(1)「パナマ文書」記載の国内分、申告漏れ 計10億円超、国税当局調査=全く納得いかないこの結果、国税当局の本気度はいかほどか? (2)ベーシックインカムと普遍主義的社会保障制度について(若干)

(その1)「パナマ文書」記載の国内分、申告漏れ 計10億円超、国税当局調査(東京新聞より)=全く納得いかないこの結果、日本の国税当局の国際的な課税逃れにストップをかける本気度はいかほどか

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昨日(6/11)付け東京新聞(及びその他の全国紙)は、昨年発覚した巨額の国際納税回避行為を示す「パナマ文書」で明らかになった日本の個人・企業の税務調査結果を発表したようです。まずは、その記事をご覧いただきましょう。

(1)「パナマ文書」記載の国内分、申告漏れ 計10億円超、国税当局調査(東京2017.6.11)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201706/CK2017061102000139.h

tml

(2)パナマ文書、課税逃れ対策加速、多国籍企業の監視強化(東京 2017.6.11)

(3)課税逃れ防止60か国協定、日英仏など、明日署名(日経 2017.6.6)

http://www.nikkei.com/article/DGKKASFS05H43_V00C17A6EE8000/

<関連サイト>

内容は玉石混交だとは思いますが、ネット上から若干のものを拾っておきます。

(1)東京新聞 タックスヘイブンで隠れるマネー考える広場 (TOKYO Web)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/culture/hiroba/CK2016070202000267.html

(2)企業・富裕層の税逃れ対策強化 17年度改正で政府・与党

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS27H0K_X21C16A1MM8000/

(3)税逃れをいかに防ぐか パナマ文書の公開に思う ( その他経済 ) – Ddogのプログレッシブな日々 – Yahoo!ブログ

http://ur0.link/E4e3

(4)進む課税逃れの対策強化。「パナマ文書」問題の後に求められる取り組みとは? カイケイ・ファン  シェアーズカフェ・オンライン

http://sharescafe.net/49760537-20161014.html

(5)日本の個人企業が関与しているパナマ文書の解明は財政再建に必要不可欠なのに琉球新報以外は? – 愛国者の邪論

http://blog.goo.ne.jp/aikokusyanozyaron/e/c7a1f5c4fce2fc68a5c3873df8b7b528

さて、私は下記のような点において、東京新聞記事の内容に=つまり日本の国税当局のこの調査結果やタックスヘイブンへの取組態度に疑問を感じます。メールの表題にも書いたのですが、「全く納得いかないこの結果、日本の国税当局の国際的な課税逃れにストップをかける本気度はいかほどか」ということです。「ウソついたら針千本飲ます」とでも言いたいところです。

 

1.金額が小さすぎます。直感的にそう思います、すべての合計がコレですから、一つ一つの案件ごとにしたら、金額はもっともっと、ずっと小さな金額になってしまうでしょう。しかし、そんな小さな金額の納税を回避するために、わざわざ海外のタックスヘイブンを使う手間暇などかけるようなことを、はたして富裕層や巨大企業などがするでしょうか? 私は、国税当局が、このパナマ文書についても、その大半の「国際的納税回避行為」を見逃しているのではないかと疑います。要するに、トラブルに巻き込まれたくないので、巨悪を見逃して、見て見ぬふりをしているのではないか、ということです。「森友学園問題」や「加計学園問題」と同じ構図だということです。

東京新聞記事にも「今回、パナマ文書に関連する国内の税務調査では十億円超の申告漏れが発覚したが、国境を越えた調査態勢が充実していれば、この金額はもっと増えていたかもしれない。」とあります。要するに、国税当局のやる気のなさ、というか、国税当局にやる気を出させないように、その上に君臨している自民党の政治家どもが、直接的間接的に、このタックスヘイブン問題の抜本的解決対策を妨害しているということだと思われます。

2.東京新聞記事には「既に一部は修正申告に応じたとみられるほか、今後、追徴税などが通知されるケースもあるとみられる。申告漏れが発覚した個人や企業の具体的な氏名、名称は明らかになっていない」とあります。おかしいではないですか。氏名・名称のみならず、その手口や金額についても、個々に公開して明らかにすべきでしょう。また、同記事には「また、パナマ文書に登場する個人の中には文書の内容が公表された後、税務調査に先立って自主的に修正申告する動きもあり、こうした申告額は数億円規模とみられる。」についても同様で、氏名・名称のみならず、その手口や金額などについても明らかにすべきです。そうすることで、再発防止のための抑止効果も働きます。

