選挙結果を素直に総括できない政党は真面な方針を出せない 日本共産党第6回中央委員会総会報告を読んで

 8月2日の「しんぶん赤旗」を読んだ感想を述べたい。年老いた3人の酒飲み仲間が懇親会を兼ねて集まり、参院選の結果について忌憚のない意見交換をした。大手紙数紙も互いに持ち寄っての合同会議だから、多多ますます弁ずの次第と相成った。それぞれが思い思いの感想を述べ合ったが、その中の一番口の悪い奴の言いぐさが面白かった。

 ――いわく、議席減と得票減という現実を「二重の大逆流」といった屁理屈をこねて素直に認めず、これを「全党の大奮闘によって押し返す過程での一断面」だという論法は、まるで旧日本帝国陸軍の「敗戦を転戦」と呼ぶのとそっくりそのもの。どうやら志位委員長は、不勉強にも『失敗の本質、日本軍の組織論的研究』(ダイヤモンド社、1984年)を読んでいないらしい。
 ――いわく、自分の会社経験からすれば、業績不振の会社の社長が経営戦略の誤りを認めず、自らの責任を棚に上げて居座ったままでは、年老いた営業マンの尻をいくら叩いても業績は絶対に上がらない。これでは組織の疲弊と衰退が進むのが目に見えている。
 ――いわく、参院選投開票翌日の常幹声明は、「全党のみなさんの知恵と経験に学びたい」などとしおらしいことを言っていたが、その後の赤旗には「全党の知恵と経験」の話が全く出てこない。声を出しても編集部が取り上げようとしないからか、それとも声を出しても無駄だと党員や支持者が見限っているからか、そのどっちをとってみても末期症状というほかない......などなど。

 大手紙の論評でも政策上の問題はほとんど注目されず、関心はもっぱら組織問題に集中している。毎日新聞(8月2日)は、総会報告の内容よりも党内関係者の取材に力点を置き、「共産党、先細りの危機感」と題して次のような事態を明らかにしている(要約)。
 ――創立100年を迎えた共産党が、党勢維持に向け正念場を迎えている。7月の参院選で、改選6議席から2減になった。1日に党本部で開いた第6回中央委員会総会では、志位和夫委員長が参院選の総括を踏まえ、党勢回復に向けた「奮闘」を誓ったが、党関係者の高齢化などを抱える地方組織からは「このままではじり貧で、先細っていくだけだ」と悲痛な声が聞こえてくる。
 ――志位氏は再び共闘を目指し、自民など改憲勢力と対峙する姿勢を強調した。一方、党内では、組織の高齢化を前に「これまでのように指示を広げることができない」「活動を支えるメンバーは高齢者ばかり。世代交代ができていない」「党本部は、後援会員らが周囲に『折り入って作戦』を展開せよというが、個々の結びつき頼りでは世代が広がらない」との声が漏れる。
 ――党は、参院選投開票の翌日に公表した常任幹部会声明で、党員減少などを指摘し「自力をつける取り組みは、質量ともにその立ち遅れを打開できていません」と認めている。志位氏は6中総、23年に想定されていた党大会を、統一地方選前であることを理由に24年1月へ先送りすることを提案した。2日に了承されれば現在の党体制が当面維持されるとみられる。統一選を控える地方議員の一人は「党勢回復か没落か。まさに今が正念場だ」と語った。

