5月21日に閉幕したG7広島サミット首脳会議が発表した『核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン』に被爆者や平和団関係者から、失望や怒りの声が噴出している。そのいくつかを紹介する
被爆者の願いに背く内容だ――被団協代表
5月21日付の読売新聞オンラインによれば、日本原水爆被害者団体協議会の田中煕巳(てるみ)代表委員(91歳)は同日、オンラインで記者会見し、「核兵器を速やかに廃絶してほしいという被爆者の願いに背く内容。核保有国が、削減に向けてどう努力するかくらい示してほしかった」と述べたという。
同席した児玉三智子事務局次長は「広島平和記念資料館の視察が非公開だったのは残念。どんな思いで見たのか率直な言葉を聞きたかった」と話したという。
首脳会議の結果に大変失望――ICAN
同日付毎日新聞デジタルによれば、核兵器禁止条約制定への貢献でノーベル平和賞を受賞した「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」の事務局長代行、ダニエル・ホグスタさんは、この日、広島市内で記者会見し、「広島がG7サミットの会場に選ばれたことは、ICANとしては歓待したいと思っていた。しかし、結果については大変失望している」と述べた。
そして、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」について「核兵器禁止条約のような核軍縮を動かす具体的で明確な計画について提示できていない。G7首脳は自らの行動を省み、核禁条約の第2回締約国会議に参加してほしい。その中でも特別な役割がある日本の政府には、ぜひオブザーバー参加してほしい」と求めたという。
被爆者と国民の核兵器禁止・廃絶の声に背を向けた――原水協事務局長
原水爆禁止日本協議会の安井正和事務局長は21日、「被爆者と国民の核兵器禁止・廃絶の声に背を向けたG7首脳に抗議する」という談話を発表した。
談話には、こうある。
「被爆地広島で開催されていた先進国首脳会議が共同声明を発表して閉幕した。サミット期間中、G7首脳による原爆資料館の訪問、被爆者との面会はなされたが、最大の焦点である核兵器の禁止・廃絶に関しては、岸田文雄首相が繰り返した『被爆地から力強いメッセージを発信する』どころか、被爆者や国民が期待した新たな努力は一切なく、逆に『核抑止力』論を公然と宣言するサミットとなったことは極めて遺憾である」
「ヒロシマ」を弄んだ広島サミット――原水禁顧問の秋葉忠利・前広島市長
広島在住で日本原水爆禁止国民会議(原水禁)顧問の秋葉忠利・前広島市長は23日付の自らのブログ『ヒロシマの心を世界に』で次のようにつづっている。
<総理は「G7広島サミットは成功だった」と自画自賛していますし、マスコミの論調も一部の批判はありますが、今一です。成功の反対の「失敗」というのも、G7主催者側の視点での評価ですから、私たちがこんなことを言ってはいけません。私たちの感覚で一番近いのは「『ヒロシマ』が弄ばれた」ではないでしょうか>
そして、秋葉さんは「弄ばれた」実態の一つとして、「広島ビジョン」が「我々は原子爆弾投下の結果、広島や長崎の人々が経験したかつてない壊滅と極めて甚大な非人間的な苦難を長崎とともに想起させる広島に集った」と記述していることを挙げ、「『被害を受けた』という表現を避けて、被害を『想起させる』土地として広島を位置付けたのです。アメリカへの忖度かもしれませんが、実際にその被害を受けた被爆者や、都市としての広島に対して大変失礼な言い方ではありませんか」と述べている。
加えて、「弄ばれた」実態のもう一つとして、「被爆者」という言葉が使われていないことを挙げている。
秋葉さんはさらに、「広島ビジョン」の問題点として①「核兵器禁止条約」という国際法上効力を持つ条約に全く触れていない②「核兵器の先制不使用」に触れていない③核抑止論の強化を主張している、の三つを指摘している。
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