本日(10月10日)、第49回衆議院議員選挙が公示される。投票日は22日である。安倍晋三首相が先月末に衆議院を解散する意向を明示した段階では、今回の総選挙は政権の維持のみを図るきわめて利己的な目的によるものとの見方が広く共有された。
ところがそれを受けて立つはずの野党第一党・民進党の前原誠司代表が突如、信じがたい行動に出たことで、今度の総選挙は日本の政治に大きな画期を印すものとなった。
それは与党陣営だけでなく野党の大きな部分からも、「憲法改定」を目指す勢力の結集を公然と呼びかける動きであり、言うなれば平和憲法を守り活かそうとする力を「リベラル勢力排除」の掛け声によって、国会から追放し、今度の総選挙を“改憲翼賛”選挙にするという策動である。
われわれ『護憲・軍縮・共生』を掲げる「リベラル21」としては、この策動を見逃すわけにはいかない。もし今度の総選挙の結果、衆議院議席の3分の2以上を改憲派が押さえるとすれば、憲法9条を改悪する動きが急速に具体化することは必至である。
そこでわれわれとしては、衆議院定数の少なくとも3分の1(155議席)以上の護憲派を当選させなければならないとの立場から、読者のみなさんのご理解、ご支援、ご協力を切に願うものである。
国政政党「希望の党」を急遽立ち上げた小池百合子東京都知事は、民進党員の全員を公認することは「さらさらない」と高言、安保法制や改憲に反対する民進党リベラル派を排除した。こうして前原氏に裏切られたリベラル派の代表格である枝野幸男氏(民進党代表代行)は、同志たちを集めて10月2日「立憲民主党」を立ち上げ、護憲勢力としての柱を立てた。
発足したばかりの立憲民主党の公式ツイッターは10月6日までに、14万人を超すフォロワー(読者)数が名乗りを上げ、主要政党の中で最多だった自民党を追い越した。また枝野代表の街頭演説はどこでも人気を呼んでいるという。それ以外に護憲政党としては共産党、社民党があり、この護憲派3党をつなぐ形で「市民連合」が、全国各地で活発に活動している。この3党と護憲派無所属の議員たちが155議席以上を占めれば、保守派の狙う改憲の発議はできなくなる。
前原氏は「なにがなんでも安倍政権を打倒するために熟慮に熟慮を重ねた結果である」と、民進党からの立候補者を「民進党公認候補」とせず、希望の党の公認候補に送りこむ、という愚挙を説明した。
希望の党は10月8日までに改憲に賛成する立場の201人を公認した。しかし、このままでは、希望の党が、政権交代に必要な233議席に手が届くことはありえない。足りない分は大阪維新と連携したりして数合わせをするそうだが、そんなことで「政権交代」ができると真に受ける人はいまい。
それにしても小池氏は、昨年の都知事選において「初の女性都知事」の座を射止めてからまだ1年余、築地市場の移転もなお行く先不透明、東京オリンピック・パラリンピックの準備もこれから胸突き八丁というところでの国政への関心移転である。それも「改憲・安保法制支持」という右傾路線を明確にしての参戦であり、「都民ファースト」を掲げて都議会自民党の利権体質を追及するポーズで票を集めた昨年の姿とは別人のごとくである。
小池氏や前原氏を表向き「安倍一強体制打破」を掲げながら、今回の行動に駆り立てたものは何か。北朝鮮の相次ぐミサイル発射実験や核実験による米朝間の緊張の高まりを日本の右傾化推進、憲法改定の好機ととらえたからであろう。安倍首相と対立するのではなく、安倍首相より前に出て鼻をあかしてやろうという野心ではないか。
われわれももとより北朝鮮の核武装化に狂奔する政策を支持しない。しかし、それを有無を言わさず力で抑え込もうとする態度にも賛成しかねる。今の米朝間の緊張が間違っても直接の武力衝突につながらないように努力するのが周辺に位置する国としての責務であるはずである。
今こそ「国際紛争解決の手段としての武力の放棄」を謳った日本国憲法の理念を拠り所に国際社会に平和を働きかける時である。率先して北朝鮮への制裁強化を叫ぶ安倍路線、それを一気に憲法改定にまで進めようという小池・前原路線、いずれもわれわれの考えとは相いれない。この両陣営による“改憲翼賛”選挙に対して、今こそ「リベラル」の旗を掲げて「ノー!」と言わなければならない。
われわれは呼びかけたい。各選挙区において、この両陣営以外の護憲派候補者を当選させよう、と。
2017年10月10日
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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