 朝日新聞(8月4日)は、「議席減、志位氏への不満も」「共産党参院選総括、幹部人事1年先送り」との見出しにあるように、志位委員長の進退問題に焦点を当てて記事をまとめている。具体的にはこうだ。
 ――共産党は1、2両日、党本部で中央委員会総会を開き、議席を減らした参院選を総括した。党執行部は一定の責任を認めたものの、人事を決める党大会の1年先送りを決めた。地方からは不満の声も上がっている。
 ――16年、19年の参院選は成果を挙げた共闘だが、昨秋の衆院選以降は党勢拡大に結びつかず、委員長を20年以上務める志位氏には、地方から「異例」(党関係者)の不満も出ている。「『人心一新』し出直すため、党員による選挙をしたらどうでしょうか。誰も猫の首に鈴をつけたくないので、委員長自ら決断を」。党員でもある京都府商工団体連合会の久保田憲一会長は参院選後、SNSにこう投稿した。「周囲でも交代を求める声が多い。ちょっときついかなとも思ったが一石を投じた」と取材に語った。ただ、党幹部や関係者の間では「理論的な柱になってきたのは志位氏」との声が大勢を占める。
 ――共産は2~3年ごとに党大会を開いて幹部人事を決めるが、今回の総会では2023年1月とみられていた党大会を1年先延ばしにすると決めた。志位氏は「来春の統一地方選の重要性を考慮した」と説明。総会終了後の会見で、志位氏は強調した。「責任は党を強くすること、そして反転攻勢を直面する統一地方選で勝ち取ることで果たしていく」

 この記事の中で驚いたのは、京都の党関係者(それも幹部)が公然と党首選挙を呼び掛けたことだ。京都の共産党は中央に忠実なことで知られる。前の衆院選では「野党共闘の実を上げる」と称して京都3区に候補者を立てず、泉健太氏(立憲)の勝利に貢献した。政党リーダーとしての資質に欠ける泉氏が立憲代表に選ばれたのは、偏にこの京都での大勝のお陰だと言われている。京都の共産党は野党共闘の最大の妨害者となった泉氏を支援することで、自らの首を絞めたのだ。

 どこまで本気かどうか知らないが、とにもかくも志位氏のリーダーとしての正統性を問う声が公然と出てきたのは一歩前進だと言わなければならない。この動きが全国に広がり、党組織刷新の声が大きくなれば、さすがの志位氏も安閑としていられないだろう。統一地方選が大事だから党大会を先延ばしにするなんて口実は、もう誰もが「保身」のためのものだと見抜いている。無駄な時間稼ぎは党組織の疲弊と衰退を加速するだけだ。

 参院選に大勝し、「黄金の3年」を手に入れた岸田内閣にも最近暗雲が垂れ込めてきた。京都新聞(8月1日)は1面トップで、共同通信社が30、31両日に実施した全国電話世論調査の結果を「安倍氏国葬『反対』53%、国会審議『必要』6割超す」「国葬『反対』政権揺さぶる、旧統一教会問題、野党追及」「内閣支持率急落51%、内閣支持率12ポイント急落」と大々的に報じた。

 調査では、新型コロナウイルスの感染を抑えられない政府対応への不満が表れ、物価高対応への評価も低調だった。旧統一教会と国会議員のつながりの解明を求める声も大きい。自民党の閣僚経験者は支持率急落の要因を「旧統一教会を巡る問題に国葬も加わって、おどろおどろしい雰囲気を醸し出してしまっている」と分析した。毎日新聞(8月1日)も共同通信世論調査の結果について、「感染が急拡大している新型コロナへの対応、依然続く物価高への対策に加え、説明不足との批判がある政府の国葬実施決定が支持率急落につながった可能性がある」と、同様の見方をしている。

 今日4日から臨時国会が始まったというが、政府・自民党はとにかく議論封じに徹して3日間で会期を閉じたい意向だ。でも、岸田内閣の閣僚でも岸信夫防衛相が旧統一教会に所属する人物から選挙の際に手伝いを受けたと明かし、二之湯智国家公安委員長が関連団体が18年に開いたイベントで「実行委員長」を務めたと説明し、末松信介文部科学相もパーティー券を購入してもらったことを認め、磯崎仁彦福官房長官が関連団体が関わる行事に来賓として出席するなど、自民党国会議員と統一教会に近いと言われる反共産主義の政治団体「国際勝共連合」との深い関係が疑われている(日本経済新聞8月2日)。

 今後の世論状況や政局の変化は、これまでの予想を遥かに超えるものになるだろう。一切の既成概念や価値観にとらわれず、与野党の動向を客観的に見つめることが求められる。次の総選挙は案外早いのかもしれない。その時まで国民の誰もが目を凝らして事態の推移を見守るべきだ。(つづく)

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