転載「日本の住民の健康危機」IPPNW /「最初の独立系の放射能測定所が、福島で仕事を始めた」独放射線防護協会(久松氏の訳)

原文:http://www.ippnw.de/commonFiles/pdfs/Atomenergie/stellungnahme_eisenberg.pdf

IPPNW(核戦争防止国際医師会議) 記者会見

「日本の住民の健康危機」

ベルリン:2011年8月15日、午前11時

IPPNW(核戦争防止国際医師会議)
医学博士 ヴィンフリード・アイゼンベルクの見解:小児科医 青少年医学、IPPNWの核エネルギー・研究チーム

従来 日本では、主に土壌中のセシウム137の放射能汚染と環境中のガンマ線による外部被曝の数値が、使用されている。けれどもそれよりもずっと重要なのは、呼吸する空気、飲食を介して放射線核種を摂取した結果、長期的に内部被曝に曝されることである(体内被曝)。

私は、小児科医であるので、とりわけ日本の東北地方の子どもたちの危険について、立ち入って議論する。成長期にある有機組織は、成長の終わった有機組織よりも細胞分裂の頻度が高いため、子どもたちは、大人にくらべて何倍も放射能感受性が高い。細胞分裂期の細胞は、(これは疑問の余地がないことだが)平穏期の細胞よりもイオン化された放射線によってはるかに強く危険にさらされる。子どもが、小さければ小さいほど、成長は早く、細胞分裂の数は、多い。つまり、最初の妊娠12週の胎児の胚は、もっとも大きな放射線による損傷リスクを背負っている。一つの胚にとってこれより下なら危険はないという限界値は、存在しない。また赤ん坊、幼児、児童も、成人に比べて、放射能によって著しく強く危険にさらされている。

こうした関連において、IPPNWは、日本政府は、さもないと多くの地域で、幼稚園や学校を閉鎖しなければならなくなるという理由で、行政当局が2011年4月20日に幼稚園の園児と児童の年間被曝量を20ミリシーベルトに上げてしまったことを非難する。20ミリシーベルトは、我が国もそうであるが、たいていの国において核施設の従事者の上限値に該当する。一般人にとっては、該当する放射線値は、年間1ミリシーベルトである。公的に子どもたちに年間20ミリシーベルトを強要することは、我々の見解からしても責任の負えないことである。

われわれの医師組織は、日本においても核施設からの放射能の漏出の限界値を再び年間1ミリシーベルトに確定するように要求する。妊娠している人や子どものいる家庭は、この放射能限界値を超えた地域から避難しなければならない。破損した原発からの距離との関連のみで、避難区域を定義することは、健康管理の諸条件にかなわない。

グリーン・ピース等による多くの測定によって確かめられた海水、魚、土壌、農産物の放射線含有量に基づけば、日本の東北地方においては来年中に 放射能に起因する多様な疾病が生ずることを覚悟しなければならない。チェルノブイリ後に北ウクライナと南ベラルーシで観察された諸事例に照らして、福島県で暮らしている、現在0歳から5歳の子どもたちは、おそらく3-5年後には、甲状腺ガンの増加に見舞われるだろう。境を接した宮城県、岩手県、山形県、新潟県、群馬県、栃木県、そして茨木県の子どもたちも、福島第一原発からの距離や風向き降雨に応じて、罹病率は減ることはあったとしても、同様に(病気に)襲われるだろう。勿論放射線被曝にあっては年齢と共に、潜伏期は増すものではあるが 、現在比較的年長の子ども
たち、若者、成人においても、より頻繁に甲状腺ガンという診断がくだされるであろう。時期を得たヨード剤の服用は、地震と津波のために、準備されていなかった。ヨード剤は、少なくとも放射能と接触する数時間前、できれば1-2日前に投与される時にのみ、甲状腺を保護する。後になって安定したヨード剤を投与しても、もはや役に立たない。

