青山森人の東チモールだより…騒音対策を求める画期的な記事

雨季なのに

12月13日の午後2時前、軽くパラパラと雨が降り出し、3時半ごろちょっと強くザーザーときました。ほんの少しの降水量でしたが、首都デリ(Dili, ディリ)には一週間以上ぶりの雨でした。

人工衛星からの画像を見ると(小スンダ列島を含むオーストラリア大陸周辺の写真をwww.bom.gov.auから6時間以上前のものではあるが見ることができる)、チモール島とオーストラリア大陸のあいだにあるチモール海の上空の雲の様子を一望できます。一週間以上ものあいだ、雨季だというのに、チモール海の上空にほとんど雲が浮かんでいない状態が10日ほど続きました。

12月13日に雨が降りましたが、これはチモール海の上空に発生した雨雲がチモール島を南から北へと横断する際に降らせた雨ではなく、チモール島上空で発生したいわば〝チモール産〟の雨雲が降らせた雨であり、この場合の雨はさほどの降水量をもたらしません。12月14日も13日とほぼ同じ時間帯に雨が降り、降水量はちょっと増えたようでした。この日はベコラへの帰り道に降られた雨でしたのでちょっと濡れましたが、13日・14日の雨のおかげでそれまで雨なしでほてった首都の町が冷やされたのでしょう、道中、涼しい空気のなかでとても快適な徒歩を楽しめました。このように〝チモール産〟の雨雲はいい按配の雨をもたらすようです。

モタエル教会前にて、2022年12月14日。

午後3時ごろのこのときに雨が降ってきた。

「家庭内暴力はヤメロー!」とシュプレヒコールをあげながら行進する一団。

ⒸAoyama Morito.

  • 政府庁舎近くの埠頭から、2022年12月14日。
  • 雨雲が南側の山から首都上空を通過し、ちょうどアタウロ島にかかっているところ。雲でアタウロ島が包まれる幻想的な風景を生み出した。この雲は〝チモール産〟なのでほんの一時的な現象で雨量も多くはない。もし〝チモール海産〟の雨雲だったら、どんな悪さをするか知れたものではない。
  • ⒸAoyama Morito.

チモール海に雲がかかってきた

12月15日も13日・14日と似たような時間に雨が降り出しました。しかしこの日は強風とともにけっこう強い降り方をしました。衛星写真を見るとチモール島南部の沿岸付近の海上に雲が発生していました。チモール海上にこれから本格的に雲が発生してくるぞという前触れでしょうか。ちょうどいい按配の雨とは〝チモール産〟の雲が雨を降らせた場合で、チモール海上で湿った雲が発生し、それがチモール島を南北に縦断する場合は雨による災害に要警戒となる――と大雑把な観察結果をわたしはいま得ているところです。

12月16日午後、チモール島南部の海上、つまりチモール海の東チモールに近いところでけっこうな量の雲が発生したために、(善し悪しは別として)雨季らしい天候が戻ってきました。午後4時20分ごろ雷がゴロゴロ鳴きながらパラパラと降りはじめ、その30分後には強く降り出し、午後5時20分ごろ雨はやみました。しかしチモール海上に雨雲が発生したので、これで終わりではありませんでした。夜中11時ごろにパラパラと降り出した雨は、17日朝の7時ごろまで断続的ながら長時間降り続けました。ほとんどがシトシト…という降ったうちに入れなくてもよさそうな弱い降り方でしたが、17日明け方前の4~5時のあいだ雨はトタン屋根を強く打ちつけ、安眠を妨害されたしだいです。

そして週末に入ると、チモール海の上空にはチモール島(とくに東チモールの南東部寄り)からオーストラリア大陸まで、本格的に雲がかかる状態となりました。さあ、このような状態になったからには大きな降水量が予想され、雨による被害に備えなければなりません。

案の定、週明けの新聞『東チモールの声』(2022年12月19日)では首都の西端に位置する・タシトゥルの冠水した道路の写真(12月18日[日]撮影)が掲載されていました。

これからしばらくはチモール海の上空に発生した雨雲による湿った空気が東チモールへ自然災害をもたらすことを想定して年末年始を過ごさなければなりません。

より良い生活のために騒音対策を考えてほしい

サッカーW杯の準決勝・三位決定戦・決勝戦を前にして大勢の東チモール人がひいきとするポルトガルが敗退してくれたおかげで、夜更けにワーワー・ブーブーと安眠妨害となる騒音は峠を越えました。

