「ほっととーく」という、手作り感満載の定期刊行物が毎月郵送されてくる。
「『良心・表現の自由を!』声をあげる市民の会」の会報で、標題の上に「『日の丸・君が代』の強制に反対し、渡辺厚子さんの戒告・減給・停職処分撤回を求める」とスローガンが掲記されている。日の丸・君が代強制に反対する運動の最前線にあり続けている渡辺厚子さん支援の趣旨なのだ。
良心の自由は今は逼塞させられている。その良心を表現する自由も窮屈だ。その良心と表現の自由を市民が支えて、みんなで声をあげよう。その思いが、この「ホットトーク」の中に詰まっている。
B5版の全12ページ。2017年8月27日付の最新号が、通算で第142号。会の発足が2002年12月、会の最初の集会が2003年1月だとのこと。以来、14年8か月、「ほっととーく」の刊行は続いてきたのだ。その息の長い活動に感服するしかない。
しかも、毎号なかなかの充実ぶりだ。日の丸・君が代強制に反対する運動が、実は裾野の広い思想に支えられ、多くの対決点をもっていることを教えている。
今号の主だった記事をご紹介しておきたい。
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企画の案内が盛りだくさん。
まずは、会が主催する「壊憲NO! 戦争NO! 命輝く社会へ! 11・4集会」の案内。メインの講演者は、森川輝紀さん(埼玉大学名誉教授・教育史)、演題は「ナショナリズムと教育ー「教育勅語」「国民道徳」への道ー」。
その企画の趣旨説明はかなりの長文。さわりだけを抜き書きすれば、
「主権が天皇から国民に移って70年たつというのに,今,天皇制国家教育の精神的支柱であった教育勅語が,再び政治主導で教育にはいり込もうとするとは,いったい戦後とは何だったのかと自問する人が少なからずいるのではないでしょうか。」
「長年教育史を研究してこられた森川輝紀さんをお招きし,戦前・戦中そして戦後の教育とナショナリズム,とりわけ「教育勅語」「道徳」についてたっぷりお話を伺うことにいたしました。」
「卒業式での「日の丸・君が代」の強要は、今や3・10、3・11、そして8・15の半旗・黙祷へと拡大されています。災害を利用して、或は戦争被害者を利用して、国家や国家シンボルヘの敬愛と従属をすりこもうとしているのです。」
「安倍政治の柱は教育と安保です。着々と戦争国家化を進め、改憲を粛々と準備しているのです。」「こうした中、森川輝紀さんのお話は、きっと多くの示唆と勇気を与えてくれると思います。誠実な研究者の「知」を共有させていただきましょう。」
11月4日(土)開場13時 開会13時30分
開場は、飯田橋のセントラルプラザ10階 「ボランティアセンター会議室」
次いで、東京「君が代」第4次訴訟の東京地裁判決日が9月15日(金)であることのお知らせと支援の要請。
東京「再雇用拒否」第3次訴訟 最高裁事件の支援の要請。
学校に自由と人権を! 10・22集会のご案内
西元利子「哭する女たち」展(韓国従軍慰安婦絵画)案内
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渡辺さんご本人が、「金子文子忌」の一文を掲載している。
金子文子の91回忌にあたる7月23日、その生き方に惹かれる人々60人ほどが、故地牧丘(山梨県)の歌碑に集い、献花の後研究者からの最新の報告を聞く機会をもったとのこと。例年のことだという。それは知らなかった。
「朴烈大逆事件」は松本清張の昭和史発掘で知られている。瀬戸内晴美も小説の題材にしている。金子文子は朴烈の妻(内縁)で、朴烈とともに大逆罪で死刑判決を受けた女性。わずか23年の凄絶な生涯。
大逆罪の法定刑は死刑のみである。未遂だろうが予備陰謀だろうが死刑。しかも、管轄は大審院の一審のみ。これが天皇制を支えた恐怖の法制である。歴史上大逆罪の起訴は4件ある。幸徳秋水事件以上に、朴烈事件の起訴事実は根も葉もない完全なでっち上げだったとされている。
死刑宣告の直後に、「慈悲深い天皇」の恩赦によって無期懲役に減刑とされ、死刑の執行はなかったが、文子は間もなく監房で死んでいる。縊死(自殺)と公表されたが、当時から怪しまれ、真相の究明は妨害されたまま今日まで闇の中である。
渡辺さんは、こう述べている。
「文子に惹かれる理由は、鋭い感性と純真に煮詰める思想、だろうか。天皇制、ジェンダー、戸籍、国家と個人、朝鮮人と日本人、個人の自立と連帯、教育、格差、権力欲、求める社会。考え抜いた思想がそこにはある。文子は『私は私』と立っていた。」
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俵義文さん(子どもと教科書全国ネット21)の「教育出版小学校道徳教科書問題について」という長文の談話が掲載されている。これも、国旗・国歌(日の丸・君が代)問題に関わる。そして安倍政権の問題点があぶり出されている。
さらに、「一編集者から」という松本昌次さんの連載寄稿。今号は、№31「野党もメデイアも諦めずに」というもの。
「2020年 地方自治体非正規労働者雇用に大変動のおそれ」という、連帯労組板橋区パートからの支援要請もある。
最終ページが高根英博さんのマンガ。「『日の丸・君が代』わたなべーだ」という標題で、8コマの哲学マンガ。内容は、政権批判、天皇制批判、差別批判。これが、連載第128回だ。
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中に、「自由と平和のための京大有志の会」の声明書が転載されている。有名になったもので、私も目を通していたが、その平仮名バージョンは知らなかった。これをご紹介しよう。
わたしの『やめて』
くにとくにのけんかをせんそうといいます
せんそうは「ぼくがころされないように さきに ころすんだ」
という だれかの いいわけで はじまります
せんそうは ひとごろしの どうぐを うる おみせを もうけさせます
せんそうは はじまると だれにも とめられません
せんそうは はじめるのは かんたんだけど おわるのは むずかしい
せんそうは へいたいさんも おとしよりも こどもも くるしめます
せんそうは てや あしを ちぎり こころも ひきさきます
わたしの こころは わたしのもの
だれかに あやつられたくない
わたしの いのちは わたしのもの
だれかの どうぐに なりたくない
うみが ひろいのは ひとをころす きちを つくるためじやない
そらが たかいのは ひとをころす ひこうきが とぶためじやない
げんこつで ひとを きずつけて えらそうに いばっているよりも
こころを はたらかせて きずつけられた ひとを はげましたい
がっこうで まなぶのは ひとごろしの どうぐを つくるためじやない
がっこうで まなぶのは おかねもうけの ためじやない
がっこうで まなぶのは だれかの いいなりに なるためじやない
じぶんや みんなの いのちを だいじにして
いつも すきなことを かんがえたり おはなししたり したい
でも せんそうは それを じやまするんだ
だから
せんそうを はじめようとする ひとたちに
わたしはおおきなこえで 「やめて」というんだ
じゆうと へいわの ための きょうだい ゆうしの かい
この市民の運動の充実ぶりが頼もしい。良心を支え、表現の自由を実現する支えになっているではないか。このような市民運動の試みが積み重なって、よりよい社会を作ることになるのだと思う。
なお、会にはささやかながらもホームページがある。URLは下記のとおり。
http://hotmail123.web.fc2.com/
(2017年9月4日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2017.09.04より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=9130
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion6917:170905〕