12月15日(金)13時30分 東京地裁415号法廷に。閉廷後の報告集会は、伊那太陽光発電スラップ訴訟勝訴報告 ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第112弾

著者: 澤藤統一郎 さわふじとういちろう : 弁護士
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私(澤藤)自身が被告とされ、反訴で反撃している「DHCスラップ2次訴訟(反撃訴訟)」。事実上の第1回口頭弁論期日は12月15日(金)。どなたでも、なんの手続も必要なく、傍聴できます。ぜひ、多数の方の傍聴をお願いいたします。

13時30分 東京地裁415号法廷・東京地裁庁舎4階(民事第1部)
       反撃訴訟訴状(反訴状)の陳述
       光前弁護団長が反訴の要旨を口頭陳述
       澤藤が反訴原告本人として意見陳述

閉廷後の報告集会を東京弁護士会504号室(5階)で行います。
報告集会では、木嶋日出夫弁護士(長野弁護士会)から、「伊那太陽光発電スラップ訴訟」での勝訴判決(長野地裁伊那支部2015年10月26日判決)の教訓についてご報告いただきます。

同判決は、「判例時報」2291号(2016年6月11日発行)に、「事業者の、反対住民に対する損害賠償請求本訴の提起が、いわゆるスラップ訴訟にあたり違法とされた事例」と紹介されているものです。「DHCスラップ2次訴訟」に当て嵌めれば、「DHC・吉田の澤藤に対する損害賠償請求本訴の提起が、いわゆるスラップ訴訟にあたり違法とされた事例」ということになります。

同日閉廷後 14時~15時30分 報告集会
     東京弁護士会504号室(5階)
     光前弁護団長から、訴状(本訴・反訴)の解説。
     木嶋日出夫弁護士 伊那太陽光発電スラップ訴訟代理人報告と質疑
     澤藤(反訴原告本人)挨拶

☆伊那太陽光発電スラップ訴訟概要
(長野地裁伊那支部・2015(平成27)年10月28日判決)
原告(反訴被告)株式会社片桐建設
被告(反訴原告)土生田さん
被告(反訴原告)代理人弁護士 木嶋日出夫さん
本訴請求額 6000万円 判決は請求棄却
反訴請求額  200万円 判決は50万円認容
双方控訴なく確定

☆木嶋日出夫弁護士紹介。
1969年 司法研修所入所(23期・澤藤と同期)
1971年 司法研修所卒業 弁護士登録(長野県、旧林百郎事務所)
1974年 自由法曹団長野県支部事務局長
1976年 日本弁護士連合会公害対策委員
1979年 長野県弁護士会副会長
1990年 第39回衆院選当選(日本共産党公認・旧長野3区・1期目)
1996年 第41回衆院選当選(日本共産党公認・長野4区・2期目)
2000年 第42回衆院選当選(日本共産党公認・長野4区・3期目)

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当日の木嶋弁護士報告レジメは、以下のとおり。

長野県伊那市細ヶ谷地区・太陽光発電スラップ訴訟報告メモ
2017.12.15 弁護士 木嶋日出夫

1 スラップ訴訟(恫喝訴訟)の提起から判決まで
①2014年2月25日 原告株式会社片桐建設が、被告土生田勝正に対し、6000万円の損害賠償請求訴訟を長野地裁伊那支部に提起。
提訴理由は、被告が科学的根拠のないデマで原告会社の名誉を毀損し、A地区に太陽光発電設備設置を断念させたというもの。その損害は2億4969万円と主張。
②2014年8月4日 被告は、原告会社に対し200万円の損害賠償請求反訴を提起。本訴提起が、被告に対する不法行為(スラップ訴訟)であると主張。要件が狭すぎることは承知の上で、昭和63年1月26日付最高裁判決の論理に拠った。
③2015年10月28日 判決。本訴請求を棄却。反訴請求のうち損害賠償50万円を容認。(判例時報平成28年6月11日2291号)原・被告とも控訴せず、判決は確定。

