辺野古移転は難航、米国からも見直しの声

沖縄県の普天間飛行場(宜野湾市)を名護市・辺野古移設に反対する県民集会が、5月17日開かれ、熱気に包まれた。

翁長雄志知事は5月20日、日本記者クラブ日本外国特派員協会で記者会見。米軍普天間飛行場の移設計画を強行する安倍政権の姿勢を、「自国民の自由、平等、人権、民主主義を守れない」と強く批判。今月下旬からの訪米を踏まえ、沖縄に大きな負担を強いる安全保障体制の現状にも疑問を投げかけた。

翁長氏は「(日本に組み入れられた)琉球処分後は、日本国に操を尽くしてきたが、戦後は日本の独立と引き換えに米軍の施政権下に置かれた」と、基地問題の歴史的な経緯を説明。「辺野古への移設が唯一の解決策」とする安倍政権を念頭に、「『(辺野古移設が)嫌なら代替案を出せ、安全保障をどう考えているんだ』というのは、日本の政治の堕落ではないか」と厳しく批判した。

このような背景のもと、沖縄では「辺野古基金」運動が後押ししている。宮崎駿さん、佐藤優さんら著名人が名を連ね、2カ月足らずで2億5000円を超す勢い。米政府・議会対策のロビー活動などに充てるという。

アメリカの有識者も懸念

日本国内ばかりではなくアメリカ内部でも、沖縄基地をめぐる政府と沖縄の対立の深まりを懸念する声も出ている。ハーバード大教授のジョセフ・ナイ氏は5月2日、琉球新報の取材に対し、辺野古移設について「沖縄の人々の支持が得られないなら、われわれ、米政府は恐らく再検討しなければならないだろう」と述べ、地元同意のない辺野古移設を再検討すべきだとの見解を示した。ナイ氏はクリントン政権時代に普天間基地返還の日米合意を主導した元国防次官補。2014年10月からはケリー国務長官に助言する外交政策委員会のメンバーを務める。この時、ナイ氏は辺野古移設に慎重な理由として「沖縄の人々が辺野古への移設を支持するなら私も支持するが、支持しないなら我々は再考しなければならない」と述べ、沖縄県民の反対が多いことを挙げていた。

沖縄は国を飛ばしてアメリカと直接交渉の動き

一方、翁長氏は、日本政府を通じてではなく、アメリカ政府と直接交渉を行うことも視野に入れている。翁長氏は選挙公約で、辺野古移設に反対する翁長知事の考えを、日本政府を通じてではなくアメリカ政府に直接伝えることが目的の、沖縄県駐在職員を配置することを強調。4月1日には、2014年9月まで在沖アメリカ総領事館の政治担当特別補佐官を務めた平安山英雄氏に辞令が交付されている。

引き抜きで関係悪化?

この動きに対して、政府側は4月1日、元沖縄県職員の又吉進氏を外務省参与に起用した。県職員OBが外務省参与に就くのは極めて異例。

毎日新聞によると、又吉氏は県職員として長くアメリカ軍基地問題を担当しており、仲井真前知事時代の2010年4月に、県基地対策課長から知事公室長に抜てきされた。約5年間にわたって政府や沖縄県の調整、対米交渉などを担い、2013年12月の辺野古埋め立て承認にも携わったとされる。翁長知事が就任したのに伴い2015年1月に知事公室参事監に異動となり、3月31日付で早期退職した。又吉氏は「基地問題のエキスパート」でアメリカ軍の装備や運用にも精通。アメリカ政府に人脈もあるとされている。

元外務相主任分析官の佐藤優氏は4月3日、文化放送の「くにまるジャパン」に出演した際に、沖縄県のワシントン駐在員事務所と又吉氏の関係について、「(ワシントン駐在員が)アメリカとの交渉でどう動くかというのを、又吉さんはよく知っている。これまで沖縄とアメリカとの交渉は、又吉さんがやっていたんですから。又吉さんが沖縄県にいれば、翁長さんを手伝う。それなら政府側に持ってこいと、知恵のある人が考えたのではないか」と分析していた。

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