきものです。そして素人同士の言葉の投げつけあいではなく、専門家同士の情報交換と討論が行われるべきなのです。素人同士がいくら何を言い合ったところで、しょせんは「外野席の応援団の乱闘」に過ぎません。グラウンドの上で本当にプレーすべきは専門家たちなのです。しかし、日本の専門家たちがあまりにも動こうとしないため、しかたがなく私が不正確さやあいまいさを覚悟のうえで、とりあえずやってみているだけです。私は、日本で構造力学や建築などの専門家による映像資料の分析が本格的に開始される日を待ち望んでいます。 |
奇妙な白煙を引きずる物体。左は崩壊前の北タワー、右は右は崩壊途中の南タワー
南タワー崩壊開始前に起きた現象。左は東面77階付近から突然起こった激しい噴出。右は崩壊開始直前に北東側角付近で見られた灼熱に溶けた金属。
真っ先に消えていく上層階。左は南タワー(こちらとこちらも参照)、右は北タワー(こちらとこちらも参照)。
両タワー崩壊途中に見られる、津波のように大きく成長しながら高速で連続する爆風の噴出。左は南タワー、右は北タワー。
巨大な質量の激しい水平方向への運動。左は南タワー(こちらとこちらも参照)、右は北タワー(こちらとこちらも参照)。
ツインタワー崩壊後、極めて短時間に200mを超える高さに成長した火砕流を思わせる粉塵の雲。写真は共に南タワー崩壊直後。左は西側、右は東側。
両タワーの外周部が崩落した後も立ち残っていたコアの構造。左は南タワー、右は北タワー。
以上にお見せしたものは、私が収拾した映像によって記録されている事実の中のごくごく一部分に過ぎません。しつこく繰り返すようですが、このような事実を記録する映像資料が、公的機関にいる専門家・科学者の手によって、科学的で公正な手法を使って公開の形で分析され、そこから合理的で実証的な結論が公開の形で導き出され、それが分かりやすい形で幅広い大衆に伝えられたことは、この10年間ただの1回も無いのです。これを「異常」と言わずに、いったい何を異常と言えばよいのでしょうか。(北タワー上層階の崩壊については、こちらの解説の後半に民間の研究者による分析があります。)
こんなことを言うと、今度はこれをお読みの方が大きな違和感をお持ちになるのかもしれません。「え?911事件は政治事件じゃなかったのか?政治の問題で何がおかしいんだ?」と。実は私自身、どうして「911=政治の問題」にとっさに違和感を覚えたのかの理由を、長いあいだ見つけることができませんでした。
しかし2011年になって3・11大震災とフクシマ核事故を追っていきながら、少しずつその疑問の答が見つかりつつあるような気がします。ひょっとすると私は最初から、この911事件を、政治的な面からというよりも、この事件に対する人々の認識のしかたや反応のしかた、人間の心理や精神に対する影響のあり方、事件を巡るそれぞれの人間社会の動きというように、むしろ文化的・文明論的な視点で捉えていたのではないだろうか、ということです。
これについて2010年11月に、マサチューセッツ工科大学のノーム・チョムスキー教授が、イラン国営Press TVとのインタビューで次のように語りました。
…この(アフガニスタン)戦争の明確に宣言された動機は、世界貿易センターとペンタゴンへのテロ攻撃に関与したとして罪に問われた者たちを米国に引き渡すようにさせることでした。タリバンは…証拠を要求しましたが…、ブッシュ政権はいかなる証拠をも見せることを拒否しました。 …後になって我々は、どうして彼らが証拠を提出しなかったのかの理由の一つが分かりました。彼らはそれを何一つ持っていなかったのです。 …これらの全ては完全に違法でした。それ以上に犯罪でした。 |
