選挙のたびにいつも悩む。棄権して済むことではないと、気を取り直して投票に向かう。今回の参院選でもそうだった。住まいの近くに選挙カーが来るわけでもなく、演説会が開かれているわけでもない。NHKの政見放送を聞くしかない。期日前投票に出かけた当日、選挙公報が届くという状況だった。
今回の千葉県は、16人が立候補、報道によれば、投票率は55.74%で前回より5.73%アップ、期日前投票が有権者の24%の127万近くとなった。
投票結果は以下の通りで、国民、立憲、自民の3人が当選していた。自民の当選者は、国会中継で顔を見るくらいで、あとの2人は、どんな活動をしていたか知らない人たちだった。次点の参政党に続き、現職自民、れいわ、共産、維新の人たちも選挙広報の情報しかなかった。もっとも、トップ当選の「国民」の女性は、今年2月までNHK記者だったという。

自民が一人3番手の当選で、前回の二人当選から見れば、その凋落ぶりがわる。自民票が国民民主に流れての新人トップ当選となったのか。国民民主もふらふらしていて「野党」と言えるのか。それに、玉木代表と言い、榛葉幹事長と言い、ジェンダー平等とはおよそかけ離れた言動も許せないし、千葉県では、党員、議員間のセクハラも問題になっているというのに、なぜ?の思いもする。
次点に迫った「日本人ファースト」の参政党の女性は何者なのか。「比例」の広報から、その公約を見てみると、いちばん最後の行に「憲法に哲学を」とある。代表の政見放送では触れられることはなかったが、改憲でも護憲でもない「創憲」と称する憲法草案を見てみると、びっくり仰天、口語体ではあるが、「明治憲法」と紛う前文と条文である。神聖なる天皇の政治的権能、自衛軍の創設、公共の利益優先による人権制限、「国民」規定による外国人排除なる中身。候補者たちはこれを読んでいるのだろうか。https://sanseito.jp/new_japanese_constitution/
そして、公約の一部には、外国人対策の過激さに加えて、食糧の自給率100%、医療費削減のためのgo toトラベル、外国人に依存しない観光業、子ども一人に1カ月10万円の給付金???・・・。これでは日本は立ち行かなくなるだろう。どうしてこんな党に、多くの人が票を入れたのか。既成政党、そして有権者は、真剣に考えなければならない。

維新の公約は、なるほど実現できるものはやって欲しいものもある。3の「ポイント付与による最低所得制度導入」?ってどういうこと。私がもっとも不安に思うのは、6の「0歳児からの投票権付与」であり、これは、民主主義の土台に係ることである。「ゼロ歳からの議決権付与」という同じようなことが、実は、地域の町内会、自治会の法人化の際の条件となっているのである。詳しくは、下記の当ブログをご覧ください。要するに、ゼロ歳児から子どもに投票権を与えるというもので、もちろんゼロ歳児からある年齢までは、意思決定権を持つのは困難なので、「親なりの保護者が代わりに投票をする」というものである。これは、吉村大阪府知事の発言にもあるのだが、子どものころから政治に関心を持ってもらう?子どもにも未来を決める権利がある?というのが理由なのである。今でも家単位、世帯主中心の行政をさらに強化するものではないか。さらに、これは、保護者が子ども投票権を代理行使するわけだから、保護者が複数の投票権を持つことになる。本来の多数決原理に反し、多数意見がさらに増大するわけで、少数意見が埋没しやすく、議決の安定性が確保できるので、政治でいえば、多数与党の議会や行政が盤石になるというのだろう。さらに、無関心層が拡大することになりかねない。

いま、欧米でも右翼の台頭が懸念されているが、日本にもその波がやってきたのだろうか。有権者の責任はますます重くなる。
<参考>
赤ちゃんにも選挙権!? 吉村知事、おかしくないですか?(2024年4月28日) http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2024/04/post-06d5a9.html
初出:「内野光子のブログ」2025.7.23より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2025/07/post-2b7d89.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion14336:250723〕