昨夏の衆議院選挙において、民主党が劇的な勝利をして鳩山首相が誕生した折には、率直に言って、私個人を含めて多くの国民が、多少の期待と希望を持っていたものでした。 しかし、現実は厳しく、程なく迷走を始めたのですが、大方の批評とは相違して、私には、「迷走」よりも民主党鳩山政権の持つ、自公時代よりの一貫した性質に日本の保守政治家(だけではありませんが)に染みついた悪癖が感じられ、軽蔑に似た感覚が沸き起こって来たものでした。
金権体質を批判するのでは無く、彼とその周辺の政治家の思考回路が「お金」を中心に回り、国民には「お金」をばら撒けば票を入れるだろう、アメリカも世界も「お金」でどうにかなる、というバブル時代に批判を受けた「エコノミック・アニマル」の思考が抜けないのではないか、と推察したのでした。
鳩山氏だけを批判しては公平ではありません。 選挙前の民主党の「マニフェスト」はバラ色の夢と黄金色に輝いて観えたものでした。 「本当にこんなことが短期間に出来るの?」と皆さんは思われませんでしたか? 夢や希望が現実に取って代わられたときは悲惨ですよね。 「こども手当」は成程、支給してもらえば子育て世代は有難い、そのお金が消費拡大に結びつけば成功です。 しかも財源にまで思いをいたす国民は少ないので票は稼げるでしょう。 しかし、そのために増税をするのでは、一種の詐欺ではないのでしょうか。 世間では、これを「毒まんじゅう」と言います。
地球温暖化問題では、「鳩山イニシアチブ」の名の下に巨費のバラマキを世界に宣言する太っ腹を見せられたものでした。 ただし、「そんなお金、どこにあるの?」
作家の黒木亮氏は、「日本政府は2012年までに発展途上国に1兆7500億円(対外的には150億ドルと説明)を支援する「鳩山イニシアチブ」を発表した。一般政府債務残高がGDPの180%(主要先進国の2~4倍)という財政破綻(はたん)寸前の日本が、こうした際限ないばら撒(ま)き外交を続けてよいはずがない。」と批判されますが、「太っ腹」の金満政治家は、WSJが皮肉ったように「ハラキリ」を決意したのでしょうか。
http://sankei.jp.msn.com/life/environment/091221/env0912210051000-n1.htm
日本の「25%削減」公約 ばら撒きは破綻招く 寄稿 作家・黒木亮
現今の欧州の財政危機は、日本がギリシャ化する現実的な恐怖を施政者に与えるものでした(実際彼らがどう感じているかは不明ですが)。 ギリシャの財政再建は困難が予想されますし、欧州の抱える「南北問題」には、今後も注意が肝要でしょう。 しかし、日本は、この間にギリシャを反面教師として学ばないと、近い将来に悪夢が現実になる、と予測する経済・財政の専門家は大勢を占めるのです。
欧州では、火勢が及ぶのを防止しようと必死です。 例えば、スペイン政府は歳出削減策、および労働市場改革などを打ち出しています。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15895720100618
スペインの緊縮財政措置、正しい方向を向いている=IMF
菅新政権は、どうこの難局を乗り越えようとされるのでしょうか。
WSJは、「菅首相で革新的なことといえば、債務が国内総生産(GDP)の200%に近づいており、政府が少し歳出規模を減らす必要があるかもしれないと認めたことぐらいだ。」
と辛辣な評を与えましたが、私は、「こども手当」を手にしたある父親が封筒を見ながら言った言葉が忘れられません。 「いつまでこの金をもらえるのか分からないけど、給料が減るのは確かだ。」。
http://jp.wsj.com/Opinions/Columns/node_73138
【社説】日本の「第三の道」