政府庁舎近くの旗売り場、2022年12月16日。

サッカーW杯の応援国として最後まで残った国はアルゼンチンのようである。この時点になると旗売り場がめっきり減少し、わずかに残った旗売り場で売られる国旗はアルゼンチンぐらいであった。

ⒸAoyama Morito

アルゼンチン対フランスの決勝戦がおこなわれた12月19日の0~3時ごろのあいだ近所からワーワー・ブーブーと歓声と騒音が聞こえてきましたが、ポルトガル戦ほどのひどい騒音ではありませんでした。サッカーW杯が終了したのでこれで騒音のネタが一つ消えたことは、わたしにとっては喜ばしい出来事です。

しかし喜ばしいのはサッカーW杯にかんしての騒音が無くなったことであり、騒音のネタが無くなったのではありません。これからクリスマスだの年末年始だのといろいろ行事が待ち受けて、大音響の音楽が一般家庭の庭からか近所へと発せられる時期となり、わたしのような騒音に悩む人たちはますます悩みの深い季節になりました。

東チモールでの生活における日常的な大きな障害の一つに騒音をあげることができます。騒音に悩む人は東チモール人にもいます。その人は近所の家が放つ夜中の大音響の音楽があまりにもひどいので警察に電話して苦情をいっても、取り締まる法律がないから警察としては何もできないといわれるだけなのだそうです。

このたび、ただただ辛酸をなめるだけの騒音嫌いの人にとって光明を見いだす気分にさせる記事が新聞に載りました。騒音に警告を鳴らす文章が新聞の活字になったのは初めてのことではないでしょうか。その意味でこの記事は画期的といえます。

その記事は『インデペンデンテ』(2022 12月16日)が「マヘイン財団」([マヘイン]とはテトゥン語で[守護者・天使]の意)という団体が発表する声明をまとめたものです。以下、実に素晴らしいこの記事をまとめてみます。

『インデペンデンテ』(2022 12月16日)より。

写真は記事の一部。

内容の要約は下記の通り。

* * *

過度の騒音と騒音抑制への関心の欠如は混乱を生む状況をつくる。騒音対策に国・行政は真剣に取り組むべきである。深夜における大音響の音楽や公道での叫び声はその地域住民の睡眠不足とストレス増加をもたらし、肉体的・心理的な害を人に与える。騒音公害は東チモールの多々ある社会問題のなかでも深刻なものである。十分な睡眠を得て子どもたちに十分な食事を与えなければならない母親が騒音の被害を受けて、子ども・赤ちゃんたちが適切な発育が妨げられてしまい、教育にも悪影響がでてしまう。騒音公害はまた地域住民にストレスを与え、家庭内や地域内での争いごとを引き起こす。そして騒音は首都ディリを魅力のない都市にしてしまい、経済とくに観光業に悪影響を及ぼす。観光活動に含まれる仕出し屋やエンターテイメントなどの接客業は整然とした清潔で穏やかな環境が求められるからである。改造車による騒音を警察が取り締まり罰金を徴収し、行政は過度な騒音の苦情を受け付けるホットラインを開設し、騒音を立てないことの意義を教える市民講座を開くなどして、健康・経済・生活の質の向上を図るべきである。
* * *

近所から出される騒音に悩む東チモール人の友人は、誰も騒音問題のことを論じないと絶望的になっていましたが、この問題を論じられ始めたのは素晴らしいことだとこの記事を見て喜んでいました。また、TVニュースのなかでもお役人さんが、他の人のことを考えて夜中に騒音をたてないようにしましょうとサッカーW杯のポルトガル戦が始まる前に呼びかけていました。夜中でなくても一般家庭の庭で日中に催される何らかの祝賀集会において流される音楽は、わたしにいわせれば常軌を逸している、桁違いの大音響で、まさに精神障害を誘発させるほどのものです。

いい音とはどんな音なのか、音を楽しむ適切な音量とはどの程度の音量なのか、パーティでの音楽の流し方、音楽を聴く方法論などなど、より良い生活を送るためにこの国の人たちがこのようなことを考える余裕をはやく獲得してほしいと願うしだいです

 

。青山森人の東チモールだより  478号(20221219日)より

e-mail: aoyamamorito@yahoo.com

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/
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