青山森人の東チモールだより…ラモス=オルタ当確、逆襲のシャナナ

決選投票、ラモス=オルタの圧勝

4月19日に投票日となった大統領選の決選投票の結果、それぞれの得票率はラモス=オルタの62.1%、ルオルの37.9%となり、ラモス=オルタの当選確実となりました。

正式な結果は控訴裁判所の最終判断を待たなくてはなりませんが、5月20日、「独立回復」20周年記念日で新大統領に就任することになったのはジョゼ=ラモス=オルタ候補といって差支えありません。

ルオロ候補が30%台後半の得票率を得たのは健闘したといえます。しかしマリ=アルカテリのフレテリン(東チモール独立革命戦線)からの候補者か、シャナナ=グズマンのCNRT(東チモール再建国民会議)からの候補者か、この二者選択となると、国民はシャナナの方を選択するというこの国の構図は、たとえ人気の面ではシャナナと引けをとらないタウル=マタン=ルアク首相がフレテリンを応援しても、変わりはありませんでした。今回の大統領選挙でシャナナ=グズマンはいまだにこの国の第一人者であることをまざまざと見せつけたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

投票所に貼られていた投票用紙のサンプル。

これではシャナナに投票する有権者が大勢いたことだろう。

対抗してルオロには現連立政権とくにタウル首相推薦をイメージさせるマークがほしかった。

ベコラの投票所入り口にて。

2022年4月19日、ⒸAoyama Morito.

9時半ごろ、投票は静かに行われていた。

投票の会場入り口では係員がマスクを配っていた。

ベコラの警察署隣りに設置された投票所にて。

2022年4月19日、ⒸAoyama Morito.

投票時間が過ぎると衆人環視のなか票読みがされる。

一票一票、「1」(ラモス=ホルタの番号)、「2」(ルオロの番号)、と係員が声を出し、白板に票数の印がつけられる(写真、左側後方)。この投票所ではラモス=ホルタがルオロに倍以上の差をつけていた。またこの投票所では、「1」(ウン)、「2」(ドイス)、と係員がポルトガル語で数字を読み上げていたが、YouTubeで他の投票所の様子を見るとインドネシア語で読み上げられていた。この国の言語であるテトゥン語で読み上げられた投票所もあったと思いたい。

同じ投票所にて、午後5時半ごろ。

2022年4月19日、ⒸAoyama Morito.

 

新連立勢力の形成か、国会解散か

さあ、「5月20日」にラモス=オルタ元大統領が大統領に復帰します。そしてラモス=オルタ新大統領はどうすることでしょう……否、シャナナ=グズマンはどうすることでしょう。国会を解散しないで新連立勢力形成による権力奪取ができるでしょうか。

すでにシャナナはそのための現連立政権切り崩し工作を水面下でせっせとやっているはずです。もしかして、新連立勢力形成による権力奪取の目途がついたからこそ、シャナナはラモス=オルタに国会解散を強調することをやめさせて政党指導者たちとの対話路線を重視する発言に切り替えさせたのかもしれません。もしそうだとしたらタウル=マタン=ルアク政権は5~6月に倒れることになります。

それにしても引っ掛かりを感じます。なぜシャナナは、現政権が任期満了を迎える来年まで待たないで、いま現政権を倒して権力奪取をしようとするのでしょうか。横綱・千代の富士は寺尾を吊り上げたら、そのまま土俵外に出すのでは不十分で、土俵内でたたき落さなければならないとでもいうのでしょうか(ちょっと古いか?)。

本来なら穏やかな雰囲気で行われるべき「独立回復」20周年記念式典ですが、荒っぽい政局のなかで行われることになりそうです。東チモールは〝内輪もめ〟をせず、世界に向けて「戦争を止めろ!」と平和理念を発信する役割を担って欲しいものです。東チモールは誰よりもその資格があるのですから。

 

青山森人の東チモールだより  458号(202204月22日)より

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/
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