自民党政権の電力自由化のインチキにだまされるな (電力全面自由化の大前提 「広域機関」に潜む大きな罠( 『週刊ダイヤモンド 』)記事より)

少し前の『週刊ダイヤモンド』に掲載された電力自由化に関するコメント記事です。あれだけ原子力ムラの代理店業務を忠実に遂行し、福島第1原発事故を経てもなお、原発再稼働を強引に推し進めてはばからない自民党や経済産業省などが進めている「電力自由化」、ついこの間は、その「電力自由化」の第一弾として電気事業法が改正され、家庭用小売り電力の自由化や電力会社の送配電部門の分離が、今後の予定に入れられました。

 

この2013年の電気事業法改正については、今すぐにでも着手できることを、さしたる理由もなく何年も先送りする電力完全自由化への「抵抗法案」である旨は既にお伝えしている通りですが、この法改正と並行して、まもなく実施されることになっているのが「広域的運営推進機関(広域機関)」の設立です。「広域機関」とは、「これまで地域ごとに分断されていた電力供給の構図を変え、地域をまたいだ送電を拡大していくための機関で、来春に設立される」のだそうです。この記事は、この広域機関の設立へ向けた関係者達の動きに電力完全自由化の主旨をゆがめるような事態が起こりつつあり、早くも黄色ランプが燈りつつあるという警告を発する内容の記事です。以下、簡単にご紹介いたします。

 

病的なまでに執拗な原子力ムラ代理店の自民党政権が、原発を保有する地域独占の現電力会社9社を、事実上、市場競争によって弱体化・解体してしまいそうな電力自由化論に、簡単に乗ってくると思うのはあまりに楽観的です。これから下記のスケジュールが見通されている中で、どのように自民党・電力会社の原子力ムラ連合軍が反撃してくるのか、あるいは抵抗(先送り)するのか、よく目を見開いて見定める必要があります。様々な手段や理屈で、電力自由化のエッセンス=つまり、電力市場が自由化され、消費者・ユーザーが電力を選択でき、かつ電力が安定的にリーゾナブルな料金で提供されるようになること、つまりは、そうではない原子力は市場淘汰されていくこと、がないがしろにされていかないように、広範な消費者・国民の監視が必要です。

 

その第1号が、今回ご紹介する、この「広域的運営推進機関(広域機関)」の設立に関する問題です。

 

● 電力全面自由化の大前提 「広域機関」に潜む大きな罠(茂山龍三 『週刊ダイヤモンド 2014.5.24』)

http://mikke.g-search.jp/QDIW/2014/20140524/QDIWDW00340232.html

 

まず、電力自由化のスケジュールは次の3段階

 

ステップ1 2015年 広域的運営推進機関の設立(地域分断だった送電網を全国一体で効率的に計画運用)

ステップ2 2016年 電力の小売市場を全面自由化(消費者が家庭用の電力を買う先の事業者を選べるようになる)

ステップ3 2018~20年 発送電分離の実施(電力会社の送配電部門と発電・小売り部門を法的に分離)

 

(以下、一部抜粋)

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「広域機関は、エリアを超えた電力の融通を指示するほか、地域間の送電網の整備を図る。ほかにも、電力会社に送電インフラへの投資の指示、電力会社問の広域的な需給調整、電力会社が持つ送電網へ他社(新電力も含む)の接続を促すなどの役割を担うことになる。これまで送電網の開放は、電力系統利用協議会(ESCJ)が推進してきたが、広域機関はESCJを大きく超える権限を持つ。それだけに、新たな電力市場を創出していく上で、中核的な機能を担うことになる。」

 

「広域機関はスタート前からつまずいた。昨年、電事法改正案が反発を受ける中、広域機関の名称は当初の「広域系統運用機関(仮称)」から「広域的運営推進機関」に変更された。「系統」とは電力業界で送配電システムを意味する用語である。組織の名称から重要な役割を意味する言葉が消され、一見意味の分からない名称となってしまった。」

 

「それだけではない。実際の役割も、電力会社聞の調整を行う機能のみに限定され、「一番重要な電力会社をまたぐ全国規模の送電網運用組織にはなっていない」(電力業界関係者)という。つまり、改革が「骨抜き」になる懸念が残されているのだ。」

 

「広域機関の設立に向けて、昨年9月には検討会、今年1月には冒頭の準備組合が結成された。」(中略)「少々複雑だが、現在の広域機関と準備組合の関係は、広域機関の発起人になる電気事業者などが、準備組合に業務委託をしている体裁だ。だが、「この仕組みは大きな問題を起こしかねない」とある電力の専門家は指摘する。」

 

「しかし、広域機関の発起人である電力会社らの意思で準備組合が発注すれば、従来の電力会社に牛耳られる構図は変わらない。そして、広域機関の電力会社からの独立性を見る上で、一番の試金石となるのが、冒頭のシステム開発の提案募集なのだ。」「このシステムは、送電網や需給の監視、広域での電力周波数の調整、電力が不足した地域への応援融通の指示など、広域機関の業務の根幹を担うもので、発注規模は数十億円単位とみられている。」

 

「「また、東芝が選ばれるんじゃないですかね」――。一部のエネルギー業界関係者からは、今回の提案募集をこうやゆする声も聞こえる。」

 

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少々わかりにくいですが、来春に向けて「広域機関」の設立準備を進めている準備組合が、既存の地域独占電力会社に牛耳られ、スタート時点から、その電力調整システムすら「内輪」で固めてしまわれようとしている、という主旨のようです。こうしたことの延長線上に、完全自由化された電力市場などあろうはずはなく、巨大な既存電力の裾野に新電力が群がって、既存電力を協賛しながら担いでいるような(そうしなければ新電力はやっていけないような)、そんな支配・被支配の「形だけの自由市場」ができあがってくるのではないか、このレポートが危惧するのは、そのような今後の見通しです。そもそも送配電が「法的分離」にとどまり、完全自由化のために必要不可欠な「所有分離」=つまり、既存巨大電力からの送配電網の切り離しが、先般の電気事業法改正で排除されていることも大きな懸念材料の一つなのです。

 

電力市場自由化の今後の行方に監視を強めましょう。