護憲団体と改憲・自民党が“草の根”の対決へ  両陣営とも世論の喚起に躍起

 護憲団体が結集する「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が、新しい署名運動を始めた。新署名のタイトルは「安倍9条改憲NO! 改憲発議に反対する全国緊急署名」で、東京で2月6日に開いた署名スタート集会には市民や野党代表がつめかけた。一方、自民党は昨年10月、幹部を動員した改憲運動を全国各地でスタートさせている。両陣営とも自らが目指す方向に世論を喚起するのに必死で、護憲・改憲をめぐる問題は両陣営による“草の根”からの対決という様相を帯びてきた。

 「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」は、学者・文化人ら19人の呼びかけで、2017年8月に結成された。これには個人のほか、旧総評系の「戦争をさせない1000人委員会」、共産党系団体が中心の「戦争する国づくりストップ!憲法をまもり・いかす共同センター」、市民団体の「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」、九条の会などが加わった。

 発足直後の全国市民アクションが取り組んだのは「安倍9条改憲NO! 憲法を生かす全国統一署名」で、3000万筆を目標にしていたことから、「3000万人署名」という略称で呼ばれた。
 この署名は2019年6月までに947万筆余を集め。国会に提出された。

 全国市民アクションが新署名を始めた理由は何か。
 全国市民アクションが「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」と連名で1月1日に発表した声明には、こうある。
「先の参院選で改憲派が発議可能な3分の2の議席を失ったにもかかわらず、安倍首相は臨時国会終了後の記者会見で『必ずや私の手で(改憲を)成し遂げていきたい』と語り、自らの自民党総裁任期の2021年9月までに実現する決意を語りました」「この改憲スケジュールからみて、安倍改憲をめぐるたたかいはいよいよ最大の山場にさしかかったというべきでしょう。2020年の通常国会と臨時国会で『改憲発議』を許すかどうか、さらに2021年通常国会会期中に安倍改憲国民投票を許すかどうかの正念場になりました。この安倍首相の企ては絶対に阻止しなければなりません」「事態は緊急です」
 要するに、護憲派としては、安倍首相の改憲に向けての決意表明に危機感を高め、改憲発議に反対する署名運動をスタートさせたというわけである。

 一方、自民党も国民世論を改憲に引きつけようと躍起だ。二階幹事長、岸田政調会長ら党の幹部が先頭に立ち、全国各地での集会を計画するなど、挙党態勢で改憲運動の盛り上げを図る。
 昨年10月18日には、二階幹事長の地元の和歌山市で約1600人を集めて改憲集会を開いた。
 また、同党は改憲をテーマとした地方政調会を全国各地で開催することになり、昨年10月28日には、さいたま市で、11月18日には広島市で、12月3日には福島市で、それぞれ岸田政調会長らが出席した地方政調会を開いた。
 さらに、同党の憲法改正推進本部に新設された遊説・組織委員会は、全国を10ブロックに分けて担当議員を配置した。
 同党が各地での改憲集会で使用するために、同党所属の国会議員や都道府県連に安倍首相のメッセージ動画を配布した。

 国民世論を盛り上げるための大衆運動、例えば集会、演説会、講演会、デモ行進、署名といった活動は、これまでは労組など革新系団体のおはことみられてきた。が、 いまでは、右派系や保守系の団体もこうした大衆運動に力を入れるようになった。
 護憲・改憲をめぐる対決は、今や大衆運動の分野にまで広がってきたと言えよう。

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion9472:200221〕