護憲・改憲

安倍自民党を「改憲政党」と捉えて警戒される方々の御意見は、理解も出来、論旨に同意出来る部分も多いのです。 安倍首相の主張される「改憲」の大綱は、復古主義が多くて、私にも、ついて行けないのですから。

でも、「護憲」を強調される方々の中に、現行憲法を擁護されるのが自己矛盾になりそうな方が居られるのが気になります。 例えば、政党で云えば、「共産党」とか「社民党」が、何故「護憲政党」なのか意味不明であるのと同じです。 云うまでも無く、現行憲法は、資本主義国家の憲法です。 その証拠に、憲法上の条文は、「私有財産」を認めています。 生産手段を私所有権の対象とせずに、最終的には、「私有財産」を認めない社会を目標に運動している政党が、資本主義国家である日本の現行憲法を擁護されるのが矛盾で無ければ、何を矛盾と云うのでしょうか。 云いにくけれども、個人の場合も同じでしょう。

政治の状況が相違していますので、簡単に比較は出来ませんが、現行憲法上の諸制度を革命に依って変革することを目論んでいる政党が「護憲」を云われる状況は、他の国では見られない特殊な現象だと思います。 これ等の政党政派は、憲法から観れば「違憲」の疑いが濃いのですから。

現行憲法では、具体的な訴訟を通してのみ、司法に依る憲法上の判断を示して行くのですが、ドイツの「憲法裁判所」の制度では、個別訴訟を通さずとも憲法上の判断を示すところです。 この制度では、憲法に定める制度を「革命」に依り変革することを目指す政党等は、存在することを許されません。 従って、ドイツ共産党(Kommunistische Partei Deutschlands)は、1956年に連邦憲法裁判所から禁止命令が出されて解散させられました。

さて、それでは、安倍自民党は、現行憲法から観れば、どう評価すべきでしょうか。 憲法の根幹を為す「国民主権」を、憲法上の「改正手続」に依り、例えば、「天皇主権」(明治憲法)に改めることを企図されているならば、これは、「改正」では無くて、「革命」でしょう。 憲法の改正には、限界があるのですから。 (しかし、憲法の改正には、限界が無い、と云う学説もあるので、要注意です。) どちらにしても、「改憲」政党であるのは間違いがありません。一国の政府を司る首相と政権政党が「改憲」(限り無く「革命」に近い)を目論んでいるのは、異常と云っても云い過ぎでは無いでしょう。

こうして観て行きますと、本当の意味での、「護憲」の意思を持っている国民と政党政派は、極めて少数なのではないか、との疑いを持ってしまいます。 現行憲法は、その誕生から恵まれない空の下にあることを覚悟しなければならない運命であったのでしょうか。