集団的自衛権を巡って、安倍晋三首相の場当たり的な強弁には説得力がなく、国民からの批判が高まっている。国際的にも、日本の〝右派偏向〟を危惧する声が高まってきた。
ホルムズ海峡は、日本にとって石油パイプラインの要衝である。注意すべきことは、同海峡がペルシャ湾とオマーン湾の公海と領海が絡みあった狭い海であることだ。最も狭いところは、僅か33㌔㍍に過ぎない。領海は1992年の「海洋法条約」で「国土の基線から最大12海里(約12・2㌔㍍)までの範囲で国家が設定した帯状の水域で、沿岸国主権が及ぶ」と規定されている。
ホルムズ海峡での機雷掃海に行けるのか
安倍首相は再三、「集団的自衛権を行使するにしても、海外派兵はしません」と言明してきた。自衛隊は、領土や領海など他国の領域には入らないとの公約に等しい。しかし別の答弁で「ホルムズ海峡に機雷が仕掛けられれば、自衛隊は機雷掃海に臨む」と弁明しているが、これこそ敵地に乗り込むことではないのか。
さらに恐ろしい首相の強弁は「朝鮮半島有事で避難する邦人を輸送する米艦船が攻撃を受けた場合、集団的自衛権によって米軍が助けてくれる」と、言い切ったことだ。
豊下楢彦・元関西学院大学教授が最近出版した「集団的自衛権と安全保障」(岩波新書)で、そんな空論は全くのウソと指摘している。国際外交専門家として理路整然たる一文に感銘させられた。それによると、「在韓米軍が毎年訓練を行っている『非戦闘員避難救出作戦』で避難させる対象になっているのは、在韓米国市民14万人、友好国の市民8万人(2012年段階)であり、この友好国とは英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドというアングロ・サクソン系諸国なのである。さらに避難作戦は、航空機によって実施される。
尖閣問題でも米国を困らせる
もう一つ尖閣問題に関する箇所を引用させていただく。つまり、朝鮮有事において米軍が邦人を救出することも、絶対にあり得ないシナリオである」と明快に述べている。
オバマ大統領が尖閣について「日米安保条約第5条に基づき、日本を守る」と述べたことを政府は喧伝しているが、それほど単純なことではなさそうだ。豊下論文は、「尖閣問題で米国が安保条約を発動するか否かを決めるポイントは、尖閣の領有権を巡って日中両国のうち、どちらが相手を刺激するような『引き金』に先に指をかけるか、という点にある。言い換えれば、日本が先に手を出した、と解釈された場合、日本との『同盟関係』だけで中国との、『大国同士の関係』も重視する米国は、必ずしも全面的に賛同し、支援するわけではない」と、政府の一方的な姿勢に警告を発していた。
有識者や外務当局の建言を無視するような安倍首相の〝外交音痴〟には呆れ果てる。
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