韓国KBS放送、高社長退任確定、越年ストライキ終結へ向かう?

 韓国の公共放送KBSは1月22日に開催された理事会で、コ・デヨン(高大栄)社長の解任を決めた。解任を提案したイ・インホ(李仁浩)理事長は理事会後辞職した。
 昨年9月4日以降、社長退陣を求めて140日以上にわたって続いていたKBS労組の全面ストライキは、解任決定を受けて終結する見通しとなった。しかしコ社長は「公共放送としての中立性が損なわれる」と反発している。
 KBSには産業別の韓国言論労組傘下のKBS新労組と企業内のKBS労組の二組合があるが、今回のストライキでは両労組が足並みをそろえた。両労組ともに、コ社長の態勢の下で、パク・クネ(朴槿恵)政権を批判するニュースが抑えられ、逆にパク政権を擁護する報道が行われたとして、報道の自由を求めて、経営首脳部の一掃を求めてストライキに入ったものである。KBSでは2008年のイ・ミョンパク(李明博)政権誕生以降、パク政権退陣(2017年)に至るまで、9年間にわたって続いた保守政権がKBSの主要人事を握り、政権擁護の報道機関だとの汚名を受け続けてきた。
 特にパク政権の下では、政府批判の報道を行った記者の配置転換、解雇があったほか、2014年のセウル号沈没事件で、政府からの報道差し止めを社長が受け入れたことも、問題となった。北朝鮮の核実験という大きなニュースがあったが、記者たちは取材を拒否した。また、ニュース、時事番組の放送休止や、時間短縮が相次ぎ、ニュースが録画で放送されるという事態にもなったという。人気娯楽系番組も一部休止となった。そのため、放送本部の部長、デスクなど25人が、社長は責任を取って辞職すべきだとの共同声明を出した。視聴者からは「受信料返せ」など、批判的なメールも多数寄せられていた。
 社長解任を報じた「ハンギョレ」新聞は、「国民の念願だった公営放送の正常化の第一歩だ」(1/23)と歓迎している。
 理事会はこれまで前保守政権(現野党)系の理事が多数を占めていたが、保守系の一部理事が公金不正事件で辞任したことから、与党系理事が多数となり、社長解任が決まったといういきさつもある。
 韓国の放送は大統領が保守系か革新系かで政権が変わるごとに揺れ動いてきたが、今回ばかりは、「権力からの独立性と公共性が課題だ」(ハンギョレ新聞1/23)という世論にどう対応するかが問われている。

22日、ソウル汝矣島(ヨイド)のKBS本館ロビーでコ・デヨンKBS社長の解任建議案が理事会で通過した後、ソン・ジェホ労組委員長がこのニュースを伝えると労組員たちが喜んでいる。文在寅大統領は23日、コ社長解任要求案の採決を行い承認した。//ハンギョレ新聞社

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