軍需産業とアベ政権、持ちつ持たれつの緊密な関係

著者: 澤藤統一郎 さわふじとういちろう : 弁護士
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民主主義とは、理性にもとづく熟議によって、最大多数の幸福の実現を目指す政治過程である。これをカネの力で撹乱してはならない。少数の持てる者が、カネの力で世論を誘導し、自分に有利な有権者の投票行動に影響を与えるという現実がある。政治はカネで動くのだ。

企業や企業人は、このカネの力で政治を動かそうする衝動をもつ。企業が政治に注ぎこむカネのうち、目に見えるものを政治献金といい、裏で動く隠れたカネをワイロという。

企業の「政治献金」と「ワイロ」と、この二者は本質的には違わない。政治献金とは、実は、日常用語における賄賂だ。私はそう考えている。

ちなみに、ワイロ(賄賂)とは何か。刑法における定義ではなく、日常用語として。

広辞苑の語釈はこうだ。「不正な意図で他人に金品を贈与すること。また、その金品」。新明解は、「公務員などが職権を利用して業者に便宜をはからうことに対して受けとる、不正な金や物」。
そのほか、「職権を利用して特別の便宜を計ってもらうための、不正な贈物」「自分に有利なようにはからってもらうために贈る金品」「 自分の利益になるようとりはからってもらうなど、不正な目的で贈る金品」など。

語感は、これでつかむことができよう。要するに、「不正な見返りを求めての金品の提供」がワイロの本質と言ってよい。ならば、政権政党への企業献金は、ズバリ賄賂にほかならない。

そのような視点で、本日の毎日のトップ記事をお読みいただきたい。

「防衛献金 自民60%増」「安倍政権下 15年3.9億円 工業会31社」「予算は増加続く」という見出し。これを繋げて補うと、「安倍政権下で、防衛関連企業31社の自民党への政治献金年間額が60%増となっている」「その額2015年で3.9億円となり、防衛関連予算の増加が続いている」というもの。

安倍自民党への防衛産業からの政治献金が顕著に増加し、そのカネは防衛予算というかたちで、十分な効果を生んでいるというのだ。政治献金という名の賄賂は、政治を歪める。民主主義政治過程を撹乱すると言うだけではない。平和をも蝕むのだ。

毎日トップ記事の本文はこうだ。
「防衛装備品メーカーなどが加盟する『日本防衛装備工業会』(JADI)の会員31社が2015年、自民党の政治資金団体『国民政治協会』に計3億9000万円余を献金したことが分かった。安倍晋三内閣が15年9月に安全保障関連法を成立させたこともあり、防衛予算は増加が続く。これに歩調を合わせるように、会員による企業献金は旧民主党政権時代から60%増加しており、以前の自民党政権下の水準にまで回復した。」

「JADIは国内の防衛装備品の製造や修理などを手がける136社(正会員)が加盟し、三菱重工業会長の大宮英明氏が会長、旧防衛庁元装備本部長の野津研二氏が専務理事を務めている。15年の政治資金収支報告書によると、会員のうち31社が、自民党の企業献金の受け皿である同協会に献金していた。」

献金会社は、トヨタ自動車・キヤノン・新日鉄住金・三菱重工・日立など。いずれも「防衛装備品」の大手納入業者である。

「09年の3億8000万円余がピークだったJADI会員による同協会への献金は、民主党への政権交代によって減少。12年は約2億4000万円だったが、自民党の政権復帰後の13年に上昇に転じた。一方で会員の大半は、政権担当時を含めて民主党の政治資金団体には献金していない。国の防衛関係予算は12年度の約4兆7000億円から16年度は5兆円超まで増えており、防衛産業界の意向と政策が重なる傾向もある。JADI会員が委員に名を連ねる経団連防衛生産委員会(現防衛産業委員会)は14年2月、国の武器輸出を原則禁じた「武器輸出三原則」の見直しを自民党に提言。約2カ月後に「防衛装備移転三原則」が閣議決定され輸出が拡大した。」

以上が毎日の報道の要点。貴重な記事ではないか。主権者として、次のことを心得ておきたい。

軍需で潤っている企業がアベ自民党に献金し、アベ政権は軍事予算を増額して防衛産業を潤わせている。こうしてこそ、さらなる献金を期待できることになる。軍需産業とアベ政権、持ちつ持たれつの腐臭漂う関係なのだ。さらに、類は友を呼ぶ。軍需産業とアベ政権の腐臭に引き寄せられる者も現れる。

昨年(2016年)9月18日の当ブログが、「『弁護士バカ』事件で勇名を馳せたイナダ防衛大臣の夫は防衛産業株を保有」という記事。一部を転載しておきたい。

http://article9.jp/wordpress/?p=7458

防衛大臣が「夫名義で防衛産業株」をもっているのだ。近隣諸国との軍事的緊張が高まれば防衛予算が増額となる。そうすれば、三菱重工業・川崎重工業・IHIなどの持ち株の株価が上がる。イナダ夫妻は儲かることになる。これは、「風が吹けば桶屋が儲かる」の類の迂遠な話ではない。「雨が降れば傘屋が儲かる」ほどに必然性のある分かり易い話。防衛大臣イナダは、軍事緊張をつくり出すことで儲けることができる立場にある。反対に、近隣諸国との緊張が解けて平和な環境構築が進めば、防衛予算は削られ、防衛関連株の株価下落は避けられない。防衛大臣夫妻は、軍事緊張なくなれば損をすることになるのだ。到底「国務大臣等の公職にある者としての清廉さを保持し、政治と行政への国民の信頼を確保する」ことはできようもない。

軍需産業の献金増ではこうなる。

軍需産業献金増⇒軍需予算増⇒軍需産業好決算⇒株価騰・配当増⇒イナダ夫妻の笑み…

何度でも言わねばならない。イナダさん、防衛大臣おやめなさい。あなたにはふさわしくないのだから。
(2017年1月8日)

初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2017.01.08より許可を得て転載

http://article9.jp/wordpress/?p=7951

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/

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