(毎日新聞)ゆがんだ償い:切り捨てられる原発被害者=その背後でうごめいていたのは文部科学省(下村博文文相)と自民党政権だった

毎日新聞が今年7月初から「ゆがんだ償い」というシリーズ記事を特集して、福島第1原発事故後の被害者に対する賠償・補償問題の「ゆがみ」を追いかけています。その内容は、まさに文部科学省と一部の法律家たち(弁護士や大学教授ら)がグルになって、原発事故の被害者に対する賠償・補償を、何だかんだと屁理屈を付けては削減し、形だけの賠償・補償にして切り捨てようとたくらむ組織犯罪的なふるまいであることが分かってきました。

 

しかも、そうしたことが、「原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)」の実務を担う文部科学省の「原子力損害賠償紛争和解室」が陰に隠れて自分達の悪事を隠蔽しながら陰湿かつ権力的に事を運び、毎日新聞記者の熱心な取材と追及で、その実態が明らかになっても(原発事故の影響度は「一律5割(または1割)」とするルールの存在を示す文書まで発覚)、そんなものは存在しない、それは特定個人が書いたメモのようなものだ、ゆるやかな意見交換・情報交換のための参考資料だ、などとうそぶいています。そして、極めつけは、今般国会で追及を受けて、隠され続けている「内部規定文書」(「賠償・補償金額の査定根拠要因である原発事故の影響度を一律5割、または1割にしてしまえ」というもの)の公開を迫られても、文部科学省の幹部官僚がそれを拒否している、という始末です。(「国権の最高機関」たる国会の尊厳など、あったものではない、ということでしょうか。この行政官僚も更迭する必要があります)

 

もちろん、こうしたことは下村博文文部科学大臣をはじめ自民党政権の人間達は承知の上でしょう。原発事故による東京電力の賠償・補償負担は徹底して圧縮し、原発事故被害者を事実上切り捨てるとともに、加害者・東京電力の会社再建に全力を挙げるという、チッソ・水俣以来続く我が国の恥ずべき「歴史的伝統」がここでも生きているのです。もちろん、被害者救済のための賠償・補償に携わる多くの弁護士や団体などからは批判・非難の声が挙がっています(「原発ADRが信頼できないことがはっきりした。だれのためにやっているのか疑問で、今後も依頼者が望まない限り、ADRは使わない」「非公表にしている点は理解できない。妥当かどうか外部からチェックすることができず、センターの信頼性に関わる問題だ」「(原発事故の影響度の査定)5割が事実上の上限になっているのではないか。個別事情を無視しており認められない」など:毎日新聞記事より)。

 

全くの出鱈目で、重大な人権侵害であり、国家犯罪そのものです。原発事故被害者に対する賠償・補償は、被害者を救済し、一刻も早く生活や仕事や子どもの教育が再建・再生され、原発事故によって打ちひしがれた被害者の立ち直りと人生の再出発を担保する基本中の基本です。このままでは原発被害者は、もともと住んでいた住居を奪われたまま路頭に迷い、理不尽にも生活苦にさいなまれながら難民化してしまいます。こんなことは、私たち同時代に生きるものとして絶対に許してはならないことです。このシリーズの記事は必読です。みなさま、事態の動向にご注目ください。そして、賠償・補償の仕組みを一から立て直すとともに(原子力損害賠償紛争審査会や原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)」はいったん解散です)、暗躍した官僚や、これを黙認した自民党政権の政治家どもを徹底追及いたしましょう。刑事罰も必要だと思われます。みなさまのご支援をお願い申し上げます。

(1)原発賠償 「一律5割」内部文書明記 紛争解決センター 「存在せず」は虚偽(毎日 2014.8.30)

(2)ゆがんだ償い:原発ADR、8割が半額以下和解案 (毎日 2014.9.2)

(3)ゆがんだ償い:原発ADR運営組織の幹部、非公表基準認める論文(毎日 2014.9.18)

(4)ゆがんだ償い:内部文書の提出拒否、原発ADR 国会質疑で文部科学省(毎日 2014.10.17)

 

<関連URL>

下記の記事は、毎日新聞の無料ネット会員になることで全文が見れます。お勧めです。

 

(1)ゆがんだ償い 福島第1原発事故 東電責任一律半額「ADRやる意味ない」 母の死、人ごと – 毎日新聞(7/9)

http://mainichi.jp/shimen/news/20140709ddm041040100000c.html

(2)ゆがんだ償い 福島第1原発事故 東電責任一律半額 識者の話 – 毎日新聞(7/9)

http://mainichi.jp/shimen/news/20140709ddm041040117000c.html

(3)ゆがんだ償い 福島第1原発事故 東電責任一律半額 ADRの前事務方トップ「不満なら後は裁判で」 – 毎日新聞(7/9)

http://mainichi.jp/shimen/news/20140709ddm041040106000c.html

(4)ゆがんだ償い 福島第1原発事故 慰謝料基準も低額設定 原発ADR、算定過程明示せず – 毎日新聞(7/10)

http://mainichi.jp/shimen/news/20140710ddm041040126000c.html

(5)ゆがんだ償い 福島第1原発事故 原発ADR 中立医師、参加させず 5例判明、憤る被災者 - 毎日新聞(7/21)