3.また、今回のパナマ文書については、いわゆる通常の一般庶民がやるような手続きをしていれば、納税すべきであった税金がかなりの金額であるにもかかわらず、実際には、ゼロ円だった、ほとんどゼロだった、というような案件について、これもまた氏名・名称は伏せてでも、その内容について明らかにすべきです。そして、そうした課税漏れ=国際納税回避行為を今後は許さないための法改正を、いつまでにどのようにするのか、具体的に明らかにすべきです。

4.その他のタックスヘイブンについてはどうなのでしょうか。国税当局は、タックスヘイブン白書の様なものを策定して、国際的な納税回避行為の現状を有権者・国民・納税者に対して詳細に説明すべきです。また、それに対する対策も、国際的な合意がなければ一歩も前に進まないかのような報道がなされておりますが、それもそんなことはないはずです。日本国だけで、まずやれること、納税すべきものを納税しないような行為を許さないための法制度改正を、日本からだけでも一刻も早く着手すべきですが、それについてもノーコメントのまま放置されています。

(東京新聞記事には「OECDは七月にも金融口座情報の交換に非協力的な国を名指しする「ブラックリスト」を公表し、公平な課説制度の確立に向け、締め付けを強める構えだ」とあります。だったら、マネーがそのブラックリストのタックスヘイブンから逃げ出す前に、日本国だけでも、一斉にそのブラックリスト関連資産の申告を義務化すればいいのではありませんか? 一説によれば、すでに著名なタックスヘイブンから、ジャパンマネーと思わしきカネが1兆円超の金額で流出したという話もあります。盗人がいなくなってから、いなくなるのを待ってから、盗人探しをしても意味はないでしょうに)

5.もう一つの方の東京新聞記事には「OECDの推計で世界トータルのタックスヘイブンによる税金逃れの総額は約26兆円」とあります。こんなもの、まったくピンボケの過小評価だと私は思います。おそらく総金額は、毎年(=1年間でです、累積合計ではありません)この10倍、あるいはそれ以上あるでしょう。アングラマネーの大半もタックスヘイブンに流れ込んでいますから、おそらくとてつもない金額のはずです。私は全世界のGDPの2割くらいで見ておけばいいのではないかと思っています。

6.それから、タックスヘイブンをつかって納税回避がされているのは、法人税(企業)や所得税(個人)だけではありません。日本の場合には、相続税(及びその補完税としての贈与税)もまた、巨額に納税回避されています。推計では毎年数兆円~数十兆円の規模だと思います。武富士の息子のことを思い出しましょう。約1500億円の納税が回避されていました。こともあろうに、最高裁がそれを認めるという「判決」を出しています。そして、その判決を下した裁判官は、その後すぐに退官して、国際税務を商売のタネにしながら弁護士をしているというではありませんか。あきれた話です。

7.それともう一つ、東京新聞記事には「パナマ文書の調査を通じ、国税当局は課税逃れを指南するコンサルタントなどを割り出したはずだ」とあります。もちろん、こうしたコンサルタントらは、逃れた巨額税金の一部をその報酬(これも結構巨額)として受け取っている「税金逃れ利益共同体」の一員です。この税金逃れ「指南役」、こういう社会のハイエナ連中を撲滅していく、何らかの法規制の様なものも必要なのです(たとえば「連座制」)。

8.不公正税制・不公平税制運営は他にも山ほどあります。我々貧乏人の一般庶民に対しては、税金はビタ一文まけられねえ・1円たりとも漏れなく収めよ・零細納税者救済など「屁も出ねえ」、という態度の国税当局・税務署木っ端役人どもですが、他方では、パナマ文書に代表されるタックスヘイブンをつかった巨額の税金逃れには、それはそれは寛大で悠長な構えでいること、極まりなしです。

(関連)税金を払わない巨大企業(文春新書:富岡幸雄/著)

http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033150910&Acti

on_id=121&Sza_id=C0

9.みなさま、こういうことですから、いつも申し上げていますように、「消費税などバカバカしくて払ってられるか!(税金などというものは、お人好しのおバカだけが払うものなんだよと、大金持ちや大企業幹部たちが高笑いをしている声が聞こえる)」「諸悪の根源=自民党政治をひっくり返せ」ということです。

(その2)ベーシックインカムと普遍主義的社会保障制度について(若干)

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(他のMLでの議論ですが、ご参考までにお送りいたします)

