沖縄電力を除く9電力の株主総会の株主総会が6月27日各地で開かれたが、「脱原発」の株主提案はすべて否決された。しかし東京都や大阪市などの株主から、電力会社の体質改善を求める声は強く、4時間を超す緊迫した質疑が繰り広げられた。しかし、電力会社側の反応は相変わらずで、「3・11後」の改革意欲が見られなかったのは悲しい。
「実質国有化」が決まった東電の下河辺和彦新会長と広瀬直己新社長は28日午前、記者会見に臨んだが、「信頼回復に近づくために、血のにじむような努力をしていく」との弁明に終始。政府が5月10日発表した「東電総合事業計画」の見通しでは、来年4月から柏崎刈羽原発の再稼動を前提として、料金算定している点は重大だが、新経営陣はこの方針を踏襲するに違いなかろう。
泉田新潟県知事も「無責任な政府」と反発
泉田裕彦新潟県知事が直ちに、「福島事故のけじめもつけられない中で、再稼動を前提とした方針は承服できない」と反論した。5年前の2007年7月16日、震度6強の地震が柏崎刈羽原発に甚大な被害を引き起こしたことを忘れてはならない。想定外の揺れで原発機器が損傷、屋外変圧器で火災が発生。微量の放射性物質が海に流出し〝間一髪〟の危機的状況だった。東電はこの教訓を生かさず、「3・11事故」を引き起こしたとの反省を強烈に持つべきだった。地震対策が脆弱な原発立地の首長として泉田知事が、市民の安全を守るために政府に物申すことは当然なことである。
野田佳彦首相が6月8日、大飯原発について「安全性を確認した」として再稼動を表明したが、泉田知事は即座に反対のノロシを挙げた。
「福島事故はいまだに収束せず、事故検証も進んでいない。このような状況下で専門家でもない総理が安全性を確認できるはずがない。万が一の事態が生じた場合の対策も固まっていない中で『安全を確認した』と表明することは,新たな『安全神話』を創造することになり、極めて無責任だ。米国原子力委員会(NRC)では、爆発や火災によってプラントの重要な部分が失われるシビアアクシデントに備えて『B.5.b 』(米原発のテロ対策)を準備している。国民生活を人質にして、安全を軽視した宣言となっていることは極めて遺憾である」との反論に、多くの国民は共感するに違いない。
「大飯原発再稼動」に便乗の動きを警戒
原発に50%強頼ってきた関西電力は夏の電力不足を訴えているわけだが、東電の電力供給は夏場も大丈夫との試算が出ている。大飯原発再稼動に便乗して、各地で再稼動への動きがあることに 国民はもっと警戒の目を向けなければならない。
今回の電力9社の株主総会ではドラスティックな決議は実らなかったが、猪瀬直樹東京都副知事や橋下徹大阪市長ら自治体トップが「物言う株主」として発言した意義は大きい。
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