該当する地域での子どもたちの白血病もおそらく、すでに2016年から、はっきりとより頻繁に現れてくるであろう、と懸念される。白血病(血液のガン)は、他のガン種に比べてイオン化された放射線と強い相関関係がある。2011年12月以後に予想される新生児にあっては、チェルノブイリ後に記録されている染色体異常と先天性の奇形の増加を、覚悟せねばならない。

これ以降の年月には、福島周辺では、子どもたちばかりでなく、すべての人が、放射能の結果に悩むことになろう。放射能は、決してガンや遺伝上の突然変異ばかりでなく、ガンではない様々な疾病、たとえば、免疫の機能不全、心臓病、脈管疾患、神経医学的疾患、内分泌系の疾患、早い老化の原因となる。

食品や水から放射性の核分裂生成物を摂取してしまうことから住民を守るためには、信頼できる、持続的な測量が必要である。行政当局は、この任務を明らかに十分なやり方では、果たしていない。さらに、人々は情報操作に関して過去に何ヶ月かに体験したすべてのことから判断して、行政当局の測定結果をもはや信じていない。

オーストラリアのIPPNWの医学者で、メルボルン大学のティルマン・ラフ教授は、数日前、福島を訪れた際に、放射能と健康についての情報に、大きな欠陥があることを身を持って知った。市民たちは、どうしたら被曝を少なくできるのかについて、とくに助言を求めてきた。なるほど人々は、更なる避難が必要だろうと思ってはいたが、彼らは、長期的に帰って来られないことを分かっていなかった、という。

ティルマン・ラフは、著しく汚染された地域の住民と福島第一原発のすべての作業員の包括的な記録簿を要求する。記録簿は、個人の被曝量のグラフを含むべきで、また持続的な健康の監視も計画に入れるべきである。すべてのデータと結果は、独立系の国際的な専門家によって鑑定され、時をおかず公表されるべきである。

独立した測定を保証するために、IPPNWは、「47プロジェクト」の目標を支援し、できるだけ早く各県に独立した測定所が、設置がされるように尽力するだろう。IPPNWのドイツ支部は、連帯の証として、また独立した測量が、住民のしあわせのために必須であると確信して、47プロジェクトに5000ユーロを用立てることを決定した。われわれは、それによって更なる測定所を、設置できることを願っている。

              ヴィンフリード・アイゼンベルク博士

________________________________________________________________________________
放射線防護協会の記者会見
原文
Dr. Sebastian Pflugbeil, Prasident
Gormannstr. 17, D-10119 Berlin
* 030 / 449 37 36, Fax 030 / 44 34 28 34
eMail: Pflugbeil.kvt@t-online.de

