一昨日(3/4)、参議院議員会館(B103)において、静岡大学防災総合センター教授・副センター長の小山真人氏をお招きして、「原子力規制 火山影響評価ガイドの問題から考える」という勉強会が開催されました。当日は、主催者の福島みずほ氏をはじめ、複数の国会議員や海渡雄一弁護士、加えて海外からグリーンピースのスタッフも参加して、充実した勉強会となりました。下記にその報告を簡単にいたします。
小山真人氏は「火山学」の専門家でいらっしゃいますが、その小山氏から、今般、原子力「寄生」委員会・「寄生」庁が強引に押し通した火山影響評価ガイドは、火山学の科学的観点から見て問題だらけであることが指摘され、改めて川内原発をはじめ、日本各地の大きな火山リスク下にある原発・核燃料施設の危険性について認識を深めることができ、背筋が寒くなる思いをいたしました。特に鹿児島県の川内原発は、再稼働第1号とされているようですが、近隣に巨大なカルデラを5つも連結型で抱える火山リスク最大の原発で、こんなものを再稼働させたら近い将来、破局が訪れること必定であることが確認されました。単に稼働を止めるだけでなく、使用済み核燃料を含むすべての核燃料を川内原発から撤去する必要があります。
なお、下記には、当日の私のヒヤリングメモを付記しておきます。ご参考までにご覧ください。
●火山影響評価ガイド(原子力規制委員会 2013年6月)
http://www.nsr.go.jp/data/000069143.pdf
●核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律関連 原子力規制委員会
http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/kettei/02/02_01.html
(上記「火山影響評価ガイド」はこのサイトの「実用発電用原子炉の規制基準に関連する内規」のところにあります)
<当日の録画>
●▶ 20140304 UPLAN 小山真人「原子力規制—火山影響評価ガイドの問題点から考える」 – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=kLWjJ7TWdJk
(1)原子力規制 火山影響評価ガイドの問題から考える(ちらし)(小山真人さん 2015.3.4)
(2)原子力発電所の「新規制基準」とその適合性審査における火山影響評価の問題点(小山真人 『科学 2015.2』)
(3)低頻度巨大災害のリスクを定量評価する(小山真人 『科学 2014.2)』
(4)『新規制基準#世界最高水準」火山灰リスクへの対応不十分(グリーンピース 2015.2.26)
(5)原発脅かす火砕流、火山影響評価ガイド施行 規制委(宮崎日日新聞 2013.11.24)
(6)クローズアップ2013:巨大噴火、原発のリスク 発生頻度低く、予測困難 起これば「被害甚大」(20131223 毎日新聞)
(7)特集ワイド:「忘災」の原発列島 再稼働は許されるのか 火山対策、予知頼みの無謀(20140626 毎日新聞 夕刊)
(8)「安全宣言」事例から考える科学者の役割(小山真人他対談 『科学 2014.2』)
<関連サイト>
(1) 「巨大噴火の予測の監視に関する提言」(日本火山学会原子力問題対応委員会 平成26年11月2日)
http://www.kazan.or.jp/doc/kazan2014/images/teigen.pdf
●火山学会秋季大会
http://www.kazan.or.jp/doc/kazan2014/
(上記提言はこのサイトの中にあります)
(2)【緊急院内集会】川内原発の火山リスクと再稼働審査(4-16 1730~@参議院議員会館) – 原子力規制を監視する市民の会
(ここに、坂上武さんと井村隆介さん(鹿児島大学大学院・理工学研究科准教授:火山学)のレジメがあります。
(3)原発の新規制基準の「火山評価ガイド」と適合性審査の問題点(小山真人(静岡大学防災総合センター))
http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/public_html/etc/onlinepaper/kazan2014f.html
(4)「規制委の火山リスク認識には誤りがある」 原発再稼働の是非 東洋経済オンライン 新世代リーダーのためのビジネスサイト
http://toyokeizai.net/articles/-/44828
(5)日本の主要カルデラ
http://www.geocities.jp/outdoors7909/Caldera/Caldera.htm
