幼稚さに唖然。批判が集中した尹政権が拙速に極右化し(「従北勢力論」)、クーデターに失敗した。人民が軍事政権(開発独裁)と闘争し勝利し民主化を実現した。その力は大きい。
まずはこう確認できるが、よく考えてみると、事態はもっと深いのではないか。
(1)米欧日に出現した危機が早くも韓国や中国でも 言わば世界資本主義の「全般的危機」
韓国の情勢は、大統領選挙で民主党が敗北しトランプが勝利した米国、中道後退と極右伸長の仏・独、総選挙で自民党政権が敗北した日本、これらの国々に同調し始めている。
「北」の先発資本主義は、「南」に対する資本輸出(グローバリズム)と表裏で、金融資本主義化してきた。労働者階級に対しては、ケインズ主義の「包摂」から新自由主義の「差別分断」に転じ、格差を拡大し貧困を蓄積してきた。そこにインフレが襲い、生活苦の不満が社会に充満している。深い経済的社会的危機である(「衰退と没落」および「寄生性と腐朽性」)。
そういう危機が、韓国でも始まっている。「南」の後発・新興国は、開発独裁で資本主義の移植を内在的発展に転化し、「北」に対する不均等発展を実現してきた(グローバリズムの展開)。韓国はその先頭に位置するが、そこで早くも危機が始まっている。実はその中心に位置する中国も同じだろう(「社会に対する復讐」が頻発)。
・中道が後退し極右が台頭する 社会主義には「ルネサンス」が喫緊である
人民の不満と批判は、中道右派=保守か中道左派=革新かに関係なく、時の政権に集中する。危機は深く、資本主義の枠内では根本的解決にはならない。不満と批判は続く。
そうすると当面は、中道が後退し、ブルジョア民主主義体制が空洞化し、極端な排外主義と国家主義の極右(かってのファシズム)が台頭するだろう。韓国は再び民主党政権だろうが、それに対して、極右が今度は準備して出てくるのではないか。
根本的解決は社会主義革命であるが、とは言っても、社会主義が人民を結集するには「ルネサンス」が喫緊である。①ソ連や中国、20世紀の「社会主義」は実は官僚制国家資本主義であった。それをどう清算するのか。②資本主義が地球の自然環境を破壊した。21世紀の社会主義は人類と自然の共生をどう実現するのか。最重要はこの2点だろう。
(2)米日韓体制は崩壊的危機 韓国・朝鮮も20世紀の「反米」から21 世紀の「反覇権」へ
人民が尹政権を批判したもう一つは従属的な対日外交である。植民地支配の謝罪と賠償、この対日要求を尹政権は放棄し、日本政府はそれを拒否し、矛盾を尹政権に押しつけた。尹政権崩壊で、対中国の米日韓体制は崩壊的危機だろう。韓国が抜け、米韓と米日に戻る。
この間、覇権闘争の中、韓国は米日陣営へ、朝鮮は中ロ陣営へ、南も北も両方が帝国主義に従属する方向へ進んできた(北はロシアのウクライナ侵略戦争に事実上参戦)。
この大きな情勢からして、韓国でも朝鮮でも、人民はいずれ、米日にも中ロにも従属・依存しない、自主的・民主的・平和的統一へ進むだろう。それが自己決定権であり、反覇権につながる。しかし、それには、「中国=帝国主義」だけでなく、「北=官僚制国家資本主義」(官僚がブルジョア階級化して人民を抑圧・支配)という認識が必要である。時間がかかる。
韓国においては、今回の尹政権打倒はその出発になる。今後、極右が「従北勢力論」で登場し、それと闘争する中で北に対する認識は深まるだろう。
・日本人民が要求する国の進路 アジアの反覇権を促進し反覇権のアジアに合流する
日本帝国主義は、戦略喪失状態ではないか? 韓国だけではない。アメリカのトランプ政権は、ウクライナと対ロシアだけでなく、台湾と対中国も実は融和主義ではないか? それでも日米安保体制の下、アメリカを引き留め後ろ盾にし、対中国の戦争準備に走る。
対抗的に、日本人民も「国の国際的進路」を反覇権と打ち出すべきだろう。①日米安保体制から離脱と②アジアに対する侵略と植民地支配の完全な清算、これが2本柱になる。
②は、対朝鮮では日朝条約と国交回復、対韓国では第2日韓条約ではないか。竹島(独島)は、歴史的に抑圧し侵略し支配した側の日本が、領有を放棄すべきである。
沖縄と台湾の自己決定権と反覇権も重要である。沖縄のそれは対日本で、台湾のそれは対中国であるが、日本と中国は、それを承認すべきである(分離・独立でも)。尖閣(釣魚)はその沖縄と台湾の自己決定権に含め、領有を放棄すべきである。
自国の帝国主義と覇権主義に反対、これを日本人民が実行すれば、中国人民にも実行を促す。それはアジアの反覇権を促進し反覇権のアジアに合流する眼目である。 (おわり)
2024.12.26
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