みなさま、先週3/12(土)に放送されましたNHKスペシャル「26兆円 復興は
どこまで進んだか」をご覧になりましたでしょうか。ご覧になれなかった方は、下記
サイトに録画がありましたからご案内します。ちょっと見にくいですが、お早めにご
覧ください。いろいろと考えさせられるフィルムでした。阪神大震災を西宮市で体験
し(私のところは大したことはありませんでした、とはいえ大変でした)、また、阪
神大震災直後の神戸市を担当していた営業サラリーマンの私としては、この東日本大
震災後の東北3県の姿は、「またか・・・、いや、阪神の時よりもひどい、この国の
政府の無能と無神経、そして冷血にはあきれるばかりだ」と思いました。しかし、
岩手から宮城にかけての三陸海岸沿いの地域の復旧・復興は、どうしたらいいのか、
神戸市及びその周辺市町村などの都市部の復興とは違う、独自の困難さも強く感じま
した。みなさまも、ぜひ、ご覧になり、機会があれば意見交換いたしましょう。何故
なら、自然災害は、また再び、必ず私たちを襲ってくるからです。(原発震災はそう
ではありません。原発をやめればいいだけです)
●NHKスペシャル シリーズ東日本大震災“26兆円”復興はどこまで進んだか
http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20160312
●NHKスペシャル 26兆円 復興はどこまで進んだか 3月12日 バラエティ動画を
視聴!バラ動画
http://varadoga.blog136.fc2.com/blog-entry-88841.html
(私が思ったこと)
1.総額26兆円の復興予算(うち所得税・法人税の増税が約11兆円=但し、法人税の増税は途中でやめてしまった)のうち、半分以上の約14兆円もの金が「インフラ整備」と呼ばれる土建事業に使われていた。その代表格が、(1)巨大堤防、(2)道路、(3)漁港である。そして驚いたのは、この代表格3つのうち、工事進捗率の最もいいのが道路で、約8割が終了しているのだそうである。あきれるばかりだ。復興資材供給や生活関連の緊急道路を応急整備するのはわからないでもないが、どうも大半のカネは、使いもしない高速道路などの高規格道路に消えている可能性が高い。復興事業にタカる典型的な「シロアリ」事業である。また、巨大堤防にしろ、漁港再建にしろ、大問題を引きずっていて、こんなやり方で14兆円もの金が消えて行ったのかと思うと、いらだちを隠せなかった。いったい誰のために「復興事業」をやっているのか。
2.他方で、被害を受けた地域住民や地域企業の再建・再生への支援予算は制約が多い上に金額が限られていた。たとえば、被害者を直接支援する事業の予算は、総額26兆円のわずかに1割=2.7兆円程度、これに地場産業復旧の切り札のように言われている「復興取組企業グループ形成補助金」は総額でも5千億円程度に過ぎない。
そもそも適用条件にいろいろ制約が付けられ、使い勝手のあまりよろしくない補助金や制度が乱立していた話も聞いている。日本政府は、阪神大震災後の復興政策の出来の悪さを真剣に反省していなかったようである。
3.私が一番腹が立つのは、未だに日本政府は、というよりも財務省は、被害を受けた被害者個々人や個々の企業への直接の税金による支援を「利益供与にあたるから駄目だ」と退けている点である。これで災害復旧ができるわけがない。人間を助けずに、防潮堤や道路を建設していて、復興ができるわけがないだろうに。この日本政府の反被害者的態度に風穴を開けたのが、阪神大震災後に小田実ら市民運動家らが中心になって動き政治を動かして実現した被害者個人向けの復興交付金である。しかし、それにも金額の限度があり十分ではない。上記の2.とも共通するが、災害復興における「人間の復興」を、もっと真正面に据えて、しっかり考え検討しなければいけない。
4.自治体の首長や職員からは、地方の裁量権があまりになさ過ぎて、国の官僚によるさじ加減で振り回されている声が聞こえてくる。おそらくそうだろう。たとえば、街の再建=商店街を再構築するのに補助金を申請したある自治体の住民らは、個々の商店が自前の店舗を所有して商店街の街並みとして再建したいと計画したが、国はそれを認めず、大きな1つのビルを建て、そこにテナントとして入り、運営等については指定する経営コンサルと相談せよと指示したそうである。何度も要請しても国は頑として聞き入れず、街並み再建はご破算となったという。これなども、個々の個人や会社、あるいは商店には税金は投入・贈与できない、という、上記の「呪文」に「呪縛」されてのことであろうと推測するが、かような「根曲がり」が現場の再建事業の進捗をあちこちで妨害していたに違いない。
5.NHKがベタ褒めしていたNPO参入による被災者支援だが、私は、いいものと悪いものが混在していたように思う。やったものがすべて成功するとまでは言わないけれど、せめて「悪質なもの」「あまりにお粗末なもの」は排除されるべきだから、やはり第三者の目が入り、社会的なチェックが効くような仕組みが必要だろう。
6.私が一番悩ましいと思ったのは、三陸地域のような被災地での、生業(なりわい)=地場産業の復興をどうやっていけばいいかという問題だ(それでも私は、産業の復興よりも、まず、被災者住民の住宅と生活の復興が先だと考えている。産業復興を最優先したところに、この東日本大震災復興の最大の誤りがあると思う。
お粗末な仮設住宅に5年以上も居住を余儀なくさせるような復興は全部だめだ。一刻も速く、被害者の方々をちゃんとした住居に全額公費で移せ)。漁業・水産業、及びその関連産業が最も主要な産業だが、もともと厳しい産業であったがゆえに、震災のダメージから立ち直るのは容易ではない。私は、NHKは、最初の5年がインフラの復旧と産業の再スタート、これからの5年が、人々の生活の回復・復興と企業の発展などと整理していたが、私は順序が逆だと思う。そして、これからの「企業の発展」どころか、「生業」としての仕事を、どういう事業で、どういうやり方で、誰がやっていくのか、政府はもっと真剣に考えないといけないのではないか。(例えば重茂漁協の取組を一つの優れた事例とすべき)
7.最後に、申し上げるまでもないが、上記で指摘した道路建設のみならず、たとえば福島県などの「除染事業」などなど、巨額復興予算に、真っ先に「タカリ」行為をしていたのは、その予算を所管していた霞が関の各省庁・官僚達である。この「シロアリ」集団は、いずれ退治しなければいけない時期が必ずやってくるだろう。私たち市民運動・社会運動も、この「霞が関シロアリ」集団の息の根を止めることが、自分たちの「世直し」運動の一つの到達目標だと考え、今後の取組の中でその実力を蓄積した方がいい。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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