青山森人の東チモールだより…暫定的開票速報:シャナナCNRTの勝利、しかし過半数に届かず

元の姿に戻ってきた首都

5月23日の時点では、投票するために地方へ帰省した有権者がまだ首都に戻りきっていないせいか、あるいは首都に戻った有権者たちは骨休みをしているのか、5月20~21日ほどではありませんが、首都はまだまだガラ空きの状態でした。学校も23日まで休みです。これは開票作業の最中に何か起こったら面倒なことになるので、念のための措置ですが、大人の都合を子どもに押し付けているようにしか見えません。高校生ならば有権者が大勢いるので、投票するために田舎に帰省した高校生にたいして休校にするのは分かりますが、なにも小学校まで休校にしなくてもよいのにと、ベコラの小学校前を歩きながら思ったしだいです。

5月24日になると、首都は元の姿にもどってきました。歩道に露店が出され車道を歩かざるをえない歩行者は、路上駐車する車両やバイクに狭められた道路を歩くしかない危険な状態がもどってきました。多数のバイクが波のように走る交通風景は首都が元の姿にもどったことを象徴しています。

 

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闘いすんで、日が暮れて。

撤去される選挙管理員会の看板ポスター。

ベコラにて。

2023年5月23日、ⒸAoyama Morito.

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「プラットフォーム」の完敗、シャナナ政権へ

開票作業が進む5月22~23日、大勢が判明しました。まだ最終結果が出ていない段階ですが〝最終的暫定結果〟として内外の報道機関は、「CNRT(東チモール再建国民会議)は民主党と連立政権を樹立か」、「CNRTが民主党と連立の可能性」、という見出しをつけ、シャナナ=グズマン率いるCNRTの勝利を報じました。

5月23日現在、議席を獲得する政党とその順位は次のとおりです。党名・獲得票数・得票率・獲得議席数を列記します。

 

  1. CNRT…………28万8101票……41.62%……31議席
  2. フレテリン……17万8248票……25.75%……19議席
  3. 民主党…………6万4493票……9.32%………6議席
  4. KHUNTO………5万2021票……7.52%………5議席
  5. PLP……………4万696票………5.88%………4議席

 

東チモールでは得票率が4%に届かない政党には議席が割り振られないことになっているので、3.63%の票を獲った6位のPVT (チモール緑の党)と3.13%を獲った7位のPUDD(民主開発統一党)には無慈悲にも議席が与えられません。その他の10政党はすべて1%未満の得票率で、これら10勢力を合わせても3%未満の得票率です。

なお、有権者数は89万145人、投票者数は70万5680人、投票率は79.28%、80%を下回っています。

わたしは、CNRTが29議席、フレテリンは18議席の獲得と予想しました。当たらずとも大きな外れでもありません。しかしわたしの予想が大きく外れたのは民主党の大健闘でした。民主党が、KHUNTO(チモール人国民団結美しき豊穣)とPLP (大衆解放党)よりも議席を獲るというのは予想だにしませんでした。そしてわたしの予想が大きく外れたのは、KHUNTOが勢力を拡大することができず現状維持の5議席にとどまったことです。KHUNTOに流れるはずだった若者たちの票が民主党に流れたと思われます。言い換えると民主党は、職がなく格闘技集団に身を寄せる若者たちを惹きつけることに成功したといえます。フレテリンが議席減を小さく抑えることができたのは、やはりレレ=アナン=チムール将軍の党参加の効果がでたのでしょう。そしてタウル=マタン=ルアク党首のPLPは踏ん張ることができず議席の半分を失ってしまい、議席を獲った政党のなかで最下位となりました。フレテリンでもなくCNRTでもない第三の受け皿として登場して期待された党創設当時の面影は、タウル=マタン=ルアクが首相を務めたこの5年間ですっかり色褪せてしまいました。PLPは党の独自性を打ち出すことなく二大政党のなかに埋もれてしまい、厳しい審判を受ける結果になりました。

結局、フレテリンとPLPの失う議席をKHUNTOが補うことができず、与党三党による「プラットフォーム」政権は負けました。CNRTの得票率41.62%による31議席獲得は、「プラットフォーム」与党三党の合わせた39.15%の28議席を上回るので、「プラットフォーム」の完敗といえます。

しかしCNRTのシャナナ=グズマン党首は単独過半数(33議席)に手が届かなかったので、完全勝利とは思っていないかもしれません。CNRTは5月23日、記者会見を行いましたが、「勝って兜の緒を締めよ」なのか、何なのか、シャナナは勝利宣言や連立政権樹立の話はせず、最終結果を待つといい、ニュース映像を見る限りですが、笑顔をほとんど見せていませんでした。満足のいかない勝利を噛みしめながらシャナナは民主党とどのように連を立組むべきか、現在、思案中であることでしょう。

なお、シャナナはこの選挙で政権奪取しても首相の椅子に座るのは一年間程度で、あとは信頼できる人に首相の座を譲るであろうという話をわたしは複数の情報筋からききました。シャナナがそれをするとしたら、チモール海の「グレーターサンライズ」ガズ田開発に専念したいからでしょう。おそらくシャナナはフレテリンやタウル=マタン=ルアクに茶々を入れられない状態で「グレーターサンライズ」ガズ田開発に邁進することでしょう。果たしてそれが東チモールにとって良いことなのかどうか、疑問が残りますが……。

 

青山森人の東チモールだより  491号(2023524日)より

e-mail: aoyamamorito@yahoo.com

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/
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