2 判決の要旨(反訴請求について)
①住民説明会において、住民が科学的根拠なくその危惧する影響や危険性について意見を述べ又はこれに基づく質問をすることは一般的なことであり、通常は、このことを問題視することはない。
②このような住民の反対運動に不当性を見出すことはない。
③少なくとも、通常人であれば、被告の言動を違法ということができないことを容易に知り得た。
④A区画への設置の取り止めは、住民との合意を目指す中で原告が自ら見直した部分であったにもかかわらず、これを被告の行為により被った損害として計上することは不合理であり、これを基にして一個人に対して多額の請求をしていることに鑑みると、原告において、真に被害回復を図る目的をもって訴えを提起したものとも考えがたい。
⑤本件訴えの提起は、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く。

3 スラップ訴訟を抑止するために-本件判決の意義と問題点-
①最高裁判決の論理にとどまっていては、スラップ訴訟を抑止することは困難
判例時報の評釈でも指摘されているが「もっとも、その発言が、誹謗中傷など不適切な内容であったり、平穏でない態様でされた場合などには違法性を帯びるとの規範を示した」とされていることは、見逃せない問題である。
どこまでが違法性を帯び、どこまでが違法性がないといえるのか、本判決は、なんらの具体的基準を示していない。
本件事案は、その必要性がないほど、被告の行為や発言内容に違法性が認められなかったのであるが、この判決の射程は必ずしも明らかではない。
②反訴請求で認められた慰謝料50万円では、抑止力としてはきわめて不十分
反訴請求で認容される損害額は、経済力を持った企業や行政に対し、スラップ訴訟の提起を抑止させるほどの金額にならない。本件でも、原告会社は控訴せず、すぐに「損害」全額の支払いをしてきた。
本件判決は、地元のマスコミが報道し、建設業界の業界誌でも紹介されるなど、社会的に一定の広がりを見せた。地元伊那市において、太陽光発電設備についてガイドラインを施行し、緩やかな「規制」を始めた。しかし被告会社に真摯な反省は見られない。
③スラップ訴訟の提起を抑止するには、新しい法的枠組みが必要(2016年1月消費者法ニュース106号)
以上
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※木嶋弁護士レジメのとおり、この判決は「昭和63年1月26日付最高裁判決」の論理に拠って、判断し「本件訴えの提起は、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く」から違法と結論した。
その結論に至る判断の過程で、
「少なくとも、通常人であれば、被告の言動を違法ということができないことを容易に知り得たといえる」
「(不合理な損害を計上して)一個人に対して多額の請求をしていることに鑑みると、原告において、真に被害回復を図る目的をもって訴えを提起したものとも考えがたいところである」
「以上のことからすると、原告は、通常人であれば容易にその主張に根拠のないことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したものといえ、本件訴えの提起は、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものと認められる」との判示が注目される。

これらの点が、DHCスラップ2次訴訟(反撃訴訟)に生かせる。

※また、木嶋弁護士レジメが、「本件判決は、地元のマスコミが報道し、建設業界の業界誌でも紹介されるなど、社会的に一定の広がりを見せた。地元伊那市において、太陽光発電設備についてガイドラインを施行し、緩やかな「規制」を始めた。しかし被告会社に真摯な反省は見られない。」と言っているのが注目される。
スラップ訴訟を提起した片桐建設は、訴状において、「企業イメージの悪化が直ちに、住宅建設の売り上げ悪化につながる」と主張している。被告の発言によって、「企業イメージが悪化し、営業損害もこうむったというのである。
 しかし、スラップ訴訟提起の結果、片桐建設の企業イメージは、「スラップ企業」として有名になって大きく傷ついた。このことが教訓だと思う。
 DHCについても、「スラップ常習企業」として、多くの人の批判と非難による社会的制裁が必要であり重要なのだ。
(2017年12月9日)

初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2017.12.9より許可を得て転載

http://article9.jp/wordpress/?p=9578

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/

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