脱被曝の理解を深める4冊 お勧めいたします

著者: 田中一郎 : ちょぼちょぼ市民・原子力資料情報室
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昨今出版された図書から,脱被曝の理解を深める4冊をご紹介いたします。

(1)『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』(岩波新書:日野行介著)

http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/

発足当初から福島県民をはじめ,福島第1原発事故による被災者・被曝者を裏切り

続けてきた「福島県民健康管理調査検討委員会」,その一部始終を粘り強い取材活動

と,きらりと光る批判力で追いかけ続ける毎日新聞社・日野行介記者の迫真のレポー

トです。「秘密会」とは何だったのか,この委員会は何を決めていたのか,福島の今

と放射線被曝対策の実態を知るに欠かせない1冊です。

(2)『エピゲノムと生命 』(ブルーバックス) [新書] 太田 邦史 (著)

http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A8%E3%83%94%E3%82%B2%E3%83%8E%E3%83%A0%E3%81%

A8%E7%94%9F%E5%91%BD-%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%AF%

E3%82%B9-%E5%A4%AA%E7%94%B0-%E9%82%A6%E5%8F%B2/dp/4062578298

放射線被曝と言えば「DNA・遺伝子の破損・破壊・切断」,もう放射線被曝の健

康問題は遺伝子の損傷に限定されているかのごとき,VSOP(Very Special One

Pattern)の議論が続く日本ですが,これって,おそらく不勉強で傲慢極まりない原

子力ムラの「ボンクラ科学」による世論誘導の可能性ありです。まるでまるで,1960

年前後の,あの遺伝子・DNAの「セントラルドグマ」発見当時が,そのまんま今に

タイムスリップしたような,遅れに遅れた分子生物学的理論蒙昧の「放射線被曝」論

です。

今や分子生物学の先端は「エピゲノム」=エピジェネティクスです。これについて

の基礎知識なくして,放射線被曝論は理解できないでしょうし,語れないでしょう。

人間を含む生物の体を放射線が襲った時,それは遺伝子だけでなく,遺伝子を発現・

作用させているエピジェネティクス的細胞生理秩序を含む生命のすべての体系が,放

射線の猛烈なエネルギー破壊力によって,滅茶苦茶にされてしまうのです。

このブルーバックス=まだ中身は読んでおりませんが,おそらくエピジェネティク

スを平易に解説する,初めての手ごろな新書ではないかという気がします。

(3)『小児がん―チーム医療とトータル・ケア』 (中公新書) [新書]細谷亮太

(著) ・真部淳 (著)

http://www.amazon.co.jp/%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%8C%E3%82%93%E2%80%95%E3%83%

81%E3%83%BC%E3%83%A0%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%81%A8%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%BF%E

3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%82%A2-%E4%B8%AD%E5%85%AC%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E7%

B4%B0%E8%B0%B7-%E4%BA%AE%E5%A4%AA/dp/4121019733

この本ですが,子どもの甲状腺ガンに詳しい方にお勧めされた1冊の新書です。発

刊は少し前の2008年11月です。福島第1原発事故がなかったら,おそらくは一生お目

にかかることがなかったであろうと思われる本だと言っていいかもしれません。で

も,この日本では,福島第1原発事故の結果起きた放射能の環境への大量放出によ

り,多くの子ども達が放射線被曝を余儀なくされ,しかも,事故の後もその命や健康

が守られないがため,小児甲状腺ガンが多発してきそうな気配にあります。

しかし,原子力ムラ一族は,この放射線被曝による甲状腺ガンを,福島第1原発事

故前の高齢者の女性に多かった甲状腺ガンと同一視して,進行がおそい,病後の経過

もいい,心配のあまり要らないガンだ,などとうそぶいております。小児がんは,大

人のガン,高齢者のガンとは違う。進行も早いし,転移も早い,そんな小児がんの特

性について,この1冊から学ぶことができます。

(4)『調査報告  チェルノブイリ被害の全貌』(岩波書店:アレクセイ・V.ヤブ

ロコフ,ヴァシリー・B.ネステレンコ,アレクセイ・V.ネステレンコ,ナタリヤ・

E.プレオブラジェンスカヤ,星川淳監訳,チェルノブイリ被害実態レポート翻訳

チーム訳)

http://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN978-4-00-023878-6

原発事故後の対応・対策を間違うと,如何に大変な事態を招くのか,チェルノブイ

リ原発事故後のウクライナやベラルーシでいま起きていることを直視すれば,強烈な

インパクトとともに理解できるでしょう。放射線被曝の実態とはどういうものか,お

知りになりたい方は,まず,この1冊をお読みください。

福島をはじめ,東日本のホット・スポットに住む住民の方々は,今持ってたいへん

な危機的状況下におかれています。一刻も早く非難を,疎開を,移住をお勧めいたし

ます。放射能・放射線を甘く見てはいけません。恒常的な低線量被曝は極めて危険で

す。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.ne/
〔opinion14611:130922〕