韓国通信NO773

復刊7月号
「通信」の復活

すっかりご無沙汰してしまった。

書きたいことがたくさんあるのに書けなかった。いろんな出来事が多すぎて気合がはいらず、沈黙を続けた。

最近、記憶力が低下したせいか、人の名前や簡単な日本語が出てこないのが辛くなった。益子の陶板美術館「朝露館」で開かれた新谷のり子さんのコンサートの準備で忙しかったことも言い訳につけくわえておきたい。

<平和を歌う新谷のり子コンサート6月15日>    

大雨が予想されるなか、美術館の中庭に約60名が集まった。事前に入場を断わるほどの盛況ぶりだった。

新谷のり子

あの『フランシーヌの場合は』をお目当てに来た参加者は、それぞれの青春と重ねて話と歌に聞き入り、あっという間に1時間半が過ぎた。

三里塚の農民のたたかい、全共闘運動とのかかわり、部落差別、中近東のたたかい、朝鮮とのかかわりなど、ベトナム反戦運動から始まる彼女の人生と歌は魅力と刺激に溢れたものだった。<熱唱/筆者撮影>

翌日の毎日新聞栃木県版は写真入りで「私の人生の残りがどれだけあるか分からないが、生きた価値があるとするなら、この国に戦争の道を歩ませてはならない」という新谷さんのメッセージを記事にした。

<日本が変わる兆し>

アメリカのトランプ大統領から目が離せない毎日が続いた。今も続く「トランプ劇場」だが、こんな男に全世界が振り回されるのが不思議な気がしてならない。中国の台頭によるアメリカの動揺と焦りだと理解できるが、トランプの帝王のような振る舞いは尋常ではない。アメリカの忠犬を続けてきたわが国も「イエス」ばかり言ってはいられなくなった。ペリーの「黒船」来航に匹敵する驚天動地に、わが国は従属か独立かの決断を迫られている。

米価高騰で大騒ぎになった。政府が農業切り捨てを進めてきたから当然だ。コメ農家は消滅して貧乏人は餓死すると警告する人もいる。生き残るのは「捨てるほどコメのある」政治家と富裕層だけかも知れない。

参院の選挙戦に突入した。「なめんなよ」とアメリカに怒りをぶつけた石破首相発言に驚いたが、票欲しさに言いたい放題の候補者にも同じ言葉を言ってやりたい。「アメリカファースト」の代わりに「日本人ファースト」を訴える政党が人気を集める。世界も日本も大掃除が必要だ。新しい仮面を着けたファシストたちが連日マイクを握る。

<風船爆弾>

梅雨の晴れ間に仲間と明治大学生田キャンパス(神奈川県川崎市多摩区東三田1丁目)にある平和教育登戸研究所資料館の見学に出かけた。登戸研究所は分散していた研究施設を統合し、わが国の「秘密戦」の総合研究所として1937年(日中戦争)に発足した。参謀本部直轄の研究所として、電波、無線、毒物、薬物、細菌兵器の開発、総力戦の1翼を担う有力機関として期待された。かつての敷地は明治大学生田キャンパスに生まれ変わり、資料館は大学の付属施設として登戸研究所の姿を現在に伝える。

展示資料の中でひときわ目を引くのが「風船爆弾」と「偽造紙幣」だった。

原子爆弾の完成が近いなか、わが国の風船爆弾づくりには驚きを禁じ得ないが、直径10m、こんにゃく糊で作った和紙風船は敗戦間際まで9300発が放たれ、一部はアメリカに到着して死者6名の死者が記録される。敵地を混乱させる目的で技術の粋を集めて作られた偽造紙幣の出来栄えにも感心したが、多くの兵士が大陸で、南洋諸島で飢えと戦っている同時期の風船爆弾と贋札作りは何と空しい「努力」だったことか。

戦争の愚かさ、不条理さを登戸研究所資料室は教えてくれる。小田急線生田駅から徒歩15分。水~土10時-16時 入場無料。見学をおすすめしたい。

<誕生日おめでとう>  
写真⇒7/3駅頭スタンディング参院選告示日

今月の17日に83才になる。体力的に黄色信号が点滅しているのを感じる。「終活」と程遠く、相変わらず毎日をあくせく過ごしている。
益子の朝露館では9月に韓国の写真家鄭周河さんの写真展を企画している。

韓国の新政権発足とともに日韓の本格的な市民交流が再会されようとしている。

福島の原発事故を教訓にして、台湾では全原発が停止。韓国も反原発の流れは止まらない。      

一方、日本で稼働している原発は現在12基、新潟の柏崎刈羽、茨城の東海が再稼働を狙い、次世代型小型原発の実用化が進められようしている。

福島県浪江町にある「希望の牧場」の牛を撮り続けた鄭周河さんの韓国の目には何が見えたのか。作品から私たちは何を感じ、何を学ぶことが出来るのか。あらためて原発と向きあう写真展にしたい。若者たちにも是非見てほしいという願いを込めて。

日本各地で写真展の共同開催をする仲間を募っている。まずは益子朝露館の成功から―。 

<写真/鄭周河作品集「パラ-ダイス」から>

初出:「リベラル21」2025.7.16より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/
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