(2021年9月27日)
安倍晋三長期政権の権力私物化の象徴が、「モリ・カケ・サクラ」である。そのどれもが、いまだに説明が尽くされていない。安倍晋三の責任が曖昧にごまかされたまま。アベ・スガ政権の後継者を決める総裁選挙も終盤だが、自民党に自浄能力があるのかが問われている。
そのような問題意識で、「『桜を見る会』を追及する法律家の会」が、本年9月17日付けで、自民党総裁候補4人と野党の代表者7名に、公開質問状を送った。
http://article9.jp/wordpress/?p=17589
関心は自ずから、自民党総裁候補4人の回答に絞られる。この質問状には、「回答内容は、回答の有無も含め、マスコミ等への公開を予定しております」と明記されている。公開質問状だから当然といえば当然だが、元首相安倍晋三の不祥事を、どのように深刻に受けとめ、どのように再発の防止に努めるのか、誰もが問い質したいところ。野党各党の回答と比較されるのだから疎かにはできまい、と思ったのが浅はかだった。
自民党総裁選候補者、岸田文雄、高市早苗、河野太郎、野田聖子のうち、河野太郎は積極的な配達証明郵便の受け取り拒否。あからさまな、人の言うことに聞く耳を持たないという積極姿勢を示した。岸田文雄と高市早苗の両名は質問状を受領はしたが無回答。おそらくは、どう答えてよいか、決断できなかったのであろう。
つまり、国民への受けがよいのは「首相の犯罪を厳しく断罪する姿勢」である。しかしそう回答すれば、まだ健在な安倍から睨まれる。それなら、黙して語らぬのが良策という姿勢。これを「疚しき沈黙」という。結局のところ、岸田、高市、河野、このだれが、総裁・総理になっても、自浄の意思も能力もない。
これに対して、野田聖子だけが真っ当な姿勢を見せた。下記のとおり、計5問に手抜きのない丁寧な回答を寄せている。他の3候補とは際だった違い。その全文を掲載しておきたい。
1 桜を見る会について
① 検察審査会の指摘について、これは検察官が専門家として判断したものの上に、国民の代表が意見を反映したものと認識しており、賛同します。
② まず「桜を見る会」そのものを今後どうするかについて、私が首相になったときには、全面的に見直しを行い、(コロナを克服してからの)桜を見る会にはすぺての国民の皆様をど招待したい、と考えております。桜は日本の国花です。桜には罪はありません。日本人はこれまで、春を待ち焦がれ、桜を待ち焦がれ、多くの歌に詠んできました。私は、民主主義政治の原点は、政治家が国民とともにあることだと思っています。内閣総理大臣として、希望するすぺての国民とともに桜を楽しみ、国民から勇気と元気を頂いて、明日からの国家へのエネルギーに変える、そのような会に改革したいと思っています。
次に、安倍総理大臣の行った桜を見る会に関する疑惑についでは、秘書が略式起訴され罰金が確定、安倍議員ど本人が不起訴となりましたが、その後検察審査会で不起訴不当となり、再捜査が行われているものと思います。当面は捜査の行方を見守りたいと思いますが、そもそも民主主義政治における政治家は、あることないこと言われるのが通例ですが、自らの潔白は自らが丁寧に説明すべきものと考えています。
2 前夜祭について
① 検察審査会は専門家である検察官が下した判断の上に、国民の代表が意見を反映したものですので、その指摘を尊重したいと思います。
② これも同様の理由で、検察審査会の指摘を尊重したいと思います。そのうえで、民主主義政治における政治家は、あることないこと言われますし、今はフェイクュュースの脅威にもさらされています。そんな中においても、検察審査会のご指摘の通り、私たちの責務として、自らの潔白は自らが丁寧に説明すべきものと考えています。
③ 政治家が説明責任を巣たし終えたかどうかの判断は、極めて難しいものだと思っています、ただし、私たちが民主主義政治における政治家である以上、国民のせめて過半数が納得してくださるまで、私たちは粘り強く説明する責任を負っているものと考えています。
公明党からも回答があったが、「検察の処分を待つ」とするだけのもの。おそらくは、自民党と連立を組む立場においては、それ以上は言えないということなのだろう。これも、自浄能力がない。
さすがに、立民、共産、社民、れいわの4党からは、安倍晋三の責任を明確化することに何の忖度もない回答になっている。これは希望だ。残念なのは、維新と国民からは回答のないこと。
本日(9月27日)、「会」は、記者会見を開いてこの結果を公表した。
そこで述べられたことは、「このまま、与党の政権が続れば、桜を見る会は同じように曖昧にされ続けてしまうだろう」「野党4党の回答には、自党が政権を担うことになれば、真相解明と責任追及、法制度の改善という積極的な行動に出る、という決意の表明が見られた」ということ。
総裁選、自浄能力のない候補者の優勢が報じられている。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2021.9.27より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=17642
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion11332:210928〕