安倍晋三首相の強引な国会運営は目に余る。昨年の参院選で圧勝した結果、国会の〝ねじれ〟現象が解消。両院で絶対多数を握った自公両党は、特定秘密法案強行可決などの独断的姿勢を見せ付けた。国会論議を軽視した独善的姿勢は度を越しており、国民からの批判が高まってきた。
「国民が主人公」の民主主義を賑やかに
年末・年始の各紙社説は「国のかたち」に関するものばかりで、特に強権的安倍政権への批判が目立った。北海道新聞は元日から連続して「憲法から考える」との社説を掲げており、琉球新報や沖縄タイムスも「沖縄と本土の認識のズレ」に警告を発していた。朝日、毎日、東京3紙は時代状況を危惧して問題点を指摘し続けており、元日付朝日、毎日社説は民主主義の価値を論じ、市民の〝異議申し立て〟で民主主義を賑やかなものにし、選挙や国会頼りでなく、底辺の「枝葉」を活性化させようと主張していた。「国民が主人公」の政治を実現する民主主義の根幹だからである。
異色の社説は、「日本浮上へ総力を結集せよ」(読売元日付)「国守り抜く決意と能力を」(産経元日付)で、日米同盟の強化と集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈の変更」などの主張を展開していた。
自民党の得票率はかなり低い
2012年12月16日に行われた衆院選挙の結果、自民党は294議席(改選前119)を獲得し、単独で絶対安定多数(269議席)を確保。これに公明党の31議席を加え、衆院再可決が可能な議席も確保した(民主党は改選前の230議席から57議席と惨敗)。
そもそも自民党は小選挙区制の〝恩恵〟を受けて当選議員を増やしたのに、多くの国民に支持されたと誤解している。2012年衆院選での得票率は、比例代表27%、小選挙区43%に過ぎなかった。膨大な「死に票」を生む小選挙区比例代表制の悪例である。昨年3月総務省が明らかにした数字によると、一昨年の総選挙で落選者の獲得した得票総数は53・06%で、当選者のそれを上回っている。死に票が50%以上の選挙区が6割の188に及び、長野3区や東京1区では死に票率70%を超えた。(参院選の〝死に票〟算出は難しい)
「一票の格差」是正に真剣に取り組め
各党の得票数を精査すれば、自民党支持は5割を下回っていることが明白。もちろん「51対49」でも多数決に違いないものの、このようなケースの累積が多すぎる自民党議員を生み出したと分析できるのだ。この冷厳な事実を自民党は謙虚に受け止め、慎重な国会運営に臨んでいるとは、とても思えない。「絶対多数」で押しまくる驕りが、最近の国会運営で目立つ。
国会は公正な選挙で選ばれた議員が、国民のために熟議する場である。少数党の批判・意見にじっくり耳を傾け、民意を幅広く採り入れた法案づくりこそ肝要。一票の格差を司法に相次ぎ断罪されても、選挙無効でなければ受け流す。――「三権分立とは〝どこ吹く風〟」と、是正策を示さない国会の怠慢も許せない。
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