世界平和アピール七人委員会は12月12日、「自衛隊の海外派遣を常態化してはいけない
―集団的自衛権行使に向かう既成事実作りの危険性を直視し、武力によらない平和構築に向けての積極的貢献を!―」と題するアピールを発表した。
報道によれば、政府は、年内にも、海上自衛隊を中東海域に派遣することを閣議決定するとみられている。これに対し、世界平和アピール七人委は、「自衛隊による集団的自衛権行使の『予行演習』につながりかねない措置である」との危機感を深め、緊急アピールを出すことにしたものだ。
アピールは、「自衛隊の海外派遣を常態化てはならない」と警告し、日本は「安定した平和を構築するための外交面での積極的貢献と人道的支援について世界の最先端に立って活動すべきである」と主張している。
世界平和アピール七人委は、1955年、物理学者・湯川秀樹らにより、人道主義と平和主義に立つ不偏不党の知識人有志の集まりとして結成され、国際間の紛争は武力で解決してはならない、を原則に日本国憲法擁護、核兵器禁止、世界平和実現などを目指して内外に向けアピールを発表してきた。今回のアピールは136回目。
現在の委員は、武者小路公秀(国際政治学者)、大石芳野(写真家)、小沼通二(物理学、慶應義塾大学名誉教授)、池内了(宇宙論・宇宙物理学、総合研究大学院大学名誉教授)、池辺晋一郎(作曲家)、髙村薫(作家)、島薗進(宗教学、上智大学教授)の7氏。
アピールの全文は次の通り。
自衛隊の海外派遣を常態化してはいけない
―集団的自衛権行使に向かう既成事実作りの危険性を直視し、
武力によらない平和構築に向けての積極的貢献を!―
世界平和アピール七人委員会
年内に自衛隊艦船や哨戒機の中東派遣を閣議決定すると報じられている。この派遣計画は2019年10月18日の安倍晋三首相の検討指示によって明らかになった。7月に米国から呼び掛けられたイラン包囲の有志連合「海洋安全保障イニシアチブ構想」には参加しないが、首相の判断や国会の承認を必要とせず防衛大臣のみの判断で派遣できる「調査・研究」との名目での中東派遣である。米国とイランの緊張が高まっているホルムズ海峡までは行かないので危険はないと説明され、菅義偉官房長官は船舶防護が必要な状況ではないと言う。友好国イランに配慮すると言い訳しつつ、他方では中東問題での日米協力を確認している。
現在の対立は、5月末に米国がイラン産の原油の全面禁輸を開始したことによって引き起こされたものである。6月には日本のタンカーが、9月にはサウジアラビアの石油施設が正体不明の相手から攻撃されるなど、中東の緊張は高まってはいる。11月には7か国のみの参加による米国主導の有志連合も活動を開始した。
しかし、いまなぜ自衛隊艦船や哨戒機を「調査・研究」のために派遣しなければならないかの国民への説明は一切なされず、与党の了解だけで閣議決定を行うというのである。事態が変化すれば派遣区域も派遣目的も変更し、武器使用の制限を緩めて対処するというのだから、けじめなく既成事実が拡大されていくことになる。
このようなあいまいな自衛隊の海外派遣は、軍隊を持たず最小限の自衛に限るべき日本の行うべき活動ではない。中東のあるべき姿に向けて国際的緊張を緩和させ、危険性を除去し、安定した平和を構築するための外交面での積極的貢献と人道的支援について世界の最先端に立って活動すべきである。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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