(2022年4月27日)
NHK情報開示請求訴訟、本日の103号法廷でのパワポの概略は以下のとおり。
NHK情報開示等請求事件
第3回期日
東京地裁令和3年(ワ)第15257・24143号
原告ら代理人弁護士澤藤大河
原告第3準備書面の概要
1.被告NHKの文書開示義務は未履行
2.被告NHKに対する文書開示請求権の根拠
3.各被告への損害賠償請求の根拠
被告NHKは請求にかかる文書を開示したのか
開示請求文書目録
(1) 2018年4月24日に放送された「クローズアップ現代+」を巡ってNHK経営委員会でなされた議論の内容(上田良一会⾧に対して厳重注意をするに至った議論を含む)がわかる一切の記録・資料
(2) 「NHK情報公開・個人情報保護審議委員会」が提出した答申第797号、第798号、第814号、第815号、第816号を受けて、NHK経営委員会が行った当該議事録等の開示を巡る議論の内容がわかる一切の記録・資料
提訴への経緯(1)
• 本件訴訟は、放送法において法的な義務とされている経営委員会議事録の公表がされず、開示にも応じないことから、なんとか、その内容を開示させようと提起された。
• 放送法41条は経営委員会委員長に議事録を作成し公表する法的義務を課しているが、その公表手続は被告NHKが実行しなければならない。
• しかし、被告NHKは議事録を公表しなかった。
提訴への経緯(2)
• 2名の視聴者が情報開示請求
• 被告NHK、8点について開示拒否(2018年10月23日)
• 審議委員会がすべて開示すべきとの答申(2020年5月22日)
• しかし、なお下記3点の文書が不開示とされた
「第1315回経営委員会議事録」(2018年10月9日開催)
「第1316回経営委員会議事録」(2018年10月23日開催)
「第1317回経営委員会議事録」(2018年11月13日開催)
提訴への経緯(3)
• 新たに3名の視聴者が議事録について開示請求
• NHK不開示決定
• 審議委員会は3件について、すべて開示すべきと答申(2021年2月4日)
• しかし、NHKは、この開示請求に対してもなお開示しないまま現在に至っている。
原告の開示請求には議事録が含まれる
原告開示請求対象の第1項
(1) 2018年4月24日に放送された「クローズアップ現代+」を巡ってNHK経営委員会でなされた議論の内容(上田良一会⾧に対して厳重注意をするに至った議論を含む)がわかる一切の記録・資料
経営委員会の正式な議事録があれば、「NHK経営委員会でなされた議論の内容・・・がわかる・・・記録」に該当し、当然、本件訴訟の開示請求の対象となる。
議事録はないのか?
• 被告NHKも被告森下も、正式な議事録は存在しないとしている。
• しかし、議事録作成は放送法41条で被告森下に課された義務
• 議事運営規則(丙2)は、議事録「公表」義務の一部免除は認めても、「作成」義務免除の例外は認めていない。
• 今までの経営委員会については議事録を作成しているのに、本件にかかる会議だけ議事録を作成しない不自然さ。
• 何より、先行する開示請求にかかる手続きでは、議事録が存在することを前提に進んでいる。
審議委員会は何を見たのか?
• 審議委員会答申は、議事録を開示すべきとしている。
• 存在しない書面を開示せよと答申したのか?
• 開示すべきかどうか、審議委員会は現物を見て判断したはずではないか?
• これらの開示請求手続きで、議事録「不存在」の主張は一切なかった
• 今まで、4年間も議事録が存在することを前提に手続きが進んできたのに、いきなり「実はない」と言われても・・・・・
本件訴訟における開示請求の履行はない
• 原告の請求は、「一切の記録・資料」の開示
• 当然、録音・録画も含まれる。
• いわゆる「粗起こし」の正確さをみれば、録音・録画が存在する可能性は極めて高い。
• にもかわらず、NHKは録音・録画を提出していない。「粗起こし」は、電磁的記録を文字におこしたものであることを明示しておらず、「電磁的記録の開示」にはあたらない。
議事録は本当に不存在なのか?
