見えてきた佐倉市の財政の特徴と問題点~市民フェスタでの講演準備を通じて

著者: 醍醐聡 だいごさとし : 東京大学名誉教授
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講演の準備ために
 1つ前の記事(ちきゅう座編集部注:「地元の市民フェスタで講演します ~テーマは市の財政~ 」)で書いたように、20日は地元の市民活動フェスタ2011の日。市民体育館、市立美術館、佐倉城址公園自由広場などでさまざまな市民グループがポスター展を開いたり、ポニー乗馬や和太鼓演奏、手話ダンスを披露・体験したり、防災・まちづくりの講演会を開いたりする一日である。
 私は佐倉向日葵会が主催したまちづくり講演会の講演を頼まれ、11時30分から40分間ほど市立美術館の4階会場で「私たちの町の財政~基礎から現状分析まで~」と題して話をさせてもらった。前半(Part1)は基礎編ということで、人口が同じ規模の県内の6つの市(野田市、成田市、習志野市、流山市、八千代市、浦安市)と比較しながら、佐倉市の財政の現状と特徴を話し、後半(Part2)は応用編として佐倉市の国民健康保険のことを話した。
 しかし、40分で2つのテーマを十分に話すのはとても無理なので、この日はPart1を主に話した。国民健康保険の方が皆さんに身近な問題で、「応用編」などと第三者的な物言いをするにしては余りに切実な問題がある。そこで、主催者の向日葵会の代表のUさんの「これからも第2弾、第3弾と続けてやりたい」というお話を受けて、国民健康保険のことはゆっくり時間をとって別の機会に出来ればと考え、昨日はPart2は要点(滞納問題)に触れるだけにした。
 使った資料は、Part1は主に「決算カード」。Part2は各市のホームページに掲載された国民健康保険に関する情報と社会保障推進千葉県協議会(千葉県社保協)が今月10日にまとめたばかりの「2011年社会保障の充実を求める自治体要請キャラバン報告集」である。最後の報告集はインターネットで偶然見かけたサイトを辿って千葉県社保協に問い合わせて提供してもらった資料であるが、県内全市町村の担当課に対して、住民税・医療・介護保険・国民健康保険・児童/保育・障害者福祉・生活保護などについて行ったアンケート調査の結果を集計したものであるが、国民健康保険についても保険料(税)の算定方法、水準、滞納の状況、資格証明書/短期証の交付状況など詳細なデータが網羅されていて大変有益だった。

数字の背景にある現実を確かめないと
~市役所へ出かけて担当課に聴き取り~

 しかし、データをなぞるだけではなく、数字の背後にある現実こそ重要である。しかも数字は必ずしも現実をあるがままに表しているとはいえないし、市民の生活実感とずれていることもある。そこで、講演の準備をする中で、行政の他の問題に関心を持った方と連れだって、11月9日にはお隣の八千代市役所へ市内の知人3人と出かけ、国保年金課、環境保全課、保健センターを訪ねて担当職員から聴き取り調査をした。国保年金課では国民健康保険の保険料の滞納の実態と背景、滞納者への市の対応について、環境保全課では放射能汚染の除染対策について、保健センターでは特定健診の持ち方について、それぞれ尋ねた。13時30分から始まったが、国保年金課では応対してもらった課長の熱心な説明に時間が経つのを忘れ、最後の保健センターでは勤務外の応対をしてもらうはめになった。おかげで外へでるとあたりは薄暗く、帰路を急いだ(といっても私は同乗させてもらったのだが)。
 ついで、11月14日には市内の知人お2人といっしょに佐倉市の健康保険課と環境保全課へ出かけた。健康保険課では課長と国保資格班のOさんに応対してもらい、事前に送っていた質問事項に沿って市内の被保険者の構成の推移(「一般」と「退職」の年齢別分布)、短期証世帯数と資格証世帯数の推移、一般会計から国保特別会計へのいわゆる「赤字繰入」の推移などについて、途中、議論を挟みながら、説明を受けた。環境保全課では、課長、班長、担当職員の応対で、目下、詳細計画は発表されたものの、肝心の「いつから」始まるのか一向に見て来ない放射能汚染の除染について話し込んだ。
 こうした2回の聴き取り調査が昨日の講演にも大いに役立った。

当日使った資料
 以下は当日用に作った資料一覧である。

1.パワーポイント・スライド原稿
 ① 6つの他市と比較した佐倉市の財政の特徴:その1

 ② 6つの他市と比較した佐倉市の財政の特徴:その2

 ③ 6つの他市と比較した佐倉市の国民健康保険の特徴

 ④ 国民健康保険料(税)滞納問題の背景と解決の道筋

2.配布資料(本体)
   配布資料(本体)

 3.配布資料(データ編)
  表1 県内7市の比較財政データ

  表2, 3 県内7市の歳入構成の比較(実数と構成比)

  表4 県内7市の給与水準の比較

  表5 県内7市の国民健康保険の状況

  表6 県内7市の国民健康保険の滞納と資格証明書発行の所得階層別分布

質疑の中で出た意見・質問
 40分ほどの私の話が終わったあと、お二人の参加者から質問・意見があった。
 一人は、国民健康保険を資格証明書に切り替えられた市民のなかで、18歳未満の子供のいる世帯をなんとかしなくてはいけないのではないかという意見だった。
 もっともな質問だったが、それについてはパワーポイント・スライドのNo.35をスクリーンに出して、国では昨年年7月から、18歳未満の子供(従来は中学生以下)がいる滞納世帯には短期証の交付にとどめるとした国保法改正が施行されていること、佐倉市ではそれに先だって昨年4月から同様の措置が実施されていることを紹介した。

 もう一人は、佐倉市では人口対比で職員数が7市の中で一番少ないと言った私の説明(パワーポイント・スライドのNo.35No.15)に対して、一部事務組合に所属する職員も含めるとそんなことはないという反論だった。一部事務組合にどれくらいの佐倉市職員が在職しているのか私は確かめていないが、一般論として臨時職員や指定管理者に業務を切り出したことに伴う人員減を考慮に入れた調査が必要で、その点では私の説明は確かに不完全なものだといえる、と答えた。

お礼
 なお、20日の講演会には市内のたくさんのお知りあいやご近所の方々が出かけていただいた。また、7名の市議会議員も聴きにきていただいた。ありがたいことと感謝しているが、これも広報に力を入れていただいたUさん始め、主催者・佐倉向日葵会の方々のご苦労のおかげである。改めてお礼を申し上げたい。

初出:「醍醐聡のブログ」より許可を得て転載
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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