(日本列島の火山とカルデラの分布状況を一覧した場合、鹿児島県・川内原発のみならず、北海道の泊原発と青森県の核燃料サイクル施設、及び東通原発が非常に危ない印象を受けます。一刻も早い原発・核燃料施設と使用済みを含む核燃料の撤去が望まれます:青森県六ケ所村の再処理工場、及び同工場敷地内の高レベル放射性廃液貯蔵タンクが最も危ない)
(6)九州電力「川内原子力発電所 火山影響評価について」
<当日の田中一郎メモ:小山氏の講演内容に私が追記しています>
1.火山影響評価ガイドと原子力規制の経過
2012年9月 原子力「寄生」委員会・「寄生」庁発足
2013年7月 新規制基準・火山影響評価ガイド策定
2014年9月 川内原発1,2号機 設置変更許可申請認可
2015年2月 高浜原発3,4号機 設置変更許可申請認可
2.2つのタイプの火山噴火予知
(1)観測機器による直前予知
(2)噴火履歴による災害予測 ⇒ 事前対策 ⇒ ハザードマップ
3.原子力「寄生」委員会が定める火山リスク・チェック基準の「160km圏内」は阿蘇山噴火に伴う火砕流を根拠にしている。
4.火山爆発指数(VEI)=マグマ噴出量によってランク付け
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%81%AB%E5%B1%B1%E7%88%86%E7%99%BA%E6%8C%87%E6%95%B0
ランク「VEI8」 1000km2以上 観測値なし
ランク「VEI7」 100km2以上 観測値なし
ランク「VEI6」 10km2以上 観測値若干あり
ランク「VEI5」 1km2以上 観測値若干あり
・・・・・・・以下省略
ちなみに、原子力「寄生」委員会・「寄生」庁が川内原発に想定している火山噴火は「VEI6」レベルのもの、それを超える「VEI7」や「VEI8」の噴火を想定しない科学的根拠はない。他方、鹿児島市の避難計画(地域防災計画)では、「VEI5」までの噴火しか想定していない。何故なら、それ以上大きな火山噴火があると、鹿児島市が壊滅するからである(避難誘導する本部が壊滅することに加え、避難先である鹿児島市なども壊滅する)。
5.ここがおかしい「火山影響評価ガイド」 その1
(1)巨大噴火発生可能性についての恣意的基準
①火山学、火山防災の現状とのかい離
②設計対応不可能な火山事象の可能性についての数値基準がない(基準地震動や活断層には数値基準がある)
⇒ 活断層評価では、過去12~13万年前以降に動いていないことが確認できない断層を「活断層」とした(不明の場合は40万年前までさかのぼる)、
⇒ 上記と同じ基準で見れば、過去12~13年前以降に川内原発敷地地域を火砕流が襲ったのは少なくとも2回あるので、敷地の適格性は「×××」
⇒ 国際原子力機関(IAEA)の原発・核燃料施設立地基準では、火山リスクのある場所は立地不適格(別添のグリーンピースのレポート参照)
(2)火山噴火の予測が甘い ⇒ モニタリングで噴火予測などできない(火山ごとの多様性が大きく不確実性大)
(3)原発をいつまで運用するのかの期間が明らかにされていない(稼働期間のことではなく、いつまで使用済みを含む核燃料を置いて火山リスクにさらすのか)
6.ここがおかしい「火山影響評価ガイド」と川内原発火山リスク評価 その2
(1)不適切な噴火発生間隔の予測(もっと精度のいい過去データがある)
誤差表示なし、
噴出量が同じ量でそろっているのは不自然
阿蘇山や鬼界カルデラを根拠なく想定から外している、
隣接する3つのカルデラの連続性について無検討
(2)噴火ステージ想定に問題あり(噴火に至るまでの火山の変化プロセスの想定)
(3)巨大噴火「未遂」事案の問題(予兆が必ずしも噴火に至るとは限らない=廃炉や核燃料撤去ができるのか?)
(4)降灰の厚さの過小評価(川内原発は15cm=過去の桜島噴火でVEI6レベルの中でも規模の小さいものを選んで想定している、VEI7以上は根拠なく無視)
0.1cm積もれば飛行場は閉鎖、5cm積もれば車はスリップして動かない、外部電源はどこまで耐えられるのか? 降灰のリスクは原発にとっては甚大
(5)火山性火砕流・土石流の危険性
(6)地域防災計画との連携が欠如(鹿児島県の地域防災計画ではVEI5までの噴火した想定していない=上記参照、他)
(7)モニタリングによる予測は困難
噴火前にはマグマだまりが膨れる=5倍になったらアラームなどというのは特殊な1例にすぎず、その場合でも、VEI6だと2~3か月前に予知=遅すぎて手の打ちようなし、VEI7はデータない
巨大地震と連動した場合には、マグマだまりの膨張いかんにかかわらず一気に大噴火の可能性
(8)噴火で被災した原発の被害想定の欠如
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5213 :150306〕