比較的静かなクリスマス休暇
これを書いているのが12月23日、今年も早いもので世の中、クリスマスと年末年始の休暇の雰囲気に包まれる季節となりました。
幸いなことに、一昨年よりは去年、去年よりは今年、年々この季節の騒音が減ってきています。まったくもって不必要な爆音で音楽を鳴らす不届き者らの愚行が年々下火になっているのは精神衛生上、良いことです。それでも奴らはやるときはやるので、そのときは拷問にかけられている気分になります。打ち上げ花火や爆竹の音が鳴る機会が、年々少なくなっています。クリスマスと大晦日、それぞれの当日、騒音がどうなるか戦々恐々ですが、願わくば静かな夜を迎えたいものです。
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政府庁舎、正面の門が開いていた。
広場にはけばけばしい飾りつけがなく、閑散とさえしていた。
2025年12月22日、ⒸAoyama Morito.
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政府庁舎前の幹線道路。
10時50分ごろ、この時間帯はまだすいていた。
2025年12月22日、ⒸAoyama Morito.
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2025年12月22日、クリスマスと年末を故郷で過ごそうとする人たちの車両でしょうか、幹線道路が大渋滞となっていました。最近、雨は降るもののたいした降水量とはならなかった天候でしたが、午後3~4時ごろから雨が降り出し、小降り・中降り・土砂降りを含めて約4時間にわたって降り続けました。田舎に帰る人たちにとって道路状況を悪くする雨は災難だったに違いありません。最近、バウカウ地方で起きた交通事故で3名が亡くなりました。事故・病気がなく、穏やかな年末年始をみんなで迎えたいものです。
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午後2時ごろになると、この幹線道路は渋滞した。
経済力がついた家庭が軽トラックを自家用車として購入すれば、
バスを利用せずとも、荷台に家族を乗せて長距離移動ができる。
2025年12月22日、ⒸAoyama Morito.
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この幹線道路は完全にふん詰まりとなった。
空は曇ってきて、このあと雨が長時間降った。
2025年12月22日、ⒸAoyama Morito.
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韓国の東チモール人労働者を守れ!
先月の11月25日、韓国で漁業関係の仕事をしていた東チモール人労働者(男性、30歳)が船首から海に落ち行方不明となり、その遺体が発見され海から引き揚げられたのは12月19日、三週間以上の捜索の末でした。遺体の腐敗状態が激しかったことでしょうが、『タトリ』(2025年12月19日)は、指紋により遺体の身元を確認したと報じました。
韓国で東チモール人労働者が海に落ちて亡くなった労働災害死亡事故は2025年10月10日、つい最近起こったばかりでした。このときは三日後に遺体が発見されています。
海の労働事故にたいしてきちっと対策をとっていれば、連続的に同じような死亡事故の再発を防ぐことができたのではないかと思うと残念でなりません。今回の海の労働事故をうけて東チモールの政府機関SEFOPE(職業訓練雇用庁)は、韓国で漁業関係の仕事に就く労働者に派遣前の海事訓練をおこなうとしています。東チモール人は韓国に派遣される前に海難事故に備える訓練を受けていなかったとは驚きです、韓国の労働現場で訓練を受けているのかもしれませんが。
従事する職業にかんする安全対策としての訓練は不可欠であることは云うに及ばずですが、はたして安全対策はそれで十分でしょうか。働き先となる国事情とその国が抱える社会問題を基礎知識として捉えておくこともまた大切ではないかとわたしは考えます。若い労働力を海外に送る東チモール政府にとって、そしてもちろん東チモール人労働者自身にとって、異国の労働環境の基礎知識を学んでおけば安全対策につながるはずです。
韓国にかんしていえば、労働災害による年間死亡者数が2000人を超えるという労働災害大国であるという現実を見ておくことがまず重要です。さらにまた韓国はOECD(経済協力開発機構)のなかで最低あるいは世界でも最悪といえる自殺死亡率と少子化の高さ、不平等な格差社会、これらの指標が示すとおりの厳しい競争社会であるという実態も捉えておくできです。そのうえで東チモール政府は韓国政府と対策を練って若者たちを韓国に送り、若者たちは労働災害の犠牲にならないように自己防衛をはかることが大切です。
因みに、『分断八〇年、韓国民主主義と南北統一の限界』(徐台教・著、集英社、2025年9月)は、不平等な格差社会、労働災害発生率の高さ、少子化と自殺死亡率の高さなどの劣悪な指標をかかえる厳しい競争社会である韓国の社会問題を、朝鮮半島の南北分断の問題が「どっかと腰を下ろしている」(同著書)韓国の政治は放置をしているという分析を紹介しています。
東チモール人公務員でわたしの友人が韓国に一週間ほど研修出張したとき、厳しい競争社会の韓国の空気を感じたといっていました。
日本の東チモール人〝労働者〟を守れ!