• 今までの手続きで、存在を前提に4年間もやりとりがなされてきた議事録について、突然不存在と主張する。
• しかし、被告NHKは、存在可能性が極めて高い経営委員会の録音録画データを提出していない。誠実でなく信用できない。
• 原告としては、議事録が不存在とはとうてい考えられない
• 議事録不存在については、被告において蓋然性をもって証明されなければならない。
• 議事録の存否を明らかにするための被告森下の尋問が必要である。
被告NHKに対する損害賠償請求の根拠
• 被告NHKは、原告らの情報開示請求について、受信契約に基づく債務を負っている。
• この点、被告NHKは、情報開示制度は契約に基づくものではないとするが、「合意」に基づくものとしている。
• いずれにせよ、少なくとも合意に基づく法的効果としては、契約と同様となる。
• 被告NHKには開示すべき債務がある。
• 原告の請求はこの債務不履行損害賠償請求である。
被告NHKの開示義務履行遅滞
• 被告NHKは、開示請求から47日以内に開示する法的義務を負っていた。
• 具体的には2021年5月24日の経過を持って履行遅滞となった。
• 請求にかかる文書がすべて開示されていたとしても、5月24日から開示までの履行遅滞がある。
• 請求にかかる文書が開示されていないということなら、現在まで履行遅滞が続いている。
被告森下の損害賠償義務
• 被告森下は、被告NHKにおいてなすべき開示の履行を妨害した不法行為を行った。
• 放送法41条違反の公表義務を怠ったことから、一連の活動として履行を妨害している。
• 被告森下が放送法41条に基づき公表していれば、そもそも開示請求にいたらない。
• 被告森下の放送法41条違反行為に始まり、一連の行為として、被告NHKに絶対に本件議事録を開示させないように活動した。
被告森下が何をしたか?
• 被告森下が、被告NHKにどのように働きかけたのかは、原告らにはわからない。
• しかし、被告NHKには、議事録を不開示にする動機がない。審議委員会の答申が出ている以上、これに反対する理由がない。
• 被告森下には、議事録を不開示にする動機がある。自らの放送法32条2項に違反して、放送に介入した行為を隠蔽する必要があるという強烈な動機である。
• また、被告森下には、働きかけることのできる能力もある。経営委員会委員⾧として、NHKの最高幹部の人事権も有している。
被告森下の尋問が必要
• 被告森下が、被告NHKにどんな働きかけをしたのかは、原告らには具体的にはわからない。
• しかし、前述のように、被告森下が働きかけた蓋然性が高い。
• 働きかけをした被告森下、働きかけられた側NHK会⾧を尋問して明らかにする必要がある
********************************************************************
原告は、本件の提訴後に原告らに公開された「粗起こしの議事録草案」の取り扱いについて被告両名に提案した。
これは、適式の議事録ではないものと明記された代物である。このままでは、被告NHKの文書開示義務の履行があったと認めることはできない。内容の真実性を確認するすべもない。
しかし、他の議事録と同様に、適式の手続きを履践してこれに所定の責任者が署名捺印のうえNHKのサイトに掲載するのであれば、議事録と認めよう、というものである。これに対して、被告NHKは異議を述べなかった。「経営委員会委員長である被告森下の意向次第」という姿勢。
ところが、被告森下は「ノー」なのだ。驚くべき頑なさである。
それなら、原告は徹底して請求を続けるというしかない。「41条に基づいて経営委員会委員長が作成した議事録があるはずだから、これを開示せよ」「これが存在しないと言うのなら重大な任務違背だ」と追求するも、「ない」との回答。
さらに、本日の法廷では以下のことが問題となった。
原告が開示を求めているのは、「一切の記録・資料」であって、当然に電磁的記録を含む。音声記録か画像記録か、元データがあるはずだから提出せよ。それと照合することによって、「原告らには公開されたが、国民には公表されていない、《粗起こしの議事録草案》」の正確性を確認することができる。
これに対する被告森下の回答が驚くべきものである。「消去して、現在存在しない」というのだ。文書の隠匿の次は、廃棄である。とうてい納得できない。これから、この点が大きな問題となる。
まずは、誰が、いつ、なぜ、どのように、消去したのかを問い質さなければならない。また、復元可能性についても追求しなければならない。そして、被告森下の悪性を明確にし、その任命者である安倍政権の責任も追及しなければならない。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.4.27より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=19036
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion11984:220428〕