菅新政権に関わる先の投稿と後先が逆ですが、本稿では、鳩山首相辞任後に、「水に落ちた犬を叩く」がごとく批判を加えるのは、日本的な美意識に欠ける行為であると自覚しながら、旧来の民主党支持者と昨年来の俄民主党支持者の一部の「小鳩」支持者による、見当外れな先の選挙結果の評価と意義付けに疑問を呈してみたいのです。
昨夏の選挙では、私個人も民主党に投票しました。 それは、何も積極的に民主党の「マニフェスト」の内容に賛成した訳でも、民主党の候補者を支持した訳でもありません。 ただひたすらに、自公政権に辟易としたからです。 バブル崩壊後の景気停滞期にも効果的な経済政策を採れずに企業倒産は山積、年金制度の改悪で老後の生活設計を狂わすし、金利引き下げで国民は大損し銀行は大助かり、挙句の果ては、大臣が国際会議の舞台で大酒を飲み醜態を晒す始末。 これでは、呆れて見放すのも当りまえ。
そうです。 他に選択肢が無かっただけ。 それなのに何を勘違いされたのか、官僚政治を史上初めて打破した「国民による革命」だと評する論者が輩出し、「小鳩」の金権疑惑を、検察庁が尖兵となり官僚機構が米国と通謀して「反革命」を謀っているとまで勘繰る始末でしたが、陰謀論の極致としか表現の仕様がありません。 外国人による論評でも、失礼ながら民主党寄りのバイアスが掛かったと思われるものでは、「民主党が日本の政策運営における抜本的な改革への骨組みを築いたのは確か」(トバイアス・ハリス氏)との評のとおり「事業仕訳」等を好意的に採り上げられたものでした。
もっとも「鳩山政権がそこへ肉付けしていけるかどうかを見極めるにはまだ時間が必要だろう。」との注記が付いていましたが。
http://jp.wsj.com/Opinions/node_13962
【日本版特別寄稿】民主党と官僚の葛藤
しかし、私は、同紙上に掲載された「官僚らに質問する民主党の蓮舫議員」なる写真を見て、如何にもマスコミ受けのする今日的な「官僚叩き」の軽薄な印象を受けると同時に「事業仕訳」等のパフォーマンスでは、専門的に学識を積んだ訳でも無い俄政治家にキャリアを重ねた「官僚」を上回る力量は無いだろうとの思いを深めたのでした。
この「疑似革命」を標榜する作戦は一定の成功を勝ち取ったことは事実です。 私も、居酒屋で俄民主党支持者が、「官僚」批判をするのを何度も観ました。 低収入の民衆が、行き場の無い鬱憤を晴らすのには、有名大学を卒業し中央省庁に勤務する「官僚」を敵視し攻撃することは快感であるのは事実でしょう。
しかし、「官僚支配の打倒さえおこなえば国民中心の政治がおこなわれるというイデオロギーは財界支配から国民の目をそらし、政治の流れを「擬似革命」へと導きかねない危うさを持つのではあるまいか。」との青野信之氏の指摘が、私には、正当と思われます。
http://www.janjannews.jp/archives/2420265.html
【オムニバス】疑惑まみれの民主党小沢幹事長にたいする擁護論への疑問オムニバス
さて、それでは、先のトバイアス・ハリス氏の懸念であった「鳩山政権がそこへ肉付けしていけるかどうか」については、どうでしょうか。 前提条件が空中楼閣では、「肉付け」も何もありはしないでしょうが。 これについては、櫻井よし子女史が、沖縄県与那国島上空を分断する防空識別圏の問題を例に挙げて「自分が願えば、他国はその願いを受け入れてくれると空想し、願いを実現するにはどんな手を打たなければならないかをまったく考えず、準備もしないのだ。この人は単なる夢想家に始まり夢想家に終わる人なのだ。」と酷評されています。 残念ながら同意するしかありません。
「 “真性暗愚の宰相”が辞任表明 権力の二重構造は終焉するか 」
『週刊ダイヤモンド』2010年6月12日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 841
これでは、私のような無党派の者は、一時の迷いで「空中楼閣に依る夢想家」に夢を託したことになるのでしょう。 覚めるのも早い筈。