二国間協定で日本に送られている東チモール人〝労働者〟(技能実習生)は約50人の程度です。東チモール人労働者の数が五千人以上の韓国の場合のように社会問題が東チモール人〝労働者〟に与える影響を統計的な面でとらえることはできないかもしれませんが、日本とはどのような社会を抱える国であるかという基礎知識は東チモール人に押さえておいてほしいとおもいます。
日本はOECD(経済協力開発機構)のなかで平均給与の低い国であり、日本政府はアメリカ従属政策を改めることなく防衛費を増大し、庶民の苦しい生活が悪化の一途をたどっていくなか、立場の弱い外国人にたいする排外主義が広がっていることは東チモール人は知っておいて損はないでしょう。円安が進行中であることは日本で働く東チモール人にとって好むと好まざるにかかわらず最大の関心事となっていることでしょう。円安がこのまま進んでいけば日本は東チモール人に出稼ぎ先として選ばれなくなるかもしれません。
『山梨日日新聞』(2025年12月1日)によれば、「外国人労働者による労災による死傷者が2024年に初めて6千人を超え」、「24年の外国人労働者約230万人のうち、労災による死者と休業4日以上の負傷者は6244人」で、「在留資格別では」「技能実習1874人」とのことです。そして外国人労働者の「死者は39人で、19年の統計開始以降で最多となった」といいます。また「千人当たりの労災発生率は、日本人を含む全体2.35人に対し」、「在留資格別では、技能実習3.98人、特定技能3.91人が特に高い」と技能実習生の労災率が特に高い数値を出しています。東チモール人〝労働者〟が現在50人程度とはいえ、特に危険な労働環境におかれる身分で仕事をしていることを東チモールは日本政府に注意喚起をすべきです。
なお同記事では、外国人労働者の労災死傷者数増加について、事故隠しが横行し、氷山の一角ではないかと危惧する声も紹介しています。日本で働く東チモール人が不正行為の犠牲者にならないように東チモール政府による日本への働きかけが必要です。
また、2025年12月8日に発生した青森県東方沖地震は、日本は地震大国であり原発の国である事実を改めてわたしたちに想起させることになりました。日本で暮らす東チモール人は地震と原発のことを常に意識した方がよいでしょう。
12月8日の地震で青森県六ケ所村にある再処理工場の使用済み燃料を冷やす燃料貯蔵プールの水が揺れて650リットルの核汚染水がプールから出ました。このニュースは肝を冷やさせます。それでなくてもプールの水が漏れているというニュースがしょっちゅうある怪しげな再処理工場です。何らかの理由で使用済み燃料が外気に晒されればたいへんな汚染事故になってしまいます。
そして活断層です。活断層のうえに建てられている核施設(再処理工場や原発など)は、地震で壊滅的な悲劇を起こすことになります。原発事故が起こったとき、東チモール人(外国人労働者)は身を守ることができるでしょうか。日本政府は原発周辺の自国民さえも守ろうとしないのに東チモール人(外国人労働者)を守れるわけがありません。実行性がまるでない避難計画を地元自治体に丸投げしている無責任な政府に核施設を建設・管理・運営する資格も能力もありません。2011年3月の福島第一原発事故の悲劇を忘れてしまい、原発再稼働の動きが活発となっているいま、命あっての物種、わたしは東チモールの若者に日本での労働を肯定する気にはなれません。
家族を支える東チモール人労働者を守れ!
東チモールと二国間協定を結び労働者を受け入れているのはオーストラリアと韓国です。最近これにニュージーランドが加わりました。日本も二国間協定で東チモール人〝労働者〟を受け入れていますが、技能実習生制度(2027年に育成就労制度となる)と「労働者」と呼ぶのを避けるまやかしの姿勢をつづけています。また多数の東チモール人はイギリス・アイルランドをはじめとするEU諸国に働きに出ています。ヨーロッパの場合、家族とともにそこに定住し、ときどき里帰りをするという安定した暮らしを手にする事例があり、これは出稼ぎ労働とは違う形態といえます。
さて、2025年2月のSEFOPEによる報告によると、2024年初めに登録された東チモール人労働者数は、オーストラリオに13295人、韓国で5868人で、過去一年間でオーストラリアの東チモール人労働者が家族に送金した額は2100万ドル以上、同じく韓国からは2200万ドル以上になるとのことです(『タトリ』、2025年2月20日)。海外で働く東チモール人労働者は家族を支えるだけでなく東チモール経済も支えている存在です。海外で働く東チモールの若者たちを東チモール政府はありったけの知恵を絞って守ってほしいと願います。
今年2025年2月、オーストラリで働く東チモール人男性が、遠距離恋愛の相手が他の人に想いが移ったことに悩み自殺しました(『チモールポスト』2025年2月3日、『ディリジェンテ』2025年2月14日)。11月27日、またオーストラリで働く東チモール人男性が自ら命を絶ちました(『タトリ』、2025年12月17日)。何を悩んで自殺したのかは報道されませんでした。
韓国では、東チモール人労働者(男性、29歳)が去年2024年9月1日、バイクに乗って事故に遭い、四カ月間の治療のかいなく今年の1月18日、韓国の病院で帰らぬ人となりました(『タトリ』、2025年1月22日)。
これらは勤務外の死亡例ですが、何故、オーストラリで、韓国で、東チモール人労働者が亡くなったのかを考えようとすると、わたしは出稼ぎ先での出稼ぎ労働者の悲劇という構造に思いがいきます。つまり貧困であるがゆえに出稼ぎをせざるをえない出稼ぎ者の出身地(国)と出稼ぎ先との経済格差が生む、ある意味、構造的な仕組みのうえに起こる悲劇ではないか、と。
日本で出稼ぎといえば青森県ですが、青森県は貧しさにつけこまれて一体何が起こったのでしょうか。原子力船「むつ」がやって来て、挙句の果てにはプルトニウ製造工場である再処理工場(まだ稼働していないが)などの核施設で構成される核燃料サイクル基地がやって来たのでした。東チモール人が海外に出稼ぎに出なくてはならない状況の先に何が起こるのか、警戒して注視していく必要があります。
第548号(2025年12月23日)
〈出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net//
[Opinion14582:2524]













