諸悪の根源はアメリカの軍産複合体 -第2次大戦後の世界は戦争と危機の連続-

第2次世界大戦が終わって70年。この間日本は憲法9条のおかげで戦争をしないし、戦争に巻き込まれない平和国家として過ごすことができた。ところが世界を見渡すと、戦争や戦争一歩手前の危機に見舞われなかったことのない70年だった。

主なものだけでも、インドシナ戦争(1946-54)、朝鮮戦争(1950-53)、ベトナム戦争(1960-75)、キューバ危機(1962)、イラン・イラク戦争(1980-88)、湾岸戦争(1991)、アフガニスタン戦争(2001-14)、イラク戦争(2003-11)等々。さらに4次にわたる中東戦争(1948、1956、1967、1973)があり、その全てに米国が絡んでいるのである。

第2次大戦で連合国の勝利に大きく貢献したアメリカは西側覇権国となり、一方の東側覇権国となったソ連と半世紀にわたる冷戦を戦った。核超大国である米ソの冷戦は、幸いにして熱戦にならずに終わった。冷戦の勝者アメリカは、唯一の超大国として世界に君臨してきたが、イラク、アフガン戦争での失費により、巨額財政赤字国に転落した。

戦後70年の世界をざっと振り返ってみると、諸悪の根源はアメリカの軍産複合体(militaro-industrial complex)にあることがわかる。この軍産複合体という言葉は、第2次大戦の英雄からアメリカ第34代大統領(1953-61)となったアイゼンハワー元帥が、1961年1月大統領離任式で語った演説のキーワードとなった言葉である。

アイクの愛称で親しまれたアイゼンハワー元帥は、第2次大戦の連合国西欧最高司令官としてノルマンディー上陸作戦を指揮するなど、ナチス・ドイツ軍を破った英雄。1952年の米大統領選挙で圧勝してトルーマン大統領の後を引き継ぎ、1961年ケネディ大統領にポストを引き渡した人物である。

そのアイゼンハワー大統領が、離任式スピーチでアメリカの前途を危うくする存在として軍産複合体を指摘したのだ。すなわち軍需産業と国防総省と連邦議会が形成する経済的・軍事的・政治的連合体である軍産複合体は、アメリカ国家・社会に過剰な影響力を行使する可能性が高いと警告したのである。

言うまでもなく、軍需産業は兵器を生産して国家に買ってもらうことで成り立つ産業である。軍需産業は兵器を大量に消費する戦争がないと成り立たないから、国防の名において戦争を誘発する産業なのだ。国家が戦争を始めるには、行政府、議会がその気にならないといけないし、裁判所がそれを認めなければならない。これが軍産複合体のレゾンデートル(存在理由)であり、諸悪の根源である。

日本は、佐藤・三木内閣時代の1960年代から70年代にかけて成立した「武器輸出3原則」により、日本製武器の輸出を禁じてきた。しかし安倍内閣は昨年4月1日、「防衛装備移転3原則」という名で日本から武器輸出を許す措置を講じた。日本の軍需産業は大喜び、こうして日本式軍産複合体が成立しつつある。

1989年のレーガン・ゴルバチョフ両首脳によるマルタ会談で、東西冷戦は事実上解体した。その結果、西側の北大西洋条約(NATO)と東側のワルシャワ条約機構は存在理由を失った。冷戦の敗者であるソ連邦の解体(1991年)でワルシャワ条約機構は解体したが、NATOは冷戦後も存続した。

しかもマルタ会談で、東欧にNATOを拡大しないとの暗黙の合意が成立していたにも拘わらず、NATOは旧東側諸国に拡大した。1999年にチェコ、ハンガリー、ポーランドがNATO加盟を果たしたのを皮切りに、2004年にリトアニア、ラトビア、エストニアのバルト3国の他にブルガリア、スロバキア、ルーマニア、スロベニアが加盟した。

1949年に西欧10か国で創設されたNATOは現在、何と28か国に拡大した軍事機構となっている。NATOの拡大はアメリカ軍産複合体が望んだものであり、現に軍産複合体を喜ばせていることは言うまでもない。

一方、唯一の超大国となったアメリカは世界中に民主主義を広げることを国是として、旧東側諸国に介入し続けている。「新冷戦」という言葉を生んだウクライナ、グルジア、キルギスなどの危機は、民主主義拡大の名目でレジーム・チェンジ(体制転覆)を図ったアメリカの隠密介入の結果である。これらの危機は、もちろん軍産複合体が誘発しているのだ。

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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