菅義偉官房長官は8月12日、沖縄県の翁長雄志知事と県庁で会談し、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画に関する集中協議を開始した。菅氏が辺野古移設に理解を求めたのに対し、翁長氏は移設計画撤回を求めた上で、「国内に分散すべきだ」と県外移設を主張。「大きな距離感」(菅氏)が浮き彫りになった。対話継続の必要性では一致し、来週にも翁長氏が上京、菅氏ら関係閣僚と協議する。
菅氏は会談で、1996年の普天間飛行場返還の日米合意を「原点」とし、普天間の危険性除去や日米同盟の抑止力維持の重要性などを説明。翁長氏は「戦後、強制収用され基地がつくられた時点が原点だ。奪った基地が危険になったから代替地を出せというのは理不尽だ」と反論した。
また、翁長氏は政府が主張する抑止力論について「沖縄だけに米軍基地を押し付けておくと、日本全体で安全保障を守るという気概が他の国に見えず、抑止力からいうと大変おかしい」と指摘。「(米軍の)機動性や即応性の観点からも沖縄でなければならない理由はない」と疑問を呈した。
会談後、翁長氏は記者団に「(県内移設は)できないと伝えてある」と明言。菅氏は「互いに大きな距離感があり、これから理解が深まる努力をしたい」と述べた。政府関係者は「19年間動かなかった問題が簡単に進展するとは思っていない」と語った。
会談で菅氏は沖縄振興策にも触れた。この日視察した「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)が構想中の新たなテーマパーク候補地=本部(もとぶ)町=や、米軍から返還された西普天間住宅地区(宜野湾市)などを挙げ、沖縄振興や基地負担軽減策に「政府として力を尽くす」と強調した。しかし、翁長氏は記者団に「振興策と移設問題はもともと違う話だ」と語った。
集中協議は今回の会談を含め、9月9日までの移設作業中断期間に5回程度行う予定。翁長氏と関係閣僚との協議以降は、事務方トップの杉田和博官房副長官が沖縄県を訪問し、県側と事務レベルの協議を行う。菅氏も月内に再度、沖縄入りする見通しだ。
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