= = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = 訂正 = = = = = = = = = = = = == = = = = = = = = = =
前号の「東チモールだより」で、6月15日、健康上の理由でシンガポールに渡航したタウル=マタン=ルアク首相の帰国を7月初旬と書きましたが、6月下旬すでに帰国していましたので、お詫びして訂正いたします。
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東チモール、核兵器禁止条約国の批准国となる
先月6月21日から3日間、オーストリアの首都ウィーンで核兵器禁止条約の締約国会議が初めて開かれたことは日本でもそれなりに大きく報道されたことと思います。ドイツ・ベルギー・オーストラリアなど、核兵器禁止条約に参加していないNATO加盟国やアメリカの同盟国さえもオブザーバーとしてこの締約国会議に参加しているのに、アメリカに2発の原爆を喰らわされた唯一の戦争被爆国である日本がアメリカに忖度するように(としか思えない)、しかも広島出身である首相は来年のG7サミットを広島で開催することを表明にしているにもかかわらず、この核禁止条約国会議にオブザーバー参加しないというのは、いつのまにやら日本は主権を失ってしまったのかと啞然とする出来事でした。唯一の戦争被爆国でありながらもアメリカの核の傘のもとにある日本はその立場を正直に主張すればよいではないかと思います。
この暗澹たるニュースとは反対にうれしくなるニュースもあります。この締約国会議前日の6月20日、東チモールは核兵器禁止条約の批准国となったのです。広島市の公式ホームページで「核兵器禁止条約の署名国・批准国一覧」(2022年6月29日現在)を見ると、東チモールがこの条約に署名したのは2018年9月18日、批准国になったのが2022年6月20日と、しっかりと一覧表に記載されています。署名も批准も現在のタウル=マタン=ルアク首相率いる第八次立憲政府によるものです(署名はCNRT[東チモール再建国民会議]が最大与党のとき、批准はフレテリン[東チモール独立革命戦線]が最大与党の現在)。
なお同じ6月20日に核兵器禁止条約の批准国となったのは東チモールのほか、カボベルデとグレナダがあります。そして上記の一覧表では最新の批准国は6月29日のマラウィとなっています。
まず今年2月2日に東チモールの内閣が核兵器禁止条約の批准を承認しました。4月の初め、「東チモール国会はもうすぐ核兵器禁止条約を批准することだろう」と報道されました(『タトリ』、2022年4月4日)。フィデリス=マガリャンエス内閣長官は、主権国家として、核兵器が世界に拡散させない観点への正当性を持っているとして、この条約を支持する重要性を強調しました。
「国際社会の一員として、東チモールは兵器開発の最先進諸国に他国を脅かさないように訴える」(マガリャンエス内閣長官、同『タトリ』より)。
東チモール、核実験禁止条約にも批准
さらに今年の5月13日、東チモール内閣がまず核実験禁止条約の批准を承認しました。そして核兵器禁止条約の批准国となった翌週の6月27日、東チモール国会は核実験禁止条約を批准しました。報道を見ると、「包括的」という用語はありませんが、「完全なる禁止」とありますので、意味としては「部分的」ではない「包括的」な核実験禁止条約であると思われます。
アニセト=グテレス国会議長は、「核兵器禁止条約を最近批准した(東チモール)国会は、関連する核実験禁止条約も批准しなければならない」と述べています(『タトリ』、2022年6月27日)。
また国会内で外交・治安・防衛を扱う分科会であるB委員会のソモツォ委員長は、「アジア・太平洋地域は核実験が行われる地域である。非同盟諸国の一員として、世界の人命を守る重要性においても、核兵器にかんする諸条約は非常に重要である」と語ります(同『タトリ』より)。
主権国家として、国際社会の一員として、東チモールは核兵器にたいする自らの主張を訴えています。日本も、主権国家として、国際社会の一員として、そして唯一の戦争被爆国として、自らの主張を世界に向けて堂々と訴えるべきです。
青山森人の東チモールだより 第466号(2022年07月06日)より
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion12170:220708)