Berlin, den 15. August 2011
Pressemitteilung

Die erste unabhangige Strahlenmesstelle hat in Fukushima die Arbeit aufgenommen

Die japanische Bevolkerung wird nach der Reaktorenkatastrophe von Fukushima ungenugend informiert. Das berichteten Frau Aya MARUMORI und Herr Wataru IWATA von der unabhangigen japanischen Messtelle Cititzens‘ Radioacticity Measuring Station (CRMS) in Fukushima bei ihrem Besuch der Gesellschaft fur Strahlenschutz und der IPPNW Mitte August 2011 in Berlin. Die Gesellschaft fur Strahlenschutz unterstutzt den Plan der japanischen Burgerinitiative, unabhangige Messtationen in allen 47 Prafekturen Japans zu errichten (Projekt 47). Die erste Messtation in Fukushima hat die Arbeit bereits aufgenommen.
Was wir tun konnen Der Betrieb der Messtellen erfordert eine langfristige Finanzierung. Spenden dafur werden erbeten unter der Angabe des Stichwortes ?Fukushima Projekt 47“auf das Konto der Gesellschaft fur Strahlenschutz bei der POSTBANK HAMBURG BLZ  200 100 20, KONTO-NR. 294 29-208
BIC: PBNKDEFF
IBAN: DE45 2001 0020 0029 4292 08
Spenden an die Gesellschaft fur Strahlenschutz e.V.
sind in Deutschland steuerlich abzugsfahig. Eine Spendenbescheinigung wird ausgestellt, wenn die Uberweisung unter Angabe der vollstandigen Absenderadresse erfolgt.
> Die Gesellschaft fur Strahlenschutz und die IPPNW treten mit der
> japanischen Messtellenorganisation in Erfahrungsaustausch.
> Insbesondere bei der Beschaffung von Literatur, beim Austausch
> praktischer Erfahrungen beim Betrieb unabhangiger Messtellen und bei
> der Erschliesung der Erfahrungen nach der Reaktorkatastrophe von
> Tschernobyl werden sie behilflich sein.
Die Gesellschaft fur Strahlenschutz und die IPPNW werden uber die jungsten Forschungsergebnisse zur Wirkung von niedrigen Strahlendosen aus Deutschland informieren. Dazu gehoren auch die Untersuchungen der erhohten Krebs- und Leukamiehaufigkeiten bei Kindern in der Umgebung der deutschen Kernkraftwerke im Normalbetrieb.
Im Informationsdienst Strahlentelex
(www.strahlentelex.de) wird regelmasig uber die Situation in Japan berichtet.
放射線防護協会

記者会見
最初の独立系の放射能測定所が、福島で仕事を始めた。

日本の住民は、福島原発のカタストロフィーの後、不十分にしか情報を得ていません。福島にある独立系の日本の測定所「市民放射能測定所(CRMS)」の丸森あや氏と岩田渉氏は、8月中旬に放射能防護協会とIPPNWを訪問した際に、こう報告しています。放射線防護協会は、日本の47都道府県に独立系の測定所を設置しようとする(プロジェクト47)という日本の市民運動のプランを支援します。福島で最初の測定所が、すでに仕事を始めています。

我々に、何ができるか?
測定所の操業は、長期的な資金を必要としています。「福島プロジェクト47」というキーワードを書いて防護協会の口座に寄付をお願いします。

放射能防護協会への寄付は、ドイツでは税金から控除されます。振替用紙に完全な宛名があれば、寄付証明が発行されます。
放射線防護協会とIPPNWは、日本の測定所の組織と体験を共有します。とりわけ文献の供給、独立系の測定所の操業に際しての実践的な体験の交換、そしてチェルノブイリの原発のカタストロフィー後の諸体験の解明に際して、助けとなるでしょう。
放射能防護協会とIPPNWは、ドイツから低線量被曝の作用についての最新の研究成果を情報提供します。ドイツの原発周辺で暮らす子どもたちのガンや白血病の多発に関する、調査も、その一部です。放射能テレックスの情報室では、日本の状況を定期的に報告します。

——————————————————

(以下は山梨の久松さんよりのメッセージです――編集部)

みなさま

山梨の久松です。IPPNWのアイゼンベルグ氏の47プロジェクト支援のプレスリリースとドイツ放射線防護協会のセバスチャン・フルークベイル博士の47プロジェクト支援のプレスリリースを訳してみましたので、紹介します。

放射線防護協会の方は、主にドイツ人に向けた寄付のお願いです。徐さんが、「フクシマを歩いて」の中で「近くにいないと見えない一方で、遠くにいないと見えない」と言われる通り、ドイツが、現在の日本の状況をいかに深刻に見ているか、そしてそうした状況下で、日本の市民放射能測定所の設立というものをいかに重要なものとみなしているかがわかるので、ついでに訳してみました。きっと深刻に捉えているドイツの目のほうが、真実に近いのだと思います。福島の外側にいると思っている他県の日本人も、ヨーロッパから見れば、内側の不安に突き動かされ、現実が見えなくなっていることに気づかされます。