アフガニスタン侵略の動機として公式に言われてきたことは、911事件を「アフガニスタンの山奥に潜むビンラディン=テロリストの陰謀」であるとする純然たる陰謀論でした。しかし、チョムスキー教授が指摘するように、アルカイダが911事件を起こした確たる証拠など実際に何一つありませんでした。あるのは、NISTやFEMAによって作成されたWTCビル崩壊の分析と研究がすっぽり抜け落ちた「WTCビル崩壊」に関する報告書、そして911委員会報告の「唯《筋書き》主義」で書かれた長々しい作文だけです。それはもはや「神話」としか言いようのないものです。そしてそのビンラディンは2011年に米軍特殊部隊がパキスタンで殺害したことになっていますが、これとて、その明確な証拠を世界に一切示すことのできないお粗末な御伽噺に過ぎませんでした。この911事件をアフガニスタン侵略の理由としたこと自体がまぎれもない犯罪だったのです。
そればかりではありません。
2006年1月から2月にかけてのゾグビー社の調査によれば、イラクに派遣された米兵のうち、93%が「大量破壊兵器の捜索と破壊は軍事行動の根拠ではない」と回答している一方で、その軍事行為を「911同時多発テロでサダム・フセインが果たした役割に対する復讐」と信じる兵士が85%にのぼっていました。すでにブッシュ政権が「大量破壊兵器」はもちろん「イラクの911関与」の大嘘を公式に認めていたにもかかわらず、このような結果でした。
これは決して兵士たちが愚かだったためではありません。米国軍も政府もマスコミや言論界も、この「911=サダムの陰謀」論という真っ赤な大嘘を積極的に打ち消す努力をするどころか意図的にほったらかしにして、この「復讐心」を兵士たちのエネルギー源として利用し続けてきました。米軍兵士たちは、そんなありもしない「復讐心」を言い訳にでもしない限りやってられないほどの残虐行為をイラクで行い続け、一説に百万人を超えるといわれる人々を殺害してきたのです。
嘘はいかなる核兵器をも超える大量破壊兵器です。巨大な嘘が、戦場となった国々の国民を大量に虐殺し、戦場にならなかった国々の国民の精神と感性を大量に破壊しました。これが今世紀に入って世界で起きたことの最大のポイントです。「悪貨が良貨を駆逐する」という言葉がありますが、現代という時代はまさに「虚構が事実を駆逐する」時代です。我々が日ごろ何も意識せずに享受している現代の文明は、地球的な規模で、嘘が事実をいとも簡単に追い払い、神話が現実をやすやすと食い潰す、人類史上最悪の文明だったことになります。そしてその中に、いま、我々が生きているのです。
はっきり言いまして、私は「911事件の真犯人が誰か」などにはほとんど興味がありません。どうせ世の中はいつの時代でも悪党や詐欺師が跳梁跋扈するものなのです。むしろ、われわれがこの史上最悪の神話の時代、虚構の時代に生きているということ自体を恐れます。
国家や大資本は国民の生活や命なんぞ紙くずほどにも思っていない、多くの専門家や科学者は自分の利権のために平然と嘘をつき事実を無視して話を捻じ曲げる、多くの商業メディアは平気で読者を誤誘導する、…、こんなことは別に911事件が無くても、そのずっと以前から明らかでした。米国がらみで言うなら1898年に起きて米西戦争の引き金になったメイン号事件以来明白なことでした。それがハナからこの世の中の実態なのです。それがいかにももっともらしい筋書きと否定を許さぬ神話的な物語で覆い隠され、人々の精神や感情が無前提にどうしようもなく動かされていく姿を、911事件以来、私はじっと見つめてきました。いったい何なんだ?この世界は?
