(2022年8月30日)
世は、安倍国葬と統一教会への対応で揺れている。岸田内閣の支持率は大きく低下し安閑としておられない事態となった。黄金の3年間どころではない。泥沼の政権運営となりつつある。
何もしないことで支持率を保ってきた岸田政権だったが、決断して動いたことで世論の批判を招くことになった。安倍国葬と内閣改造である。その発端は、安倍晋三銃撃事件。銃撃犯山上徹也の動機は、統一教会への復讐であったという。なぜ、安倍銃撃が統一教会への復讐となるのか、その理由が明らかになるにつれて、統一教会批判が大きな世論となった。統一教会批判は、これとの結びつきを暴かれた安倍への批判にも跳ね返り、安倍国葬反対の世論が噴出した。慌てた岸田は、統一教会との結びつきを指摘された閣僚を挿げ替えようとしての内閣改造に失敗して、さらなる窮地に陥っている。
あらためて確認しておこう。統一教会とは、宗教団体(カルト)であり、反共政治団体であり、かつ経済的収奪組織である。
山上徹也は、安倍晋三銃撃という手段で、この三位一体構造を撃った。反共政治団体としての統一教会が反共政治家と緊密に結びついていたからこそ、安倍晋三銃撃が統一教会全体を撃つことになったのだ。
その山上徹也の現在の動向を知りたいと思うのだが、まったく報道がない。現在鑑定留置中で、その期間は7月25日から11月29日までとされている。長い。そして、常識的にこの被疑者が刑事責任能力を欠如しているとは考え難い。
まさか、検察側に山上を心神喪失者として起訴を避け、公開の法廷で安倍晋三と統一教会との癒着の立証を回避したいということではなかろう。とすれば、国葬が終わるまではできるだけの世論の静謐を保ちたいとの政権の思惑を忖度してのことなのだろうか。
ともかく、間接的にもせよ、今山上が何を考えているかを知りたい。起訴前弁護を受任している弁護士がいるはずではないか。被疑者本人に代わって語るべきことはないのだろうか。
近しい弁護士から教えられた。山上徹也の伯父(徹也の亡父の実兄)は、どうやら大阪弁護士会に所属していた29期の弁護士であるようだ。現在はリタイアしているが、信頼できる弁護人を紹介することは容易な立場だ。また、奈良弁護士会が複数の被疑者国選弁護人を推薦したとも聞く。
弁護人が山上本人と接見して社会の様子を伝え、その意向を確認したうえで発言を控えているのならそれでよい。が、予想される裁判員裁判で、選任される裁判員が山上にとっては不本意な報道による思い込みにさらされないとも限らない。鑑定留置中に接見できるのは、弁護人だけである。被疑者のスポークスマンとして果たさなければならない役割もあるのではないか。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.8.30より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=19851
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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