http://mainichi.jp/graph/2014/07/21/20140721ddm041040197000c/001.html

(6)ゆがんだ償い 福島第1原発事故 原発ADR、一律5割 国の説明、二転三転 – 毎日新聞(8/30)

http://mainichi.jp/shimen/news/20140830ddm041040025000c.html

(7)ゆがんだ償い 福島第1原発事故 原発ADR、8割が半額以下和解案 慰謝料「一律基準」裏付け – 毎日新聞(9/2)

http://mainichi.jp/shimen/news/20140902ddm041040076000c.html

(8)ゆがんだ償い 福島第1原発事故 原発ADR運営組織の幹部 非公表基準、認める論文 被災者説明と矛盾 – 毎日新聞(9/18)

http://mainichi.jp/shimen/news/20140918ddm041040085000c.html

(9)ゆがんだ償い 福島第1原発事故 内部文書の提出拒否 原発ADR、国会質疑で文科省 – 毎日新聞

http://mainichi.jp/shimen/news/20141017ddm041040109000c.html

 

(参考)(重要)原発賠償「一律5割」内部文書明記 「存在せず」は虚偽 – 毎日新聞(8/30)

http://mainichi.jp/select/news/20140830k0000m040198000c.html

(参考)東日本大震災福島第1原発事故 避難中死亡、賠償一律半額に ADR、迅速処理優先 – 毎日新聞

http://mainichi.jp/shimen/news/20140709ddm001040188000c.html

 

●(2014年8月30日付の毎日新聞記事の一部抜粋)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

原発賠償「一律5割」内部文書明記 「存在せず」は虚偽 – 毎日新聞(8/30)

 

東京電力福島第1原発事故の賠償問題を裁判外で解決する国の手続き(原発ADR)を担当する原子力損害賠償紛争解決センターが、避難後に死亡した人への慰謝料を算定する際、原発事故の影響をほぼ一律に50%としていた問題で、毎日新聞は「一律5割」と明記された内部文書を入手した。文書はセンター内で保管・共有され、実務上も利用されている。センターは「50%ルール」の存在を否定してきたが、虚偽説明だった疑いが強まった。

 

センター側は、和解案で提示する死亡慰謝料額を「基準額」×「原発事故の影響の度合い(%)」で算定する。毎日新聞は7月9日、センターの実務を担う文部科学省の「原子力損害賠償紛争和解仲介室」の野山宏前室長が取材に「『(原発事故の影響の度合いを)大体50%にしましょう』と決めた」と証言した事実や、50%と認定されている事例が多いことを報じた。

 

その後、野山氏の後任である団藤丈士(じょうじ)室長(裁判官出身)が取材に対し「野山氏が何を話したかは分からないが、ルールは存在しない」と否定。7月14日にあった原発事故の被災者支援を行う複数の弁護団との定期的な会合でも「『内部基準(50%ルール)があるのか』と各方面から言われているが、一貫して否定している」と説明した。

 

しかし、毎日新聞が入手した2012年12月26日付のA4判4枚の文書には、「一律5割とし、4割か6割かといった細かい認定は行わない」と記載。50%ルールを「実務上確立されつつある運用」と説明している。さらに「5割の判断に無理がある場合、例外的に1割と示すこともできる」と記載され、より低額の和解案提示を可能にする内容になっている。

 

このほか(1)基準額を通常訴訟より低く設定できる(2)(判断の際)医師の意見やカルテを重視すべきでない−−とも記され、これまでの毎日新聞の報道に沿った内容になっている。

 

センターには仲介室職員のほか、被災者、東電の双方から提出される書類を整理する「調査官」、実際に和解案を作成する「仲介委員」(いずれも弁護士)がいる。関係者によると、毎日新聞が入手した文書は仲介室職員が作成し、複数の調査官に配布された。調査官経験者は取材に対し「文書の内容を仲介委員に説明した」「文書に沿わない和解案になりそうであれば、仲介委員に指摘する」と話し、文書が基準として利用されてきた実態を認めた。

 

センターはいったん「文書はない」と否定。その後「文書があった(見つかった)」と認める一方、「個人のメモの可能性もある」として、基準として使用していることは認めなかった。(以下、省略)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

●(2014年9月18日付の毎日新聞記事の一部抜粋)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ゆがんだ償い:福島第1原発事故 原発ADR運営組織の幹部 非公表基準、認める論文 被災者説明と矛盾

 

東京電力福島第1原発事故の賠償問題を裁判外で解決する手続き(原発ADR)を担当する「原子力損害賠償紛争解決センター」で業務を統括する最上位の機関「総括委員会」の3委員のうち一人が、非公表の基準の作成を認める論文を書いていたことが分かった。センターは被災者の弁護士らに「非公表の基準はない」と説明しているが、論文は矛盾する内容になっている。毎日新聞が7月に、避難後に死亡した人の慰謝料を「一律5割」と算定する非公表の基準の存在を報じた後も、態度を変えておらず、不透明さは増すばかりだ。

 

(中略)

 

毎日新聞は鈴木委員に見解を求めた。鈴木委員はセンターを介して文書で回答し、第3の基準について「拘束力を持たず、各仲介委員の基準を持ち寄り、互いの参考にするという程度の、緩やかな意見交換・情報共有」と主張し、第3の基準の存在を否定した。論文との矛盾を指摘し再度質問したが、文書で「前回回答した通り」とだけ述べ、具体的説明はなかった。