しかしひょっとすると、このような現象はもっと恐ろしいことを示しているのかもしれません。先日私が フクシマからの警告シリーズの『徐京植さん「フクシマを歩いて」に基づく考察:根こぎと全体主義』でも少し触れたことですが、虚構を求め神話を愛しているのは、究極的な被害者となるしかない大多数の人間たち自身ではないのかということです。少数の人間が自分たちの利権を確保し多数派を支配するために浅はかな嘘に過ぎない筋書きをひねり出し、それを逆らうことの許されぬ神々しい姿で登場させるというのは、一面ではその通りです。しかしそれはあくまでも、それを受け入れむしろ熱心にそれを何年でも何十年でも支え続ける巨大な人間のカタマリがあるからこそ、たやすく成功するのです。我々はここで、「悪なる少数の加害者」に支配される「善なる多数の被害者」という構図を、虚構として投げ捨てる必要があるのでしょう。
きくちゆみさんとの共著「テロ&戦争詐欺師たちのマッチポンプ」で書いたことなのですが、中世以前の戦争はあくまでも地域や国の支配者たちの意思と利害関係によるものでした。一般の人民は、自ら一揆に立ち上がる場合を除き、その戦争政策のとばっちりを受けることがあっても決して戦争の責任者ではありませんでした。しかし近代以降の世界ではそれが180度ひっくり返ります。民主主義を標榜する近代国家では、戦争への意思を作りそれを支えるのは多数派の国民自身なのです。浅はかな嘘に過ぎない筋書きに自ら飛びついて、どこかの他者を悪魔化して自らを正当化し復讐心をたぎらせ、事実を拒否して神話的な雰囲気の中で自足することを求める圧倒的多数派の人民自らの力で、近代民主主義は人類史上最悪の凶暴な文明を地球規模で形作ってしまったのではないでしょうか。911事件はその典型的だが一つの断面に過ぎないものです。
私は別に民主主義という社会制度が悪いと言っているのではありません。民主主義であろうが共産主義であろうが、人々が無自覚にそれを形作り支え、ノーチェックのままで突き進むなら必然的に凶悪な文明を作らざるを得ないでしょう。そうなると、中世以前でなら狭い地域でばらばらに発揮された人間の邪悪さが、世界規模で組織的に現れてこざるをえないために、より悪い状態に陥る可能性があるという、極めて単純な筋を語っているのみです。そして今まさにそうなっているのではないのか、ということを言いたいだけです。
人は、過去を学ぶことによってしか自らの無知から解放されることは無いでしょうし、現在に対処し未来を作ることはできないでしょう。その際に、自らを絡め取っている虚構、理性が働く以前に自らを動かしてしまう神話を自ら拒否しながら現代世界を覆うこの凶暴な文明を、自ら突き崩していく意思と方法論が最も大切なものだと思います。人間の意識が大規模に変わっていくとき、一つの文明もまた大きく変化せざるを得ないでしょう。何十年も100年以上もかかるかもしれませんが。
その虚構・神話を下から支える圧倒的多数の大衆は事実よりも嘘を好みます。理性よりも神話を好みます。そして、事実と合理的な筋道を大衆から切り離して、人々が虚構の中に自足したいという要求を常に拡大再生産し続けているのが、いわゆる情報メディアです。しかしいま、フクシマが、その「自足の再生産」の構造に波紋を投げかけ亀裂を作ろうとしています。それを担っているのが一部のインターネットメディアです。それは国家と大資本の大嘘を明らかにし、事実を伝え、事実を元に合理的・実証的な推論を立てる少数の専門家や学者たちの姿を見せつけ、メディアによる虚構作りを瞬時に暴き出しています。一方で一部のネットメディアに対する攻撃も猛然と開始されています。
911から始まりフクシマに至る21世紀の世界の流れは、確かに世界中に重大な政治的問題を生み出してきました。そして同様の大事件や大事故が今後も続くことになるかもしれません。しかし嫌でもそのような世の中に生きる羽目に陥った我々現代人の為すべきことは、巨大な情報メディアの働きにひびを入れ様々な角度から突き崩していき、多くの試行錯誤を通して新しい形のメディアを確立させていくことでしょう。それがいままでノーチェックのままで放っておかれた大衆という人間のカタマリを流動化させ、全体主義的な流れを分散させていく非常に有効な手段です。すでに日本では自然発生的にその動きが始まっていますが、その意味が分かるからこそ、大手メディアは盛んに「不安を煽るな」と警告するわけです。
この虚構と神話の時代に危機を少しでも感じる人たちが当面為すべきことは、そういった自然発生的な試行錯誤をいろんな形で支え拡大させていくことだと思います。誰のためにでもありません。自らの解放を求めるためです。
(20011年9月7日 バルセロナにて 童子丸開)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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