1.(再論)ベーシックインカムについて(他のMLでの議論です:勘違いしてはいけない=「ベーシックインカム」は「生活保護」や「社会保障制度」とは似て非なるものです) いちろうちゃんのブログ

http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2017/02/post-5603.html

簡単に言えば、BIは「継続的なヘリコプター・マネー」と言えるでしょう。そもそも財政的に対応できません。下記の様な簡単な計算ですぐに理解できます。つまり、BI以外のいっさいの社会政策は廃止するということと表裏一体でしか実現せず(それも相当にしんどい)、究極の「小さい政府」です。もしこれを消費税増税で対応するとすれば、国民から税金をフラットに吸い上げて、それを再び国民にフラットにばらまくという、まったくバカバカしい、いわゆる「究極のバラマキ」政策となるでしょう。こうしたことについて、BI論者から、きちんとした説明を聞いたことがありません。

1億2千万人×年間2百万円(BI)=240兆円

2.生活保護にかかる「受給審査」が「受給者の自尊心を傷つける」というのも、私には「変なバイアス」がかかっているようにしか聞こえません。まず、生活保護は最後のセイフティネットですから、いわば「生存権」という「権利の保障」です。この意識が関係当事者に乏しく、かつ社会的にもカモンセンスになっていない=ならないような教育がなされてきた(言ってみれば「お上が与える恩恵」のような見方)点に問題があるように思われます。

むしろ、今、ただちに改善しなければいけないことは、(1)生活保護の「瀬戸際政策」をやめさせること、(2)生活保護審査における「受給申請を自粛させる・自ら引っ込めさせる」ような、いやがらせ、といってもいい、ひどい「審査」や「条件」が付けられていること(制度の問題と運営の問題の両方)、(3)生活保護申請へ行く前の段階の社会保障や社会福祉の制度的枠組みや行政施策が貧困なままであること、宮本太郎氏らが言うように、生活保護受給者の1/3~1/2の勤労世代に対して社会保障と就労とを結びつける施策がまだまだ不十分であること(残りは貧困な高齢者や障害者)、(4)生活保護は国の施策であり、自治体にその費用負担の一部をかぶせるのはいただけないこと、などではないかと思います。そして、こうしたことの改善は「やる気」さえあれば、ただちにできることです。(今は「逆噴射」している状態)

3.普遍主義的な社会保障政策と言えば聞こえがいいのですが、それはそのための巨額な財源とセットで考えないといけません。この典型的な失敗事例が2009年民主党政権が約束をしていた「子育て支援交付金」です。私の記憶では、あのときでおよそ2~3兆円くらいの原資が必要でしたが、それが容易には確保できなかったし、また、それだけの財源があるのなら、他の施策をやった方がより効果的に、社会の不幸を少なくできるという議論がたくさん出ていました。

普遍主義を頭から否定をするつもりはありませんが、(たとえば小学校から大学まで授業料を無料にする)、しかし、それには十分に慎重な段階的対応や、社会的財政的なバランス感覚も必要かと思われます。大学の授業料でいえば、ともかくもう少し金額を引き下げることと(国公立の場合には、いまの1/4くらいまでさしあたり)、貸出ではなくもらいきりの奨学金を用意すること、さらに、もらいきりではなくても、すくなくとも金利はゼロにした奨学金も用意して、うまく使い分けること、授業料減免制度や奨学金返済猶予制度を充実させること、授業料以外の学費に対する支援を用意し充実させること、などなどで、私は事態は相当程度まで改善されると思っています。要するに、丁寧に考えていない、ということだと思います。

4.雇用の拡大に関して、国や自治体自らが正規職員の採用を大きく増やし、その人員を社会公共サービスの充実にあてていくという発想がまるでない。今日の日本は、あまりに「小さな政府」すぎて、社会の安全やなりたちを維持していくための公務員の数が少なすぎます。たとえば、世界最大の食料輸入大国なのに、輸入食品の検疫(安全性や表示のチェック)に携わる公務員はわずか400名にすぎないとか、全国各地の自治体消費者センターや国の国民生活センターなどの人員や態勢があまりに貧弱、かつ非正規で間に合わせされている、などなど、数え上げればきりがありません。その底流には「公務員バッシング」というニセモノ宣伝でカモフラージュされた市場原理主義のイデオロギーがあります。ニューディール政策ではありませんが、国や自治体などの公共セクターが雇用を大きく拡大すればいいのです。BIに巨額の税金をつかうことなどはほとんど無意味です。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion6725:170613〕