またヨーロッパにおいて、日本での小さな市民運動による放射能測定所の設立を重要と考えるには、もう一つの巨大な原因があると思っています。福島医大の山下氏は、日本財団の主催で以下のような専門家会議なるものを開こうとしています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
国際専門家会議
「放射線と健康リスク―世界の英知を結集して福島を考える」

International Expert Symposium in Fukushima-?
Radiation and Health Risks
会議の目的 日本財団は、笹川記念保健協力財団と協力し、1991年より10 年間チェルノブイリ事故に汚染された地域に住む約20万人の児童の検診を実施し、WHO,IAEA など世界にこの検診の科学的データに基づく情報を提供し、高く評価されています。この経験をもとに、福島原発事故による放射線被ばくの健康への影響について、世界の英知を集め、科学的な検討を行うためにこのたび下記の要領で国際専門家会議を開催いたします。この会議は、福島県民の健康リスク問題を正しく評価し、今後予定される県民健康管理調査事業を支援すると同時に、新たな国際放射線安全防護に資する方策を考え、福島の復興に資することを目的としています。
セッションテーマ
(1) 福島の現状:緊急被ばく医療対応と国内放射線保護安全規制
(2) 放射線被ばくによる健康影響:低線量被ばくと健康、緊急被ばく医療の課題
(3) 汚染地域における放射線量及び線量測定
(4) 放射線生物学と放射線安全防護学:基礎と疫学、分子疫学
(5) チェルノブイリ原発事故の教訓から学ぶ
(6) 放射線安全と健康リスクに関するガイドライン
(7) 今後の放射線健康リスク対応に関する提言
期日: 2011 年9 月11 日(日)、12 日(月)
会場: 福島県立医科大学 会議場 (福島市光が丘1 番地)
主催: 公益財団法人 日本財団
共催: 国際放射線防護委員会
笹川記念保健協力財団
福島県医師会(予定)
福島県立医科大学
放射線医学総合研究所(予定)
後援(予定): 内閣府、外務省、文科省、厚労省、経産省、国交省、環境省、福島県
組織委員会:笹川 陽平(委員長・日本財団会長)
紀伊國 献三(笹川記念保健協力財団理事長)
菊地 臣一(福島県立医科大学理事長兼学長)
丹羽 太貫(京都大学名誉教授)
山下 俊一(福島県立医科大学副学長、長崎大学教授)
David Heymann (英国グローバル・ヘルス・セキュリティー・センター長)
Fred Mettler, Jr. (国際連合放射線影響調査科学委員会米国代表)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
チェルノブイリの時も、IAEAが入ってきて、事故を隠蔽しましたが、今回もそのにのまえになるのではないかと心配です。岩田さんの言葉を借りれば、いわば本体が乗り込んできた感があります。これは、市民対軍産学の巨大な国際利権集団の闘いでもあります。皆で何らかの対抗手段を講じなければならないと思います。

ところで、47プロジェクトは、これまでも多くの人に支えられて運営されてきましたが、現在、測定機器の提供などを申し出てくれる企業等はありますが、運営資金への支援は殆どなく、メンバーが自腹を切って運営している次第です。どこを向いても、カンパ、カンパでカンパ疲れのところ、まことに恐縮ですが、もしまだ余裕があり、このプロジェクトの活動を重要とお思いになったら、直接市民放射能測定所、あるいは47プロジェクトにカンパしていただければ、大変嬉しいです。

ゆうちょ銀行 普通預金 店番828  口座番号1156953(他銀行からの場合)
ゆうちょ銀行 普通預金 記号18210 番号11569531 (ゆうちょ銀行からの場合)
口座名: 市民放射能測定所

47プロジェクト
ゆうちょ銀行 10830 3547271
口座名:測定器47台プロジェクト
他行からの振込の場合 店名・店番:088 種別:普通預金 口座番号:0354727
山梨中央銀行 支店名:高根支店 種別:普通預金 口座番号:154842

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1581:110904〕